女神様の吐露
突然ですが私、神様なんです。
人を生み出したり、見守ることが役目。世界中を見てまわるのも、なかなか辛いですね。
けど、私は大丈夫です。皆の笑顔を見ているととても楽しいし、嬉しいから。
この前見たのは、一つの家庭。父母や兄弟達に囲まれ過ごす、一人のこども。
は貧しく食べ物を口にすることも大変でしたが、こどもはせっせと働き疲労の様子も見せずいつも笑顔でした。
皆で過ごすのが楽しい。嬉しい。父や母に撫でられ兄弟達と遊ぶのが至福だ。
そんな感情が、ひしひしと伝わってきます。
私は自然と笑みを浮かべていました。愛せば愛し返してくれる。まさに私の望むとおりの存在が、こどもやその家族なのです。
私の心に表現しきれない嬉しさが広がりました。私の感情と共に、太陽が輝かしく照りました。
世界中の人々がこんな風に幸せでいられたらいいのに。
しかし、そんな願望は粉々に砕かれました。
ある日、私は子を捧げられました。
この子を引き換えに、村を繁栄させてほしいと。
こどもは泣いていました。いつの日か見かけた、あのこどもでした。
『死にたくない、まだ生きていたい』
脇目も振らず泣き喚くその子を見て、私は悲しくなりました。
私の感情と共に、雨がさめざめと降りました。
水を含み種が蒔かれた土に一つ二つ三つと、新たな生命が芽吹きました。
どうしてこんなことが起こるのでしょう。
何故私は止めることができないのでしょう。
皆さんは―――――
『神と崇めたてる私も元は人間だったこと、もうお忘れですか……?』
私は、人々を幸福へ導けない己を、酷く歯痒く思いました。