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短編集  作者: 黒澤 由亜
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aeon


駄目だったのに。駄目だったのに。開けてしまった。扉。

ずっとずっと、見て見ぬふりをしていた。だって見たら、開けてしまいそうだったから。

でも、この扉は開いた。開いてしまった。たった今、私の手によって。

分かってたのに。開けてはいけないこと。何度も言い聞かされたのに。

ああ、やっぱり私は駄目な子だ。だから虐められるんだ。あんな目で見られるんだ。叩かれるんだ。



―――『開けてはいけない』扉を開けてしまったら最後、村は滅ぶ。





『う、うぁ、ぁぁぁ……!』


『ごめんなさい、ごめんなさい。わたしのせいなの。だから許して、ゆる―――』


私の中に誰かの意思が入ってくる。

手で覆った真っ暗闇の中に、一つの記憶。

誰かが、この開けてはいけない扉の前で今の私のように這い蹲っている。

その線の細い人影は、女性のもので。

女性は、白装束で懺悔するように扉に向かって泣き喚いていた。

扉の中は、暗闇が広がっている。何も見えない。

村の中央部にあるその扉は、開いたら忽ち村に黒い霧のようなものが押し寄せ、最終的に村が滅ぶとされている。

この記憶がいつのものかは知らないが、きっと今私がいるこの村であることは間違いない。

だとしたら、この村が一度何も無いただの大地になったことは確実だ。どうやって再興したのかは知らないが。

記憶の中の女性は、がたがたと震えながら真っ青になって手を合わせている。

しかし―――。


祈りは届くことなく、村は真っ黒の霧に覆われた。





この記憶は、自分のものだった。

記憶の中の女性は、間違いなく前世の自分だったのだ。

だから私は、二度目の禁忌を犯したことになる。

私の喉から、掠れた声が漏れ出る。

こうなったらもう、自分の身で償うしかない。

どうせ村が滅ぶならば、せめて私の身だけはこの扉に捧げなければ。

もう既に黒い霧が、私の背後で滞っている。黒い霧。全てを滅ぼす腐蝕の霧。


村人の悲鳴を聞きながら、私は扉の中へ飛び込んだ。


aeon=永遠

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