表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

後編

我が高校のアイドル、と言うかフジサワはすごくモテた。


靴箱や机の中にラブレターが入ってたりとか。放課後に女子に呼び出されたりとか。

バレンタインには山のようなチョコを貰ってたりとか。


私がマンガの中だけだろうと思っていたことを、次々と実現させていった。


見てくれが良いだけじゃなくてとても優しいようだ。性格が良くて、男女に関わらず人気がある。

ミーハーなイチコが、『本当にアイドルみたい!』と熱弁していたのを覚えている。


そんな完璧な人間はいないと思っていた。


でも、やっぱり、そんな完璧な人間なんていないのだ。

初対面でフジサワが放った一言で、私たちはすぐに喧嘩になってしまった。


『お前って、絶対に俺の嫌いなタイプだろ?』


******


―なら、アンタは私のこと好きなの?


そんなの『NO!』と言うのは分かりきっていたし、だからこそ敢えて言ってやった。

フジサワがそう答えてくれれば、私が勝ったことになる。


なのに…。


「それで勝ったつもりかよ?」


意外にも、フジサワの方が余裕の顔をしていた。


「残念だけど、お前のこと好きにならねぇ方が無理なんだよ」



……………え?

スイマセン、今、何て言いましたか?



「あ~あ、何で今言わなきゃならねぇだよ。ムードも何も無ぇじゃん」


文句を言いながら、頭をガシガシと掻いているフジサワはまるで普段通りだ。

でも、確かに、さっき私に『好き』って言ったよね?

好き?

誰が? フジサワが?

誰を? 私を?

いやいやいやいや、無い。それは断じて無いっ。てか有り得ないっ。だって、あのフジサワだ。

私に毎日のように暴言を吐いて、『ムカつく』とか『嫌い』とか言っていたフジサワだ。


「ちょ…っ、冗談とか止めて、よね」


そう思っているのに、口から出た言葉は妙に震えてる。

人生初の告白に、やっぱり動揺しないワケがなかった。さっきまでの怒気なんか一瞬で消えてしまった。

顔が火照ったみたいに熱くて、たぶん真っ赤になってるのが分かる。

心臓の音だって、フジサワにまで聞こえてしまいそうだった。

冗談相手にここまで反応して、かなり情けない…。


「なんでだよ。そんな笑えねぇ冗談言わねぇよ」


フジサワが、また私を睨んでいた。でも今までみたいに、それを怖いとは思えなくて。

―なんだか、妙に恥ずかしかった。

睨んでるはずなのに、その目はいつもと何か違ってるみたいだ。

ただじっと見詰められてるみたいで、思わず目を逸らしてしまう。


私って、いつもこんな目でフジサワから見られてたの?


「…お前、やっぱり気付いてなかったんだろ」


返事なんてできなくて、ただ口をパクパクさせるだけになってしまう。


「だから嫌いなんだよ、お前のそういう鈍くて妙に頑固なとこ」

「…なっ!」


一応馬鹿にされたのは間違い無いのに、以前みたいに反撃に出れない。

もうどう考えても、告白を冗談だとは思えなかった。


「…だ、だって! 今だって嫌いって、言った!」


フジサワの『好き』って言葉が、ずっと頭の中をぐるぐる回ってて。

それでも『嫌い』と言われると、過剰に反応してしまう。


「好きなのか、嫌いなのか、はっきりしてよ!」


…これじゃ、逆ギレ以外の何物でもない。


「だから、好きだって言ってんじゃねぇか」

「……!」

「鈍いところとかマジでムカつくけど、そういうとこも含めて」


そう言って、椅子から立ち上がったフジサワが私を見下ろしていた。

怒ってたはずなのに、その顔は笑顔で、言ってしまえばキレイな顔なのかもしれない。

その顔が、ぐっと私の目の前まで寄ってきた。


「それで、お前は?」


「………え?」


間近な顔に耐えられなくて、椅子ごと後ろに下がるとフジサワはさらに寄ってくる。


「朝みたいに、『嫌い』とか言わねぇよな?」


何となく、脅されてる気分になってきた。

私に『嫌い』言われたことを、きっとかなり根に持っていたのだろう。

フジサワの笑顔が、何だか睨まれてる以上に怖く感じた。


「で、どうなんだよ?」


「――!」


いくらでも詰め寄ってくるフジサワで、もう頭の中が真っ白だった。

何が何か分からず、ただ、思いっきりに叫んだ。



「フジサワなんて、大っ嫌い!!」



フジサワがこれ以上とない笑顔で、私を見詰めていた。



What I Like About U

キミのきらいなとこ=キミのすきなとこ??


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ