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8.火の元注意

フィリア=ユーメル、アラン=セベリア両名、ただいま誘拐されています。




「ふぃーり、ふぃーり」

アランはぎゅうっと私に寄ってきます。

あ、ごめんね、落ち込んでただけで、無視したわけじゃないんだよ。

「あらん…ごめんね…」

「なんで?ふぃーりわるいの?」

アランは真ん丸い目をじっとこちらに向けてきます。尻尾はいつもみたいにぶんぶん振ってないし、耳は周りを伺うようにぴくぴくしています。

子どもながらも、今はちょっと違う状況だとわかっているようです。


私は小さく、ため息をつきました。

探検気分で、パパさん達の目を盗むように茂みに入っていったのがまずかったのでしょうか。

アランがきらきらを見つけたという場所に行ってみると、何やら武器らしき道具を持った男達に出くわしたのです。

しかも全員が人間という奇妙な集団。

転生してから驚いたのは、人間も獣人も同じようにコミュニティが入り混じっていること。

だから、逆に人間だけ、というのは浮いて見えた。


私とアランは、彼らにとって悪いタイミングで登場してしまったらしい。

見られてしまった、ということと、親が近くにいるんじゃないか、ということで、彼らはなにか荷物を片付けるのと同時に、私達を誘拐した。

すぐに親元に帰して騒がれることを危惧したらしい。

時間差を置けばいいというわけでもないと思うけど。



私達は馬車のなかに閉じ込められている。

お腹に縄を巻かれて、逃げないようくくりつけられている。

それ以外は自由だ。ころころとした一歳児に、向こうも扱いに困ったかもしれない。


少し離れたところで相談していた男達は、なにやら決めたらしい。

一人、人相のマシな人間が近寄ってきた。

「やあ、怖がらなくていいよ。もうすぐ親御さんのところに連れていってあげるからね」

これは……子どもと思って取り入ろうとしているな。

「ねえ、君、名前を教えてくれないかい?」

ふーんだ、誰が名前なんか

「あらん!あらん=せべりあ、いっさいです!」

うわああアランの馬鹿ーー!!


「セベリア、だと⁈セベリア家の子どもか!」

「とすると、隣のガキは最近来たリーヴェル国の特使の子どもじゃないか⁈この辺りでリーヴェル風の格好をする酔狂はいねえよ!」

突然騒ぎ出す男達。え、セベリアの名前もうちの家も有名なんですね。


「もっと奥砂漠に出ろ!!セベリアの鼻に気づかれる前にだ!」

「こいつらどうする!」

「セベリアのガキは殺すな。奴ら報復の為ならどこまでも追ってきやがる。リーヴェルのガキは邪魔になるなら殺せ」

ええ!そんなあっさり!



「ふぃーり?ふぃーり?」

騒ぎ出す男達にびっくりしたのか、アランがぎゅうぎゅうとひっついてくる。その温もりが、今は嬉しくて、そして怖い。


「うっ……ひっく………」

フィリア=ユーメル(享年1歳)とか、絶対やだよう……


泣きはじめた私を見て、男はアランとひき離そうとする。

「ふぃーり!やめて!ふぃーり!」

アランは私の手をぎゅっと握ったけど、大人の力には敵わない。首根っこをつかまれて引き剥がされた。アランは小さな牙を剥いて空を噛む。ぎゃん!と鳴いて暴れている。

「ひっ……ありゃん……!まーま!ぱーぱ!」

どうしようどうしよう。前世の経験があっても、こんなの経験してないよ!

怖いよ、ママさんパパさん、たすけて!




「やあだーーー!!!!」





ぼ っ





ボッ?


「お、おい!幌が焦げてるぞ!」

ん?

「違う!火の粉だ!消火しろ!」

んん?

「水がかからない…!どういうことだ!なんで火をよけるんだ!」

「うわあ!砂が!風が巻いてるぞ!気をつけろ!」



「ふぃーり!だーじょぶ⁈」

なんだなんだ、一体どうしたんだ。

急に慌てる男達。手放されたらしいアランが私のところに来てくれる。

「ひっ……ありゃん……」

「ふぃーり、ないちゃだめ!」

アランはわしゃわしゃと私の頭を撫でる。泣いてる私を慰めようとしてくれているらしい。

うわああん、ますます泣いちゃうよー!!



「ガキだ!ガキを捕まえろ!」

騒いでた男達のひとりが、気づいたように叫んだ。

うわわ、アランに慰められている場合じゃない!



アラン!逃げて!




叫ぼうとした私の視界を、ふわりと、青が占めた。


「モウシゴ、無事か?」


誰かの背中だと気づいたのは一拍置いてから。

群青色のマントだ。同じ色のターバンを巻いている。


こちらに振り向いたその人を見て、私は声が出なかった。


あ、あなたは……!!











読んでくださり、ありがとうございます*



新しい人物の登場です。


世界観も出していきたいです…!

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