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5.デビューしました

フィリア=ユーメル(1歳)、本日デビューいたします。




アランパパからお誘いしてもらった会合は、セベリア邸で行われるそうです。

私たちはお隣なんだけれど、移動には馬車を使います。

立場とかの問題かなって思っていたけれど、歩いていくと遠いらしい。

お互いに屋敷が広すぎるらしい。なんてこった。


さて、今日の私は金髪の髪をリボンで結んでもらいました。ちょこん、と尻尾みたいなおさげが2つ。なかなか可愛らしいです。

淡いピンクのワンピースでばっちりおめかし完了です。


パパさんに抱っこされて会場に入ると、絨毯の上にたくさんクッションが用意され、皆ぐるりと円座してくつろいでいました。

獣人のほうが……多いな、4:1ぐらいです。


皆さん、子どもを連れてきています。

くっ、どうして獣人の子どもはあんなに可愛いんだ!こてん、と寝ている姿は保護欲どころか、さらってしまいそうな愛らしさです。


「さあ、フィリアも遊んでおいで」

パパさん達は用意された場所に座ると、私を立っちさせました。

「まー…うー……」

繰り返しますが心は26歳の乙女です。寝ている子もいれば親と遊んでいる子もいます。どこに行けばいいのか悩んでしまいます。



「ふぃーり!」

突然、ぐい、と腕を引っ張られて、私はぺたんと尻餅つきました。

い!たくないけど、だれだ!


「あらん!」

アラン=セベリアが目をまん丸くして立っていました。私がいきなり座ってしまったのでびっくりしたようです。

「ふぃーり?だいじょうぶ?」

アランは自分もぽてん、と座り、私の頭をぽんぽんし始めました。

相変わらずふさふさした素晴らしい毛並です。少し色も濃くなったのでしょうか、グレーの色が目立ちます。

アランパパは精悍なイケメンだけど、アランはまだまだ手のひらもほっぺもお尻も丸く、ころんとした耳が可愛いです。

そうですね、ええ、可愛いから許してあげましょう。


「あー、だーじょー!」

まだ舌ったらずにしか話せないけれど、アランには伝わったようです。にこっと笑って、ぎゅうぎゅうとひっついてきました。


じゃれ始めた子ども達を見て両親は安心したようです。少し離れて近くの人と話し始めました。


「ふぃーり、ふぃーり」

アランはぎゅうぎゅうと私にしがみついてきます。むしろのしかかってきます。あ、ちょ、重い。

「あー!もー!」

せっかくあんよもできるのに、私はぼて、と絨毯に寝転がりました。ぎゅうぎゅうとひっつくアランが重くて体勢を保てなかったのです。

アランは私に乗っかったまま、鼻をくんくんとさせ始めました。髪の匂いとか嗅がないで。ちょ、くすぐったいよ!


こ、このままだとまた事件が起きるのでは!デジャブ!ママさんー!助けてー!!



「だあめ!だーめ!」

大きな声がして、アランが私の上から絨毯に転がされました。横から誰かが突き飛ばしたようです。

「おんなのこ!いじめちゃ、め!」

どうも私を助けに来てくれたらしい。な、なんて優しい子どもなの!

声の方を見て、私は瞬殺された。あ、もちろんハートの方ね。この浮気者!アランパパというものがありながら!


とにかく真っ白い子どもだった。真っ白い毛並みに灰色の丸い瞳。猫の獣人らしい。そして長い尻尾がくるん、くるん、と動いている。

「おんなのこ、には!やさしく、するんだぞ!」

私やアランより数ヶ月お兄さんなのか、ちゃんと言葉をしゃべれていた。

そしてなんてフェミニスト発言。あ、あなたを育てた親御さんに会わせてください!


絨毯に寝転がったままの私を、その子は起き上がらせようとした。……が、そこまでの力はなかったようだ。私はその子の手を振って、まだまだ短い腕と足を伸ばして、よっこいちょ!と立っちした。

あ、悲しそうな目をしてる。ごめんね、自力で立っちしちゃって。


「あー!ふぃーり!ぼくの!だめ!」

突き飛ばされたアランが復活してその子に食いかかった。くぱっ、と威嚇するように口を開く。

「だーめ!やさしく、なの!」

猫の子はどれだけフェミニスト教育されてるんだろう。とにかくアランにだめと言いたいようだ。シャーッと鳴いて尻尾をぴんと立てる。



こ、これは、前世で憧れた「2人の男が私のために争って」とかいうシーンじゃないか!

そうと決まればあの台詞を言うしかない!


「やあ!ふぃーの!だーめ!」

やめて!私のために争わないで!…ああ!舌が回らないよ!



結局2人は噛み噛みの取っ組み合いを始めてしまい、親達が見守るなかぎりぎりの喧嘩したようだった。

獣人は牙の加減を学ばせるため、ちょっとした喧嘩には寛容のようです。

って人間の子どもには不利、不利だから!!



ジャン=シュヴァン、白猫獣人のフェミニストボーイの名前を知ることができたのは、会合から幾日も経ってからのことだった。




ありがとうございます*



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