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26.しょうかん



「"オーヴェ=ユーメル及びその妻子、直ちに本国に帰還せよ"との王命です」

召還状が届きました。フィリアです。召還状が届きました。



***



ヴァーレからオアシスまで楽しい旅路を過ごしました。

アランやジャンは、一歳以来と思えないくらい、気さくに話すことができました。2人が長槍と長剣を鍛錬しているとのことだったので、型の演武を見せてもらったり、少しだけ素振りをさせてもらったりしました。

うーん、私には武芸は無理そうです。彼らの武器は獣人仕様らしく、かなり重たかったです。あんなの振り回せる人と対等に渡り歩こうとするより、精霊術を真面目に練習した方がいいかなあ。

適性って大事ですね。



さて、無事一週間の旅を終え、久々の我が家に帰ってきました。

使用人の皆さんがお家を守ってくれたので、3年前と変わらず快適に過ごせそうです。

皆、私やダンの背が伸びてびっくりしていました。



アランは「明日、絵本持っていくから!」とアランパパに引きずられながら帰っていきました。なかなか「また明日」の挨拶ができず、夜も更けてきたので、アランパパによる強制帰還でした。




そして翌朝、家の門をドンドンドン、と叩く大きな音で私は目覚めたのです。



相変わらずの習慣で、家族3人川の字で寝ていた私達は、リーヴェル国王陛下の使者の訪問があったと執事頭さんに告げられました。何故だか嫌がるパパさんを、ママさんが説得し、朝食を食べるような簡素な格好に着替えて、応接室に向かいます。



応接室にいたのは、赤髪が印象的なおじさま。リーヴェル国では獣人より人間が多くいるそうで、使者らしきおじさまもその部下も皆さん人間です。

冒頭の召喚状が読み上げられると、パパさんは、ふぅ、と小さくため息をついて眉間の皺をほぐすように手で顔を覆った。


「直ちに、ねえ……。ねえ、君、その書簡には他になにか書いてあるの?」


眠そうに欠伸しながら聞きます。目が据わっていて怖いよパパさん!


「はっ!陛下より、そう質問いただいた際の伝言を預かっております。

"四の五の言わずにとっとと帰ってこい、阿呆が"

との事です」


なんという伝言!そして言い切ったよこの人!プロですね!



「誰が阿呆だ、馬鹿野郎」

「まあ貴方ったら、フィリアの前でそんな言い方しちゃ駄目よ?」

私の前じゃなければいいんですか!ママさーん!


「ねえ、お父さま、リーヴェル国に行かなきゃいけないの?いつ?アランから絵本を借りる約束をしているの」

「フィリア姫でいらっしゃいますか?お初にお目にかかります。申し訳ございませんが、私と一緒に直ちに陛下のもとへお越しください」

パパさんに質問したつもりが、赤髪のおじさんから返事が返ってきた。

「たかだか伝令役が、フィリアと私の会話を遮るな」

「は!申し訳ございません」


なんだかパパさんが怖い……ピリピリしているのが伝わってくる。

それより、今このおじさま、私のことを姫って呼んだ?照れる!


「殿下、時間はありません。今、シビアの港に船をご用意しております。至急、帰還のご用意を願います」

パパさんのことは殿下だって!殿下や姫って、まるで王族の一員みたい!



………ん?



「王子殿下がお生まれになられたのだから、もう私に用はないはずだ。陛下はなぜ私達の帰還を命じた?」

「……もし、オーヴェ殿下が帰還を拒むようでしたら、強制してでも帰還させるよう、陛下から命ぜられております」

おじさまが片手をあげると、後ろに控えていた部下の皆さんが長剣を構えた。

「フィリア姫だけでも、お越しいただきます」



ええ?!


私はパパさんの手をぎゅっと握った。

どういうことパパさん!!


私の動揺が伝わったらしい。

パパさんは、私を抱き寄せると、使者に居直った。

「フィリアだけ行かせる訳がないだろう。もういい、リーヴェル国に帰るよ」

「では、すぐ出発を。馬は用意しております」

「ふふ、貴方が言ったとおり。荷解きしなくてよかったわ。準備万全よ?」

パパさんの苛立ちなんて感じなかったように、ママさんがふんわり笑った。

ああ!ママさんのその微笑みは癒しの天使!

娘ながら惚れてまうやろ!ママさーん!



「お父さま⁈お母さま⁈アランとの約束があるわ!アランに会いに行かなくちゃ!」

私は大声で叫んだ。小さい頃、アランには突然会わなくなって、寂しい思いをさせた。これからはいっぱい遊ぼうと思っていたのに!約束してたのに!


赤髪の使者のおじさまは、あくまでも優雅に私達を馬車へと誘導した。

だけど周りの一同は武器を構えたままで、強制連行にしか見えないよ!


私はパパさんの抱っこから降りようとじたばた暴れた。でもパパさんは離してくれない。


屋敷の玄関を出たところに馬車が待っていた。

本当にすぐ私達を連れていくつもりだったらしい。

馬車の周りにも武装したリーヴェル風の格好をした兵士がいる。



「フィーリ!フィーリ待って!お前達、フィーリをどこに連れていくんだ!」

「アラン!」

長剣を構えた兵士達の向こうにアランがいた。右手に稽古用の長槍、左手には絵本を抱えている。

私はパパさんのわき腹を蹴った。パパさんも蹴られるとは思わなかったのか、腕が緩んだ隙に私はパパさんから離れてアランのところへ走った。

アランも長槍を捨てて、兵士の間をすり抜けて走ってくる。


アランと私はぶつかるように抱き合った。

「フィーリ!」

「アラン!ごめんね、約束してたのに…」

「約束しているんだ!これ!絵本!」

アランは私をぎゅうっと抱きしめる。

突然のことに私は混乱していた。

今日も遊べると思ったのに。これからいっぱい遊ぼうと思っていたのに。

リーヴェル国に帰ったら、また会えるのかな。

「貸すだけだから!フィーリ、絶対返してよね!今度会ったときでいいから!」

アランは私をますます抱きしめた。

でも、力任せじゃない。混乱している私をしっかり支えるように、ぎゅっと抱きしめてくれた。


アラン……

誘拐事件の時だって、私を守るように抱きしめてくれた。


「アラン……。…ありがとう!次、会ったときに返すから、貸してちょうだい!」


私はアランから絵本を受け取った。


ただの絵本じゃなくて、約束をもった絵本だ!!





本編とは関係ありませんが、メリークリスマス!

クリスマスプレゼントは下記のボタンをぽちっとなげふんごふん




またもや閑話挟むかもしれません。

ダンくんはフィリアの誕生日プレゼント何を用意したのでしょうか。

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