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25.もふもふ道中膝栗毛

本日2回目の投稿です。

ご注意ください。

結局、ダンを止められたのはじいやでした。


「ほおっ」

相変わらず変なかけ声をあげると、地面がぶももと盛り上がってダンとアラン達を隔てる壁を作った。

「うわ!何だこの壁!」

「お師さま!なにするの!」

「フィリア⁈無事かい⁈」

ダン達の三者三様の言葉に、じいやは楽しそうに笑った。

「元気が有り余っておるようじゃのう。いいことじゃ。旦那様、この3人と私で騎乗しましょうぞ」

「先生にそう言ってもらえると助かります。さあ、フィリアは私達と一緒だよ」

パパさんは私をひょい、と抱き上げるとママさんをエスコートしてラクダもどきの輿に乗った。アランパパが手綱を握るその一頭は、小型のラクダもどきらしく、4人乗りがいいところだった。


あれ、じいやにもふもふ天国奪われた⁈



遅まきながら気づいたとき、私は久しぶりに会うアランパパに撫でてもらい、お膝抱っこをしてもらっていました。

ああ…渋低い美声に酔いしれる……



「ハサン、3年間ありがとうね」

パパさんが切り出すと、アランパパは顔を顰めた。

「……長い3年だったぞ」

「うん、ちゃんと借りは返す。どう言ってここに来たの?」

「貴様を真似た。家人には出掛けるとしか言っていない。こいつで来れば、一週間で来れたしな」

「じゃあ、一週間後オアシスに着いて、そこで私達の帰還が知れ渡るってことか」

「王都にいるカザンから、定期的に連絡が来ている。参考になるか分からんが見てみるといい」

ん?ん?

パパさん達の会話が頭のなかを滑ります。


パパさんはいずれ全部教えてくれると約束してくれました。

会話を聞いていてもいいけれど、きちんと教えるのはまだ先、そんな段階なのでしょう。


私はアランパパのふさふさの尻尾をこっそり触ることにしました。

油断大敵、今この瞬間ならちょっとぐらい……


そうっと手を伸ばしたとき、アランパパが私に話しかけてきました。

「フィリア殿、久しぶりだな。元気そうで安心した。ヴァーレは良いところだったか?」


ああ!尻尾が!


「ヴァーレはとっても楽しいところでした!私も久しぶりに皆さんに会えて嬉しいです」

「そうか、アラン達には詳しいことは何も教えていない。……フィリア殿が精霊の申し子ということも、2人は知らない」

「え、そうなんですか?」


それは、アラン達に精霊の申し子と教えてはいけないということだろうか。

うーん、せっかくできるようになったことをお披露目したかったんだけどなあ。

「もう教えても大丈夫だよ。フィリアも、見せたいものがあるんだろう?」

私の心中を察したようにパパさんが言いました。

"もう"という言葉が気になりますが、素直に甘えましょう。

「そうなの!2人に後で見せてもいい?」

ダンに側にいてもらえば、空を飛ぶ術は失敗しても大丈夫です。


「いいとも。夕方になったら天幕を張り始めるから、その間は遊んでいていいよ。アランくんやジャンくんは久しぶりだものね。いっぱい遊んでおいで」

「フィリア、お父さまが心配するから、先生やダンくんにも一緒にいてもらうのよ?」

ママさんに言われて私は大きく頷きます。いっぱい心配かけたことあるし、油断しないようにしないと。



その後、夕方になって野営地に到着したとき、アラン達3人は神妙な顔で輿を降りてきました。

じいやに聞くと、楽しそうに「紳士協定というものを教えましてのう」と白いお髭を揺らして笑っていた。

一体なかで何が……?


私はダンに聞くことにした。後ろからそのもふもふした腕を捕まえる。

「ダン!」

「フィリア!驚かせないでよ」

「ふふ、ねえ、アラン達と何を喋ってたの?」

「大したこと話してないよ。自己紹介くらいかな」

「ふうん」

自己紹介であんな神妙な顔になるのかな。絶対ダンは、私がヴァーレでやらかした数々の失敗を言いふらしている気がする。

アランやジャンが小さい頃の私に抱いていたイメージをぶち壊してしまったんじゃないかな。

「なに、疑ってるの?それより、あいつらに精霊達と遊んでるところ見せたいんじゃないの」

「そうなの!風の精霊達を呼びたいから、ダンは見守っててね!」


その後、私はアランとジャンの前で、確実にできる精霊術を披露した。

風の精霊を呼んで、少しだけ浮いてみせる。そのままくるくる飛び回って、疲れる前に地面に降りる。

ダンならもっと高く、長く飛ぶこともできるんだけど、私はまだまだだ。

「すごいっ!フィーリ、空を飛べるんだ!鳥みたい!」

「本当だ!歌で聞く風の精霊みたいに優雅で可愛いよ、フィリア!」

ジャンの褒め言葉に、本当の風の精霊を知っているダンは顔を顰めた。

前にフィリアの飛び方は虫みたいだ、と言ってきたダンにとっては、ジャンの例え方は不満なんだろう。

ぱっと見た感じでは、白黒の毛並で顰めたとは分からないんだけど、長年の付き合いがある私には分かるんだから!

「フィーリは精霊の申し子だったんだな!」

「そうなの、アラン。あの誘拐事件で知ったの。でも全然扱いきれなくて。2人になにかあったら大変だから、ずっと会わなかったの」

「そんなの!僕は怪我したって、フィリアに会いたかったよ!」

「俺だって!フィーリ、怪我なんか気にするな!」

2人の優しさと、熱い友情に私はホロリと感動してしまった。

ううっ…転生してから涙もろくなったよー!


「ありがとう!2人にそう言ってもらえると、とっても嬉しい!」

涙を誤魔化すようににこっと笑ってみせた。


……あれ?2人が目をあわせてくれないぞ?

ダンが咳払いすると、2人はギクシャクと動き出した。

うーん、泣いちゃったのがわかったのかなあ、気を遣わせてたら申し訳ない。



「お、俺!カザン兄さんから、精霊の申し子が出てくる絵本を前に貰ったんだ!家に帰ったら、見せてあげる!」

「精霊の申し子の絵本⁈読んだことないわ!楽しみ!」



アランと新しい約束ができた!

お家に帰る楽しみもできたし、皆で旅するのも楽しいな!




私達はそうやって、日中の輿は別れたり、一緒だったりしながらも、大人達が天幕を張る間は楽しく遊び続けたのです。

一週間の旅路も、あっという間だわ!




ダンくんは、花から花へ移り飛ぶ蝶の姿を思い、フィリアの飛ぶ姿を形容しました。

蝶と言えなかったのは、照れ隠しです。

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