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22.友達百人できるかな

「ギル!もう一回!」

「ウルサイ!チビ!我儘……聞きゃあいいんダロ!聞きゃあ!」

「ギル!嬉しい!大好きー!」

「ダン、睨むな!フカコウリョクだ!」



ヴァーレの丘で楽しく遊ぶ子らの声。

そう、私フィリアはヴァーレを思い切り満喫しています。



***



ヴァーレに来たあの日、私はパパさんに聞きました。

「どうしてヴァーレに住むの?私に隠していること、なあに?」

パパさんは、にこりと笑いましたが、答えてくれません。

「お父さま、精霊の申し子は珍しくないって言ったわ。でも、シャンク族のおじいさんは、私みたいなのは初めて会ったって言ったわ!」

「フィリア……」

つい問い詰めるような口調になったとき、パパさんが泣いているように見えました。

パパさんは、私に大きな隠し事をしている。

きっとそれが、家族ごとヴァーレに越した理由なんだろう。

でも、パパさんは、絶対言わない。



これ以上聞いちゃいけない、というのを私は察しました。

知らないより知りたい。

でも、大好きなパパさんに悲しい顔をさせたくない。


「…お父さま、フィリアが大きくなったら教えてくれる?」

「……もちろん!フィリアが大きくなったら…全部教えよう。そうだね、フィリアは、何かしたいことはある?」

パパさんの罪悪感からでしょうか、娘のお願いを何でも聞いてあげよう、という質問に私は悩みました。


パパさんやママさんと一緒にいたい、これはできてる。

精霊のことをもっと学びたい、これはじいやにお願いしよう。

もふもふしたい、愛しのダンがいる。

憧れの鳥の獣人にも会えたし…あとは……



「お父さま、アランに会いたいわ」

「……アランくん?」

「うん。私はともかく、アランは急に会えなくなって、びっくりしたんじゃないかなって。謝って、もう一回、お友達になりたいの」

「お友達、ね……」


おーい、パパさーん!目がこわいよー!

娘の可愛いお願いに対する顔じゃないよー!!


「わかった、じゃあ、フィリアが9歳になったら、オアシスのお家に帰ろう。きっとハサンも3年が限度だ。そうしたら、アランくんと遊べるよ」

「本当⁈お父さま、約束なんだから!」

私はパパさんの首にぎゅうっと抱きつきました。


あと、3年は何も知らないフィリアでいます。



***



そう、決意したのが、今から約2年半前……


フィリア=ユーメル、もうすぐ9歳になります。


「ギルー!もっと高くー!!」

「チビ!暴れるなじっとしてろ!」

私はギルという鷹の獣人の男の子と仲良くなりました。

ヴァーレの入口で私を捕まえたヒナの子です。

ギルはボネロ族の長の息子で、あの日はボネロ族しか知らない薬草を焚いていたパパさんを不審に思い、私を捕まえたそうです。

その薬草は、パパさんが昔長に貸しを作ったときにもらったものだったそう。

薬草を焚けばボネロ族が歓待するという約定だったらしいのですが、幼いギルはそれを知らず一人で突撃に来たと…そういうことだったそう。



「ほらよっ!」

「きゃあーっ!!」


ギルは私を連れて高く高く飛び上がると、そこで私を放り出した。

私は両手を広げると、風の精霊を呼び、滞空できるよう膜を張る。

横をギルが同じように滑空している。

要は彼ら鳥の獣人の真似だ。

自力で空を飛ぶことは、まだまだ練習中。自分の体周りに空気膜を張りながら、膜ごと風で押し上げる。長時間は飛べないので、練習に飽きると、ついギルにこうして運んでもらうのだ。


風の切り方は勘任せ…というか精霊任せ。

彼らは優しいから、怪我をさせることはない。


「フィリア!もういい加減その遊びはやめなよ!」

「ダン!すごーい、飛んでるよ⁈」

「僕だって練習したから!じゃなくて、見ててハラハラするから、降りなよ!」

ダンは風を纏い空を飛んでいた。

私と同じ高さ、というか私が落ちたら捕まえるつもりで、目の前を浮いている。


ダンは、ここに来てから背が伸びた。

ちょうど成長期だったらしい。

すらりと伸びたその姿、と言いたいが、熊の獣人である彼は少し体格が良い。

断じて言うが太っているのではない。もふもふボディの魅力を最大限に発揮したラインと言っておこう。

……ボネロ族の少年は、鳥のせいか皆上半身が翼で厚く、下半身はすらりとしている。全身もふっとしたダンを見て「でぶ!」と言った子は、なぜか次の日空を飛ぼうとして失敗したらしい。や、ほんとなんでだろう(がくぶる)


ごほん、ダンにとっても、広いヴァーレの地は風の精霊の練習にぴったりだったらしい。

私と一緒に空を飛ぶ方法を研究し、私より先に飛べるようになった。


「ダンは心配性なんだから。大丈夫よ?」

私は文句を返しながらも、高度を下げていった。

ダンに逆らうと後が怖い。よおく学んだ出来事だ。


地面にたたたっと降りると、ギルも降りてきた。

「ダン、オマエもチビのお守り大変だなあ」

「チビってなによ!ギルの鳥頭!」

「ンだとお!ん?いやでも俺確かに鳥だしなあ」

「僕にとっては2人とも一緒だよ……」


ギルとダンは同じ歳だったらしい。

私の5歳上、今度14歳になろうかという頃だ。

2人は私とよく一緒に遊んでくれ、精霊との遊びにも付き合ってくれる。


ここヴァーレは外界の干渉がないから、好きなだけ好きなことをやれるのだ!

精霊をどれだけ扱えようが、ここではどうでもいいみたい!


「フィリアーー。いたいたーー」

ばさっばさっ、とボネロ族の子ども達が空から降りてくる。

皆川に行っていたらしく、翼が水滴をはじききらりと光っている。

そして首から下げた籠には、びちびちと魚が入っていた。

「フィリアやっと見つけたよー。ね、焼いて?」

「やっぱり!別にいいけど…私の分は?」

「もちろんあるよーー。ねえー?」


男の子も女の子も、お腹が空いて魚獲りに行ってたらしい。お菓子がなければ魚を食べればいいじゃない、という発想だ。


私は近くの草をぶちぶちと引き抜くと、地面に撒いた。

「………おねがいっ!」

「おおー、いい火力ー。さ、皆焼くよー」


皆籠から嘴やら使って器用に魚に枝を刺して、火にかざした。

うーん、あぶらの乗ったいい香りがしますねえ。


皆で親に隠れて魚を食べる。なかなか楽しい。

ダンはちなみに2匹食べた。


「あー、美味しかった。フィリア、こっちもお願い」

「私より皆のほうが我儘だと思う……えいっ」

私は水の精霊と風の精霊にお願いして、皆を乾かした。濡れていると飛びにくくて不快らしい。



……うん、やっぱりここでは、精霊をどれだけ扱えようが、どうでも……ただの便利屋さん扱いだし……


フィリア=ユーメル、ヴァーレライフを満喫しております!





ヴァーレのご飯は、新鮮な素材をふんだんに使った料理が主流だそう。

ヴァーレにしかない野菜もあり、ママさんは手料理を楽しんでいるそうです。

ダンくんはご飯が美味しくて困っているそうです。

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