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「ふぉっふぉっふぉ」と笑ったら賢者扱いされた

作者: たこす

「賢者様! 最近、妻の態度が冷たいんです! どうすればいいかお教えください!」

「ふぉっふぉっふぉ。そんなの知らん。直接聞いてみたら?」

「なるほど! さすが賢者様! 他人に聞くのではなく直接聞けということですね! 今晩、直接聞いてみます!」

「ふぉっふぉっふぉ」



「賢者様! 息子が騎士団に入りたいと言ってます! どうすればいいでしょうか?」

「ふぉっふぉっふぉ。そんなの知らん。勝手にすれば?」

「なるほど! さすが賢者様! 息子の自主性を尊重しろということですね! 好きなようにさせます!」

「ふぉっふぉっふぉ」



「賢者様! あなたのような偉大な魔法使いになるにはどうすればいいでしょうか」

「ふぉっふぉっふぉ。そんなの知らん。わかるわけない」

「なるほど! さすが賢者様! 安易に答えを求めるなと言うわけですね! 自分で答えを見つけてみます!」

「ふぉっふぉっふぉ」




 ワシの名はクルース。

 正真正銘、ただのジジイじゃ。

 村のはずれに住み、一人で自給自足の生活を送っていたのだが、たまたま村の小僧どもがやってきて畑を荒らしていったから「こりゃ!」と怒ったらなぜか「仙人」扱いされてしまった。


 まあ見た目を気にしない性格だから長く蓄えたヒゲと長く伸びた髪の毛を見てそう思ったのだろうが、その後、小僧どもの親が来て謝罪をしに来たもんだから


「ふぉっふぉっふぉ。まあ、子どもとはそういうもんじゃて」


 とわざとらしく笑ったらなぜか「賢者」認定されてしまった。




「村のはずれに賢者がいる!」




 その情報はすぐに拡散され、なぜかワシの元に連日悩める村人たちが押し寄せてきてしまった。



「賢者様! 好きな子に告白したいんですが、相手の気持ちがわかる魔法はないですか?」

「賢者様! 息子が非行に走ってしまって困ってます。どうすればいいですか?」

「賢者様! 最近、不眠症なんです。スリープの魔法を伝授してください!」



 と、まあワシに相談されても困る案件ばかり。


 ワシ、普通の老人なのに……。

 齢70のジジイなのに……。


 しまいには

「賢者様のお姿を見ると長生きできます。ありがたや、ありがたや」

 と手を合わせて拝まれる始末。


 ほんと気まずい。


「ふぉっふぉっふぉ。ワシを拝んでも何もないぞ?」

 と言っても

「さすが賢者様! 拝む時間があるなら精進しろと言いたいわけですね! かしこまりましたかしこ!」

 といいように解釈されてしまう。



 これ、バレたら大変じゃのう……。



 なんて思ってると、村の若者が血相を変えてやってきた。



「賢者様、大変です! 東の森から魔族の軍団が侵略してきました!」

「魔族?」


 魔族というのは魔界に住む化け物で、古来より人間の敵と言われている。

 その魔力は人間の数倍。

 腕力は数十倍。

 体力は数百倍。



 そんな魔族が村に攻めてきたという。



 そういえば東の森には魔界の入り口を封印してる洞窟があったと言われていた気がする。

 ワシの子どもの頃の話だから、もしかしたら封印が弱まったのかもしれない。


「ううむ」


 これは由々しき事態。


「賢者様! どうかあなた様のお力で魔族を撃退していただけないでしょうか!」

「え?」

「村の人間では対処できません。このままでは村は全滅です。どうか賢者様のお力をお貸しください!」

「い、いやあ、さすがに魔族相手にワシの魔法なんか……」


 そもそもワシ、魔法使えないし。


「何をおっしゃいます、賢者様! あなた様ほどのお力なら魔族の軍団なんてひとたまりもありません! どうか、お力を」

「いや、そうは言ってものぉ」


 っていうか、ワシの力を見たことないじゃろ?

 ワシ、ただの老人よ?


「賢者様! どうか! どうか!」

「んん~」


 そうこうするうちに、村人たちが集まってきた。


「賢者様ー! お助けを~!」

「賢者様ー!」

「賢者さまー!」



 ここまで乞われては「やだ」とは言い出せない。

 賢者ということで、村人たちからは野菜もいっぱいもらってるし。


 ワシはすっくと立ち上がって「あい、わかった」と言った。


「どこまで通用するかわからぬが、ワシが相手をしてこよう」

「おお! さすがは賢者様だ!」

「これで魔族もイチコロだな!」

「へへん、魔族め。ざまーみろ」


 そこまで安心されても困るのじゃが……。

 いざとなったら自分一人で逃げ出そう。村人たちには悪いが。


 ワシは近くにあった杖(歩行用)を手に取ると、魔族が攻めてきたという場所に向かった。



     ※



「がはははは! 人間どもよ、今日から我ら魔族が人間界を恐怖のどん底に突き落としてやる。覚悟しておけ」


 行ってみると、魔族を絵に描いたような魔族が口から炎を吐き出しながら愉快そうに笑っていた。

 幸い、村人たちに死者はいないようだ。


 ワシはゆっくりと魔族の前に出ると、杖を突きつけた。


「魔族よ、おとなしく帰ってくれんかの?」

「ああ? なんだてめえは。我ら魔族にたてつこうって輩か?」

「いや、できれば話し合いをしたいのじゃが」

「話し合いだと? がははははは!」


 笑い方が怖い。

 これ、瞬殺されるレベル。


「何をほざく、ジジイ。我ら魔族は人間と話すことなどないわ!」

「まあ、そうおっしゃらずに」

「うるさい、死ね!」


 魔族がワシに攻撃しようとしたその時、なぜか振り上げた拳を止めた。


「……な、なんだ、貴様。普通の人間じゃないな?」

「……?」

「こんな隙だらけの人間、初めてだ」


 なぜか魔族は困惑しながら後ずさる。

 どうやらワシ、隙だらけらしい。合ってるが。


「それなのにその余裕……。もしや貴様、人間の中でも特別な存在なんじゃ……」


 魔族の言葉に、どこに隠れていたのか村人たちがやってきて口々に言い放った。


「その通りだ、魔族野郎! ここにおわす御方をどなたと心得る! このお方はな、人間界の最高峰、賢者様だぞ!」

「そうだそうだ! 魔王に匹敵するほどの魔力を持った偉大な方なんだ!」

「襲ったら返り討ちになるレベルの御方だぞ! 命拾いしたな!」


 いや、魔王に匹敵する魔力などない。

 むしろ凡人以下。


 しかし魔族はなぜか彼らの言葉を鵜呑みにしたようで

「バカな……」

 と怯えた表情でじりじりと後退していく。


「賢者がなぜこんな辺境の村に……。しかし、確かにただならぬ雰囲気を醸し出している……」


 ただならぬ雰囲気は一切出してはいないんじゃが……。


「し、しかし、我は魔王様に仰せつかった先遣隊の隊長! ここで引き下がるわけにはいかん! 覚悟しろ!」


 魔族が再び攻撃の意思を示したので、思わずワシは

「ふぉっふぉっふぉ」

 と笑ってやった。


 するとどうだろう。


 魔族は「ひっ!」と小さな悲鳴をあげてさらに後退していった。


「そ、その笑い、確かに賢者のようだ……。賢者といえば勇者に次ぐ力の持ち主。魔王様に匹敵する魔力というのもウソではあるまい……」


 そう言うと魔族は背中を見せて逃げ出した。


「か、勘違いするなよ、人間よ! これは勇気ある撤退だ! 今度来るときはもっと強いヤツを連れてくるから覚悟しておけ!」


 そう言って魔族の軍団は消えていった。


 あとに残された村人たちは拍手喝采。


「さすがは賢者様だ!」

「賢者様が魔族を追い払った!」

「伝説を作りましたね!」


 ワシ、何もしてないんだけど……。


 と言い出せるはずもなく。

 ワシはなぜか威圧しただけで魔族を撃退した賢者として語られることとなったのだった。




 もう笑うしかない。


 ふぉっふぉっふぉ。

お読みいただきありがとうございました。


完全思いつきで書いてしまいました、すいません。

でも実際に「ふぉっふぉっふぉ」って笑う人いたらすごいですよね。

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