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ラブコメ

転生したらゾンビがいる世界!?前世の彼氏が恋しい、私の恋のお話

作者: しぃ太郎

ゾンビが普通に存在しているパラレルワールドです。


ゆるふわ設定なので、温かい目で読んで下さると嬉しいです。

 幼馴染みで、格好良くて、大好きな彼。

付き合って3ヶ月目、そろそろお互いの部屋に〜なんて話していたら…。


 私転生してるわ!この世界で生きてきた記憶もある、が。


「〇〇県でゾンビが目撃されました。外出の際は必ずワクチンを持ち―」

前世の私がこのニュースにやっぱり吃驚(びっくり)するもの!

TVから流れるニュースは、近くでゾンビが目撃されたとか、襲われたとか、今年は例年に比べて多いとか。


 私の名前は、本宮 優花(ゆうか)

この世界の高校生だ。

 鏡を見ると私だけど私じゃない。前世と顔立ちが変わっていて、美人になっているしラッキーとは思う。でも、私の様な私じゃない様な…。


「優花〜〜!お隣の彰人(あきと)君が待ってるわよ!急ぎなさい!」

 

 前世の家族とも違う。けれどやっぱり私のお母さんだ。今世の人格の方が強く出ているかも。


 あぁ前世の幼馴染みで彼氏だった「(けい)くん」。穏やかな性格で人気者だった。もう会えないなんて…。


 現世での腐れ縁のあいつは、彼氏でも何でもない。

体が大きい、猛獣よ!まぁ、かわいい所もあるから大型犬って事にしとくわ。


「はいはい、今行きますよっと」

鞄を持って玄関を出た。


 目の前には、いかにも体育会系でちょっと肉食を思わせる幼馴染みの彰人が居た。意外とモテる野郎だ。

お互い、手を上げて挨拶する。

「近くでゾンビが目撃されたらしいぞ。早く学校に行こう」


 彼はそう言ってさっさと歩き出す。

私のペースに合わせてくれているみたいだけど、これが圭くんだったら手を繋いでくれたんだろうなぁ。


はぁ。


ゾンビが居る世界。けれども、そんなに大事では無くて、24時間以内にワクチンを打てば感染する心配はない。


 数自体も少なく、街中に現れたらニュースになる程度。ゾンビの繁殖方法は、もちろん感染が多いけれど、犯罪系もよくある。死体遺棄事件の被害者がゾンビになってしまうのだ。


 基本、亡くなった人はすぐに火葬する事になっている。


 1人暮らしの高齢者はもしもの時の為に、半年に1回のワクチン接種が義務付けられているが、たまに出るゾンビは孤独死なんかの場合もある。


「ねぇ、彰人はゾンビを見たことある?男子って撃退スプレーとかバッドで追い払った武勇伝を語っているよね」

「あぁ、俺は無いかな。わざわざ危ない所に行かないし。そういう事言ってる奴らって、準備万端で大勢でゾンビを倒すためにわざわざ山に行くんだぜ」


 へぇ。やっぱりこの世界の常識に馴染めないわ。

別に、ゾンビ保護法なんて物も無いからゾンビハンターなんて職業もある。

記憶が蘇った今なら、色々とツッコミたいわ。


「そんな事グダグダ言ってる前に早く行こうぜ。一限目、移動教室だっただろう」

「あぁ、そうだったわ。遅刻判定厳しいんだよね、あの先生」


 私は足を速める。だがやっぱり彰人は私と並んで歩かない。この変わらない距離感。この野郎。


――学校に着いたら、悲鳴だらけだった。

阿鼻叫喚ってこういう時に使うのよね?校門から逃げ出す大勢の生徒たちが押し寄せて来る。


「ゾンビが出た!みんな逃げろ!」

周りの生徒に声を掛けて逃げる、律儀な人のお陰で状況が理解できた。


「優花、逃げるぞ」

彰人が手を差し出した。その手を掴もうとした瞬間、逃げ出す生徒たちに押し出されてしまった。


(あ、ヤバい。倒れ込んだ時に捻挫したかも)

 

 肌色が明らかに異常で、一目でゾンビだと思われるモノが生徒たちを追いかけて校門に近づいてきていた。


――転生した記憶が蘇った日にゾンビに遭遇?


 立ち上がれそうに無いし、大好きだった圭くんはこの世界に居ないし。ついてない。


「優花!逃げろって!」

彰人の声がする。駆け寄ってこようとしてるの?

危ないから、私なんて放って早く逃げなよ。


 ちょっと色々と諦めかけた私を、彰人は抱き上げた。オイ、そこはお姫様抱っこだろう。なんて突っ込みすら出来ない。肩に担がれていても感謝しかない。


 彰人はゾンビが居る校門とは逆の方向、目の前の校舎の方に走り出した。


「なに馬鹿みたいに座り込んでんだよ!一旦何処かに隠れようぜ」

「彰人、ありがとう!ちょっと歩くの無理そうだからその辺よろしく!」

本当にお荷物だから担ぐのが正解だな。

 

 そんなやり取りでも、彰人の声に安心した。幾らワクチンがあるからゾンビ化はしないとしても、大怪我をする可能性もあるのだ。そのまま、襲われて殺される事態もあり得る。


 私達は、体育倉庫の中に隠れることにした。中から鍵をかける。

一応ゾンビ対策グッズが置いてある場所が各所にある。ここもそうだ。


 ここに隠れた事で、お互いに一息つけた事から会話する余裕ができた。


「優花、朝から少しぼんやりしすぎじゃないか?ずーっと変な顔で俺の事見てくるし。さっきも避難しないで諦めかけただろう」

――あぁ、気づかれていたか。


「なんていうか夢見がね。私なんだけど、私じゃない人間になっていた夢を見たんだ〜…。その夢では付き合って3ヶ月の彼氏も居たんだよ。なーんか幸せな夢でさ、引きずっちゃってた。ごめんね」


 前世の記憶なんて正直には話せないから、夢の話で濁した。


「ふーん。付き合いたての彼氏ねぇ。そいつと俺を比べてがっかりしてたってか?」

「いやいやいやいや!夢の話だし、理想的なのは仕方ないじゃん!」

「…否定してねぇよ、それ」

彰人が拗ねたような口調になる。


 傷つけちゃったか。夢なのに。圭くんにはもう会えないから、ただの夢の話だ。


 その時、扉を激しく叩く音がした。

――ガンガンガンガン!

私と彰人は、撃退グッズの金属状の長い棒と、スタンガン、バットを手に持って目を合わせた。


 ゾンビは少し動きが鈍くても、力は物凄く強い。この扉も壊されるかもしれない。


 何分も叩かれた続けた扉は、遂には取っ手と鍵が壊れてしまった。

扉からゾンビが顔を見せる。


「優花!お前は後に!」

私を庇って彰人が前に出たが……。


「圭くん!」

ゾンビの顔が、前世の幼馴染みで彼氏だった圭くんだったのだ。


馬鹿な行動だ。彼はゾンビだ、分かっている。彰人にも迷惑を掛けてしまう。

でも、どうしても止められなかった。

こんな世界でまた会えたのだ。


「圭くん、私だよ、理沙だよ!ずっと会いたかったんだよ…!」


――バッコーーン!


 ゾンビが、次の瞬間に何メートルも後に吹っ飛んでいった。彰人がフルスイングで脇腹を殴って吹っ飛ばしたのだ。

(え、感動の再会だったのに、今、これ、え?こんな感じ?)


「馬鹿野郎!お前の幼馴染みは俺だけだ!」

「それはそうだけど!でも!前世で…」


「渡辺 圭!目の前で幼馴染みの彼女を事故でむざむざ失った馬鹿な男の事だろ!思い出したくもない!まぁ、そんな事どうでもいいが、あのゾンビ野郎と何処が似てるってんだ!」


 えぇ?彰人、何で圭くんの名前知ってるの?

あのゾンビ似てないかな?よく見れば似てなかったかも?

私の頭の中は大混乱である。


 結局、通報で駆けつけてくれたハンターが私達を救出してくれた。

私達は検査の為に別々に離され、何時間も病院に拘束された。


 ようやく顔を合わせた時には夕方になっていた。

私は検査を受けている間、圭くんと彰人の事をずっと考えていた。


何で圭くんの名前を知っているの?

何で顔まで知っているの?

何で幼馴染みって事まで…。


「よぅ、お疲れ。お互い無事で良かったな。もう、あんな体験は勘弁だわ」


 冷たい缶ジュースを渡しながら、私に見慣れた笑顔を向ける。

聞いたら、疑問に答えてくれるかもしれない。

でも。


(でも、圭くんじゃなくてもいい)


 さっき身体を張って私を守ってくれた彰人がいい。

それが私の中の自然な答えだ。

彼が圭くんの記憶を持っていようが、ただの私の勘違いだろうがもういいのだ。


「さっきのフルスイング格好良かったじゃん。武勇伝にしたら?モテモテになっちゃうかもよ」


こんなゾンビが居る世界だけど、頼りになる幼馴染みがいる。最悪なんかじゃなかった。(むし)ろ凄くラッキーだった。


 前世はなんて告白して付き合ったっけ。確か…。


「「ずっと前から好きだったんだけど。恋人になって欲しい」」

 

 2人の声が見事に重なった。


 答えももちろんお互い同じだよね?

彼の顔が赤いのは夕日に照らされたせい。

 私の顔も同じくらい赤くなっているかもしれないけど、夕日のせい。そういう事にしよう。


 私達は、そっとその告白の答えを口にした。



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