ポイントなくてもええやんけ!-アンナ・カレーニナの法則からWEB小説を読み解く-
「幸福な家庭はみな似通ってっているが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である。」
――トルストイ著 『アンナ・カレーニナ』より
いや、本当にかっこいい書き出しですよね!
こんな素敵な一文、いつか思いついてみたいものです。
さて、本題です。
みなさん「アンナ・カレーニナの法則」って聞いたことありますか?
ざっくりいうと、成功(=望む状態に合致)しているモノには多くの共通点が見出だせるけど、それ以外のモノはてんでばらばらな状態で共通点を見出しにくい……という法則です。
はい。
ここまで読めば勘の良い方は私が言いたいことが分かったと思います。
この法則、WEB小説界に当てはまるやん!
……というね。
実際、アンナ・カレーニナの書き出し文をこんな風に書き換えてみると……
「幸福なWEB小説はみな似通っているが、不幸なWEB小説はそれぞれに不幸である。」
うわー! すごくそれっぽくなった!
トルストイ先生はなろう小説で溢れかえる現代WEB小説界を予見していたのか……?!
ここで終わってしまうと「へーすごいね。で?」と言う感じなのでもう少し掘り下げてみましょう。
まず「幸福なWEB小説」ってなんやねん問題。
読者が読んでて楽しい小説。
作者が書いてて楽しい小説。
泣ける小説・笑える小説・タメになる小説……。
「みな似通っている」という語が後に来ることを考えると、こう書き換えてやるのが一番ピンと来るのではないでしょうか。
「ポイントが高いWEB小説はみな似通っているが、ポイントが低いWEB小説はそれぞれに不幸である。」
ふむふむ。いいかんじです。
しかし、こうなると後半の「ポイントが低いWEB小説はそれぞれに不幸である。」ってところが浮いてしまいますね。
ポイント低い=不幸じゃないしさ!
もちろん、評価されずしょんぼりすることもありますが……不幸ではない! 絶対にだ!
というわけで。
ここも、アンナ・カレーニナの法則に立ち返ってこう書き換えてみます。
「ポイントが高いWEB小説はみな似通っているが、ポイントが低いWEB小説はそれぞれに個性がある。」
うんうん。これで違和感なし。
よく創作論で言及されるような文言になりました。とくに、前半は。
それでは最後に、この言葉からどんな教訓を得られるか考えてみましょう。
まずは前半部分に注目してみましょうか。
――「ポイントが高いWEB小説はみな似通っている」
ここから読み取れる教訓は、評価される小説を書くためには、既に評価されているWEB小説の共通点を見出して、それを織り込んで執筆すべき……なんてとこでしょうか?
実際、アンナ・カレーニナの法則はそんな風に経営の現場で活用されてますからね。
「成長している会社の共通点を見出して、うちの会社でも同じ取り組みしようぜ!」ってなかんじで。
ただ、これは既にあらゆる創作論で言われていることだし、さらっと流します。笑
それでは次に、後半部分に注目してみましょう。
――「ポイントが低いWEB小説はそれぞれに個性がある」
私には、なんだかこちらの部分のほうがすとん、と腑に落ちました。
もちろん、ポイントが高いWEB小説にも個性的な作品はありますよ!
ただ、まだ評価されていない作品には、いわゆるメインストリームから外れた、尖った魅力や光る独自性が眠っている可能性が高いんだよな。
そう、改めて思ったわけです。
思い返してみると、ポイントが少なくてもガツン! と刺さるWEB小説にはいくつも出会ったことがあります。
抑えた筆致なのに、読んでいくとめちゃめちゃワクワクする冒険譚とか。
明らかに本職ですよね? という専門知識マシマシのお仕事モノとか。
小説の楽しみ方は多様です。
空想の世界観に浸ったり。
登場人物に深く感情移入して心乱されてみたり。
あるいは、自分が想像もしないような発想に振り回されてみたり。
自分が予想もしない世界を覗いてみたいとき。
そんなときは、あえてポイントが少ない作品を訪問してみるべきなのかもしれない。
さらに翻って書き手の立場で考えてみると。
自分の書いた小説が思ったよりもあんまり評価されなかったとき。
その小説には他にない個性がたくさん備わっていると考えられるのかもしれない。
そんな風に考えてみると、なーんかWEB小説ライフが楽しくなってきそうだぞ!
トルストイ先生、ありがとうございます!(?)
と、いうことで。
今日こそスコップ活動するぞ! ついでに、ちょっとでもなんか書いてみよう!
……と胸に誓った休日でした。




