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異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第三章 セドゥーナ学園・前編 学園生活と影
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78 実地潜入訓練

 

 闇オークションの開催される付近に、カルラに連れられアーシアは来ていた。

 以前に、爆破事件があった近くの場所だ。この場所を魔石発見機レーダーで、見つけた二人はよく人の出入りが見える場所で待機していた。



「なんで、こんなところで開いているんやら、

全く怪しげな場所がないようなところなのよ、見てのとおりね」


 そこは、連結した住宅の壁を取り外して広げた作りで、夕方からの営業の会員制クラブのような店舗になっていた。

 オーナーは、どんな人物か名前の記載はあっても、分からないとのことだった。

 周囲は、元々民家が多い場所だったが、いつの間に空き家が増え、住人もまばらだ。それでも、住民による深夜の騒音などの相談は行政にされていた。



「かえって、そこに目を付けたのかもしれないわね。

 民家の連結した建物が空きがまとまってある所があってね、

そこの一画に、この間、見に来た建物があるの。


 最近、夜、流行っててね、 

その地下が何やら怪しいのよ。

 別に搬入口があるには違いないんだけど…

 あるとしたら、反対側の山の森になっているところかしらね。


 調べによると、オークションでは、

魔石の出品は、数は毎度一つとか出ていたようなんだけど、

 アーシアの発見機では一杯(いっぱい)在庫は貯め込んでいるようね。


 まあ、目くらましなら違うところを爆破したほうがいいと思うわよね」



 クラブに出入りする派手な人物は、下の区域から階段を使って昇ってくる。その派手な客に混ざって、地味ながらも一目で裕福そうな連れやフードを目深(まぶか)に被った者などが入っていっていた。

 かなり繁盛(はんじょう)していることが、目に見えて分かる。

 爆破事件は、本当にここから近い、何か意味があるのだろうか……


 稀少(きしょう)な魔石の販売に、爆破……



「でも、爆破が一種の脅迫(きょうはく)だったら、話は違う」



 個人的に脅迫しなくても、爆破で(おど)せばいいのだ。

 魔石は、いつ出品されるか分からない、もし、目当てのものがあったなら、魔石の倉庫が爆破された場合、かなりの損失になるだろう。

 イレギュラー闇オークションは違法だし、見つかる確率も増える。

 どの魔石か分からなくても、今まで一つだったものが、複数個出品され、手に入る可能性が上がるかもしれない。

 考えようによっては、気が長い計画だ。連続する爆破事件そのものが、愉快犯(ゆかいはん)ではなく、計画の一部という可能性もありうることになる。



「よし、そろそろ行こきましょうか?

 さあ、これ着けて」


 と言って、カルラはアーシアに猫の仮面を渡した。


「え?ええ?潜入って、中に入るって意味……あ、はい…」


 アーシアは諦めて、仮面を着けた。カルラは大きめの鳥の面だった。

 二人ともマントのフードを被り、店のエントランスへと向かう。


 表の入口には、内側にチェックする案内人が一人いて、直ぐにクラブホールになっている。

 外からは分からないほど人が居て、生バンドが、端の方のステージのような場所でアップテンポの曲を演奏していた。

 足の踏み鳴らす音や楽器の低音の騒つきも大きく、これは、近所迷惑だろう。

 カルラは、迷わす、楽団(バンド)とは反対の奥のパーテーションで隠された方へと向かった。


 仕切りの向こうには、屈強な黒い服の男が二人下りの階段の入り口を守っており、カルラは、胸元から二枚のチケットを彼らに渡した。

 二人は頷いて、入り口を通した。

 この下が、オークション会場になったいるのだろう。

 暗い廊下を抜けると客席の上段になっていて、階段状に席があり、その向かいにオークションのステージがある。ステージは台が中央に一つあって、後ろは大きな幕が下がっている。


 指定の席に歩いて行くと、上の方にはボックス席もあるようだった。

 すでに、オークションは序盤だが始まっていて、客席は間を広く取っていて多くはないが、満員に入っているようだ。

 皆、似たような仮面にフード姿も多い。

 外側からは、想像できないほど中が広い。恐らく裏の崖を利用して、せり出させて部屋を作っているのだろう。

 地震の多い日本ではあまり見かけない建築方法だ。裏手は、森の木々でカモフラージュでもしているのだろうか。



 カンカンカン…


「本日、一品目の魔石でございます。こちらは…………」


 仮面に、燕尾服の男がプレゼンテーションを始める。品物はボス級の魔石のようだ。

 次々に稀少魔石が、競りに出される。会場が(ざわ)つき、今日は魔石が豊作だななどの声が漏れていた。

 やはり、魔石の在庫を放出させる目的だったのだろうか。


 魔石は、ほとんど一人の男が()りに勝っていた。手に入れているのは、全て赤い石だった。アーシアが、死の原戦場跡で手に入れた血脈石の欠片もあった。

 線の細そうなそんなに背の高くない石のような模様(もよう)の仮面を着けている。

 アーシアたちが通った時はいなかったので、後から入って来たのか、いつの間にか一番廊下に近い席に座っていた人物だ。

 フード付きのマントをしっかりと着込んで、様子がしっかりと見えない感じだ。


「最後は、こちら、本日の目玉でございます!

 伝説級の金属にして、大変な稀少価値の宝物でございます。


 その名も、『黄金(おうごん)のキトリニ』!!!!


 決して、手には入らぬ、(まぼろし)の金でございます!!!」



 興奮した様子で司会の男が、手を振り上げる。金額の提示は驚くほど高い金額で始まった。


「……あのキトリニって、()()()()が凄く強いです」

 こっそり、発見機を見つめていたアーシアが、小声でカルラに言った。カルラは、さり気なく周囲を見回していたが、その言葉に視線だけで反応した。


 高額にもかかわらず、客席から複数の声が上がる。次々に値が競り上がっていく。

 例の石仮面の男も、ざらついたくぐもった声で短く声を上げる。


 最終的に、先ほどの石仮面の男が、キトリニを競り落とした。



 オークションはまだ続くが、石仮面の男はキトリニの()りが終わるや(いな)や、席を立ち品物の受け取りに向かったようだ。

 アーシアとカルラは、さり気なく受け取り場所近くの廊下に出た。


 黒服の一人が、二人を見とがめるように声を掛ける。

 アーシアは気もが冷え震えあがったが、カルラが落ち着いた様子で、用紙を出し、装飾品の受け取りだと説明した。

 いつの間に購入していたのか、スマートな対応だった。一緒の受け取りの部屋へ行くが、キトリニと魔石は個室のようだった。

 それでも、隣の個室の様子を注意しさり気なく会話を伸ばし、石仮面が出てくるのと同時に何とか手続きを終わらせた。


 急いで、男の後を追う。アーシアは、石仮面の男を会場よりも明るいところで見て、背格好やマントが何やら見覚えがあることに気が付いた。

 競りの時聞いた声は、老人のようだったが、身のこなしや体格がどう見ても若い。


 すると、オークション会場が、急に騒がしくなった。



「あ、もう来ちゃったわね」


 カルラが言うと、客席の人が狭い通路になだれ込んできた。石仮面は直ぐに気が付いたようで、ケースを胸に抱え廊下に出ると急に逆方法に身を(ひるがえ)した。

 大量に逃げまどう人々に遮られて、石仮面は通路の奥へと消えた。しかし、あちらは出口の方ではないはずだ。

 三日前の見た時、階段下で見かけたので、もしかしたら、搬入口を知っているのかもしれない。

 カルラは、(きすび)を返して、素早く受け取り所の部屋に戻った。

 アーシアも、少し迷って、その後を追う。

 カルラは、現金や、帳面をまとめ逃げようとしていた従業員を、(つた)で縛り上げ、さらに逃げようと階段を降りて行く従業員の後を追っていった。


「アーシアはホールで待って居て頂戴(ちょうだい)!!」



 そうカルラに言われて、オークションホールへと行ってみると、数人の客と従業員関係者が、端の方に繋がりれていた。

 客はほとんど、クラブに逃げて行ったのでそちらは、人が満帆(まんぱん)になっているだろう。

 警察の制服を着た者が2人、他の容疑者らしき者を縛っていた。


「やあ、きみもいたんですね。令状が下りてね、警察と捜索差押(そうささしおさえ)に来たんですよ。

 大丈夫ですか?」


 銀の髪に騎士のような佇まいの金属(よろい)の男が、アーシアに声を掛けた。


「ええと、フリムカルド・ヴァルケン…さん?」


 相手は、不器用な感じに笑って、


「はい、覚えていてくれたんですね」


と言った。








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