67 染毛剤と毛玉
先生たちからの貴重なアドバイスを受けて、アーシアの中で染毛剤のイメージが固まった。
あちらの世界の染毛剤は、ケミカルで毛を軟化させ、キューティクルの隙間から色素を入れるという合成染料がメインだ。髪の毛のケラチンというタンパク質は非常に硬く、ほとんど分解できないからだ。
また、希望の色を出すためには、元の色を脱色して、入れ込まないと無理な色もある。
他には、髪の表面に色素を塗布する、つまりコーティングする方法がある。ヘアマニキュア、カラートリートメントなどだ。
また、あちらの世界で最近流行りだした、一日だけ髪が染まる染毛剤、あれも、その一種だろう。
手軽に使えて落とせるので、多くの若者がお洒落として使っていたとアーシアは記憶している。
アーシアは、アルディア人の髪色の豊富さに左右されず、地の色をカバーする、しっかりと毛をコーティングするタイプの、短期ヘアカラーを作ってみたいと思っていた。
またケミカル染料も、実験的に試作しようと思っている。
短期ヘアカラーに比べて、合成染料は施術する者の注意が必要になる。どんなに安全を考慮して作っても、目に入ったりしたら危ないからだ。
本当なら、マルチ染料というアーシアのスキルウィンドウのレシピなら何でも染まってしまうかもしれないが、ポケットコンロのように、アーシア自身しか調合できないとなると先が続かないため、広く錬金術師が誰でも作れるものを模索したのだった。
まずは、色素になる原料の植物に、白、赤、紫、黄色に発色するものを選び、水分を混ぜると粘着性が出てすぐに乾いてくっつく特性の粉、そして中和剤を選んだ。
粉には、キラキラする貝の粉末を入れてもいいかもしれない。
そして数時間かけて、最初の短期ヘアカラーの試作品を、錬金釜で仕上げることができた。
全ての色を作って、ニーちゃんに貰って来た、同じくらいの量と長さにした髪の毛を細紐で結んで束にして、塗布していく。
これは直ぐに結果が出ないといけないから、髪にくっついて、セット剤がついているくらいの重さでなくてはならない。
「うん、地のどの髪色も透けない! こんなならいいかも。あとは……」
アーシアは根を詰め過ぎて、作業すると亜空間ではうっかり何年も経ってたなんて、またなったら困るので専用の時計を完成させて、今では正確にもとの時間に戻れるようにしたのだった。
いつも傍に居るマドカは、作業中は初めはアーシアの様子を見ているものの、飽きてキャットタワーで寝ているか、家じゅうを遊び回ったりしている。
「爪は研がないでね!」
と言うと、
「おいら、そんなことしないぞ!!」
とぷりぷり怒っていた。
教会の兄弟猫たちは、もう、元気に遊びまわっているそうで、安心してこちらに居られるようになったようだ。
『扉から扉へ』には、やはり距離があるせいか、苦戦して中々大きな扉にならないでいた。
マドカは楽に、通って遊びに行くが。
亜空間作業場は、今は広さが安定し出して、レベルアップで、ウィンドウが現れるようになった。
『カスタムウィンドウ』と亜空間作業場で唱えると、iPadサイズのウィンドウが出てくる。
そこを見ると、[設定] : *-fi 、広さ、 ディスプレイ・環境 、通知、プライバシー・セキュリティ、電源 と項目がある。
*-fi:?????
広さ:はこの亜空間作業場のサイズ変更ができる
ディスプレイ・環境:
ディスプレイ:壁紙を変える 現在、3枚(田舎風景、星空、ファンシー)
環境 :温度₋湿度設定 各ブロックのカスタマイズ(※詳細)
通知:オン
プライバシー・セキュリティ:
プライバシー:スペース内侵入の許可 ブロック / カスタマイズ(※個人)
セキュリティ:オン(侵入に対して自動攻撃)
電源:オン
先ずは、ディスプレイを変えてみると、【田舎】は、周囲がビッコロ村風の風景になり、昼夜が一定の周期で自動で変わると、説明があった。
【星空】はそのまま、満天の空で夜だ。【ファンシー】は、パステルイエローにキャリーローズの小花柄で床の部分が板の見た目になった。
アーシアは、ファンシーを見て思わずぎょっとなった。小花柄なのにこうも広範囲だと結構な迫力だ。ちょっと狂気を感じる。それに、この柄、見覚えがあると思ったら移動工房の内側の色違いだ。
ご丁寧に、さらに細かく、3色のパステルカラーが選べるらしい。
とりあえず、今は元に戻すにしておいた。
環境の方は、この亜空間の環境を整えられるらしいが、今はまだ、レベルにより解放されていないとこらもあった。
今できるのは、全体の温度と湿度が変えられることと、ごく小さなスペースの時間を進ませられることだ。
(これは、なんだかすごい?もしかして、発酵させられるってこと? ……やったあ!)
変えたい場所まで行って、ウィンドウを開き、指定する方法らしい。あとでやってみよう。
次は、通知と電源は説明がない。なんとなく怖いので、今は放っておこうと、アーシアは、スルーすることにした。
(あ、でも、通知の方は、トラップのジャーナルがここに入ってきたことのことかな?)
プライバシーは、今は初期設定の状態で、全てブロックしているようだ。
マドカだけは、従魔のせいか入れていたのは、セキュリティがほぼアーシア本人と捉えたのか、マドカには悪いが付属品扱いだったのだろうか。
※の印のある【個人】の項目をタップすると個人承認に、名前記入する欄と、個人認証スキャンという項目があった。
個人承認には、人数制限があり、これももしかするとレベルで増えるのかもしれない。因みに現在3、とあった。
アーシアは、ディスプレイは【田舎】にすぐにでも替えたいが、家にまだ十分な照明がないのでそのまま初期設定にしておいた。
環境設定をレベルアップしたら、もしかしたらハーブとか畑でトメテ(トマト)とかできるようになるかもしれない、アーシアは心躍るのだった。
時計を確認しに家に入ると、寮の部屋に戻って休む時間だった。マドカも帰って来ているかもしれない。
亜空間作業場から、出ると部屋は真っ暗だった。マドカの声がしない。明かりをつけて、周囲を見渡す。
広めの部屋だが、見回せばマドカの居るいないくらいは分かる。マドカが行きたがらないバスルーム、といっても洗い場しかないが、にも行ってみたが、やはりいない。
心配なので、一応神官さんに聞いてみようと『空間扉』からの『扉から扉へ』を出しノックした。まだ、人が通れないギリギリのサイズだ。
返事がないので、そうっと開ける。いないときは自由に開いていいと言われていたのだ。すると、凄い勢いでドアからなにかが怒涛のように入って来た。
「うあああん!ごしゅじん~」
後から、マドカが泣きながら入って来て、アーシアの肩めがけて抱きついて来た。
振り返ると、小さな毛玉ボールのようなものが四方に忙しく動きまわっている。
(うん、厄介ごとの予感がする……)
アーシアは、抱っこしているマドカの大きなふわふわの背中を、よしよしと撫でお尻の辺りが、ずりずりずり落ちそうになるのを抱きなおした。
マドカは、額をぐりぐりアーシアの顎あたりにこすりつけた、おかげで前がよく見えない。
でも、色とりどりの毛玉みたいなのが、3つドタバタと部屋を駆けずり回っていることが分かった。
よく見ると猫だ。推測はしていたが。
「今日は、兄弟たちも連れて来たの?」
「ち、ちがうよ!勝手について来たんだ。
元気になったから、あいつら遊びまわっていたずらするもんだから、
面倒見る神官だって困ってるんだぞう。
おいら、なるべく相手をしてやってるけど、手に負えないんだ。
……さっきだって、扉が出たらすぐに入ろうとしたし」
手を開いたり握ったりするので、爪が当たって肩が痛い、いつもは手加減できてるのに切羽詰まってるのか加減が甘い。
(痛い痛い……ちょ、マドカさんや……)
マドカは、戦闘できるキャットなのだから、痛いに決まっている。寧ろ本人は、頑張って手加減しているのだろう。
『ニャッニャー!』
『ミャミャッミャアア!!』
『……ナー』
一匹やる気のないのがいる。三匹は、よく見えないが追いかけっこをしていて、白熱してケンカになりそうになっている。
突如、黒っぽい毛玉が、立ち止まって踏ん張った姿勢になったかと思うと、身体から何かが立ち昇り、ピシピシっと、紫色の稲妻が光った。
なにやら大変なことになりました?(=^・^=)ニャン(=^△^=)ニャン(=^ω^=)b
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