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異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第三章 セドゥーナ学園・前編 学園生活と影
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57 宴会は突然に

 

 練習場を背にして、水色の長髪の男の人と、大きな身体に少し浅黒い肌の人が座った。

 そこは定位置らしく、あとは好きに座っていいよと言われた。

 紫紺の髪のチャラいお兄さんは水色の人の手前横に、あとは()けて、後ろの席から皆座った。

 そのタイミングで猫背のひょろっとした高い頬骨で、目には小さい眼鏡をしている、癖のある黒髪の白衣の男が入って来た。

 腰には大きな袋を(くく)りつけていて奇妙な姿だった。


「ああ、間に合ったようだな。我輩(わがはい)が来なければ、始まらないからね」


「いや、そんなことないよー」


 紫紺髪(しこんがみ)のお兄さんが合いの手のように軽く返した。


「酒の用意はいいのかね?」


「わーい、待ってました。アレッサンドロせん・せい~」


 そう言って、アレッサンドロ先生は、空いている紫紺の髪のお兄さんの前に座った。


「そういえば、新顔(しんがお)じゃないか。我輩への紹介はまだか?」


 と、顎をくいっと突き上げた。サムくんが慌てて、


「ああ、この人は、オレのお姉ちゃんみたいな人で、

オレの母さんの弟子で、アーシア・デイスって言うんだ」


 サムくんが、ちょっと(あらた)まって言った。アーシアは立ち上がって、ぺこりと頭を下げた。


「アーシア・デイスです。錬金科(れんきんか)4年に編入しました。

 よ…よろ、ろしくおねがいしまゅす」


(あ…()んだ…)「……この子は、従魔(じゅうま)のマドカです」


 小さなテーブルを出してもらって、クッションを引いて座っていたマドカが、元気よくにゃーんと言った。


「そう、かしこまらなくても構わんよ。

 我輩は、アレッサンドロ・ヴィスコンティ、錬金科だ。貴様の先達(せんだち)にあたるな」


「こっちの先生は、応用の准教授だよー」とチャラ兄さん。


「なんだ貴様(きさま)ら、まだ自己紹介もしておらんのか?」


 お兄さんを無視しながら、アレッサンドロ先生は言う。見た目ほど、奇抜な人ではないのかもしれない。

 我輩なんて言うのは、ハ〇ーポッ〇ーのス○○プ先生しか記憶にないが、なるほど見た目も少し似ている。もっと痩せてはいるけど。



「そうだね、私はステファン・デルメールという。1級水魔導師だ。会えて光栄だよ、アーシア・デイス」


 コンロ愛用者の水色の髪の人は柔和でハンサムな人だった。物腰も少し優雅な感じだ。


水鏡(みかがみ)の貴公子って言うんだよー。

 そっちの大きいのは、鉄壁(てっぺき)のスクィード」とチャラ兄さん。


(スクードって、盾っていう意味かな?すごい、それっぽい。貴公子も鉄壁の盾さんもイメージぴったり)


「ヘルマン・グラウベンだ。自分は、2級岩魔術師だ」


 照れたように言ったのは、鉄壁の盾の2つ名がある、短髪で浅黒くはっきりした顔立ちの一際(ひときわ)大きな男性だった。


「私は《絢爛華麗(けんらんかれい)の栽培家》カルラ・アイビー、1級草魔術師よ。

 今日は女の子同士よろしくね♪」


「カルラ先輩は、(ちまた)では、'魅惑(みわく)の花の魔導師’のほうが有名ですよね~」


とサムくんが横から言うと、


「自分から、言うものじゃないわ」


と艶やかに(かわ)していた。

 いや、豪華華麗も結構……とサムくんが酒を片手にごにょごにょ言っていた。


 カルラさんは、女性でもポーっとなってしまうような美しい妖艶な女性だ。スタイルもすごぶるよく、優雅に足を組んで座っている。

 その隣で小さく座っているのは、口ひげと金髪を綺麗に流してセットしてある中年の男性で、


「マルコ・ブリリアだ。細工(さいく)科の教師だよ。学科は違うが、興味があったらいつでもおいで。

 今日はわたしもここにお邪魔してるよ。

 わたしも従魔と一緒なんだ、君の猫くんと一緒に居させて貰ってもいいかな?」


 そう言って、懐から小さな生き物を出した。


「まあ…」


 ずんぐりした茶色いクワッカワラビーに似ているが、やや小さい。


(可愛い動物。でも、マドカは猫だけど、大丈夫かな?ちょっとねずみっぽいけど……)


 気にする(ふう)でもないマルコ先生を見ると、大丈夫なのかもしれない。マドカが念話を使ってきた。


(大丈夫だぞ。まかしとけ!面倒見といてやるよ!)とのことだった。


「マルムーという動物でな、とても温厚なんだ。

 ルビィって言うんだ。マドカくん、いいかな?」


 マドカは、ルビィを見て、大丈夫だよと言うようにニャンと鳴いた。

 マルコ先生が立ちあがって、ルビィを近くにやると、お互い鼻をふんふんくっつけて挨拶していた。


「うん、ブリリアント!」


 一度、2匹を撫でると満足して戻って来た。


「ほら、あんたも、自己紹介しなさいよ」


 カルラに急かすように、紫紺髪のチャラい感じのお兄さんに言った。

 お兄さんは面倒臭(めんどうくさ)そうに、一度伸びをしながら、不服そうにえーっと言った。よく見ると、態度のせいか若いと思っていたが、そこまで若くないかもしれない。

 それでも、皆の眼差しによる無言の圧力で、


「僕は、特級(とっきゅう)錬金術師のヴィクトール・ビィドメイヤーだ。ヴィクトルでいい。

 授業は持つことはほとんどないけどね。よろしく。

 発明家のアーシア・デイス、サン」


と、軽い感じで言った。


 アーシアは一瞬で、鳩が豆鉄砲(まめでっぽう)を食ったようにぽかんとした。


「び、び、びびびび…………」


「ど、どうしたの?」


 カルラが言葉とは裏腹にげらげら笑いながら聞いた。


()()()()()()()先生ですか?!ビィドメイヤーの錬金術の本の!」


 アーシアは、ちょっと食い気味に言う。


「僕は、()()のほうのビィドメイヤーね。天才のほう!

 本の方は僕の大叔母(おおおば)さんだ。やんなっちゃうな~(いま)だに、この反応ー」


「す、すみません…とても…ずっと尊敬しているので」


「ん~そうだね、僕を尊敬するのはセンスがいいよ」


「いえ、()()()・ビィドメイヤー先生をです」


「え~~~」


 当然ヤジなどが飛び交う中、宴会は和やかに続いていた。アーシアも、どうぞどうぞと勧められて、結構沢山食べてしまった。

 パイ皿を分けてもらうと、その中にはミートソース仕立てのパスタが入っている。独特なスパイスも入っているのか、物珍(ものめずら)しく美味しかった。




「やあ、もう始まってしまった?」


 ふざけて突っ伏しているヴィクトールの横に颯爽(さっそう)と緑髪の男性が座った。その男性がアーシアに気が付くと、


「あれ、君は、カカン味のポーションのお嬢さんじゃないか?!」


「あ?!カイトさん、でしたっけ。あの節はどうも……」


「いや、こちらこそ、助かったよ。カイト・ゴットフリート、風魔術師の1級なんだ」


「あれ?カイト先輩、知り合いですか?」サムくんが、驚く。


「ああ、ついこの間の任務、ほらゲアラド地区の…あれ。

 俺、へましちゃってさ。ポーションが急に必要になったんだ」


「珍しいですね、貴方が失態をおかすなんて」


と、水鏡のステファンさんが、優雅に串焼き肉を食べている。


(串焼きすら、上品に食べられるもんなんだなぁ)

と、アーシアは密かに思った。



「え~、おまえ、逃げ足は速いもんな~光風の精霊でもへますることあるんだな」


 串から肉を乱暴に歯で引き抜きながら、ヴィクトルさん。


「ああ、ちょっとね……

 そうそう、ポーションだけじゃなくて、ステーキもごちそうになったんだよ。めちゃくちゃうまかった!」


「ああ、お姉ちゃんの料理はめっちゃ美味しいんですよ!」


 サムくんが、自慢げに言うと、


「お姉ちゃんって?君のお姉さんは見たことあるけど?

 それに――お前より年下なんじゃない?」


「っ、や、オレの母さんの弟子なん、です」


 カイトさんにはちょっと丁寧なんだなと思いながら、


「あ、アーシア・デイスです」


「デイスって、あの?()()()()()()()の?」


「「「「「そうだよ!!」」」」


と、合唱のようになるので、アーシアは顔が赤くなるのを感じた。


「わあ、君、うちの生徒だったんだね」


「はい、今年度から、お世話になってます」


 恥ずかしいが、声を絞り出して返事する。


「それでは、みんな(そろ)ったところで、乾杯しましょうか?」


 美人のカルラさんが、澄んだ声で言った。


「え、でもみんなもう飲んでるじゃん!」


 カイトがみんなを見回して()ねたように言った。


「乾杯は待っていましたよ」「………」



「「「「「かんぱーい」」」」」



 なかには、すでに酔っぱらいの声も混じっていた。




先達:(せんだつ/せんだち)1.先にその道に通達して、他を導く人。先輩。2.先に立って案内する人。

ここでは、せんだちと呼んでいます。アレッサンドロの個性と思っていただけたら幸いです


お読みいただきありがとうございました

楽しい回がお届けできていているでしょうか?

また、よろしくお願いいたします

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