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異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第一章 異界の村と錬金術
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4 異変


 

 何度か行き来しているうちに、意識がはっきりしている時は、あちらに飛ばないと分かった。


 寝ている時は必ずあの鹿先輩しかせんぱいがいる場所で安全だった。意識を失う場所によって異世界の場所も決まっているのかもしれない。


 飛ぶ瞬間は、自分の存在が限りなくうすけていくように感じた。少しづつ異世界に滞在たいざいする時間が伸びているようだった。サバイバルバッグは、きちんと役に立っている。

 

場所の見当けんとうが付くと、異世界の不思議の森をうろうろし始めた。安全なところから慎重に行動の範囲を広げた。

 歩くうちに岩のように重い荷物が、不思議と少しづつ軽く感じた。それでも胸にかかえた分はふらつく程には重かったが。

 

 家庭教師のバイト中なども気が張っていて大丈夫そうだった。理科が特に苦手という生徒用に雑学的な本をしこたま持って帰宅途中にそれは起こった。気が付いたらいつもの森の中を歩いていたのだ。あまりにも自然に。





「ュウヴ!≪おい!≫」



 低くうなるような男の声だ。2,3人いそうだった。日奈子はハッとして振り返った。

 ガラの悪い男たちだった。



「ヂェイーヤ、リツゥグアンネ!≪にもーつ、ーーーせよ!≫グァラア」



(どうしよう、物取りだ!)なぜか言っている意味が分かった。調度同時通訳のように部分部分聞こえるのだ。



 日奈子は身体をねじるようにけ出した。この世界にはなさそうな履きやすい靴も履いてる。必死で、それこそ死に物狂ものぐるいで逃げた。



(冗談じゃない、わたしのほぼ全財産だ)



重心のおかしいせいか、妙に早かった。



(…このかばんだけは取られちゃだめ!!…

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)



 極限状態きょくげんじょうたいのせいか、おかしな願望を心で叫びながらーーーそして運が悪かったのか良かったのか、がけから崩れ落ちたのだった。




(ああ、わたし終わった?…でも……荷物取られなくてよかった)




 また目がめたらいつもの生活に戻っているかもしれない、うすれる意識の中、日奈子は思っていた。









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