46 死の原戦場跡②
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徒歩の移動はかなりきつかった。亜空間から出てきた後、モンスターが急に出現しだしていてアーシアは、ひどく焦った。
鳥タイプで、先ほどの狼タイプくらいの大きさがあり、頭に赤い鶏冠で下半身がやたらと大きい。緑と茶色で翼を広げたまま、気が付くとかなりの勢いで追いかけてくる。
なかなか相手は、気が付かないが一度気が付くと突進してくるので、それを止めるのに、刺股がやっと役に立った。翼が出しっぱなしのためか、大きくて小回りが利かないのでアーシアでも止めることができるのも、電撃に極めて弱いのも幸いだった。
コッコカリスという飛べない鳥タイプのモンスターらしいが、鶏肉が沢山とれた。
この太り過ぎた鶏みたいなモンスターは、酷く好戦的で、目が合うと砂埃を舞い上げて突進してきた。キエーェェエエエっと、凄い声を立てるのでどこにいるかも、丸分かりだ。
先ほど、山ほど温泉卵にしたのは、こいつらの卵か…
マドカはなぜか、面白がって飛びながら、挑発して応戦していた。
その後、コッコカリスが何度か襲ってきたが、安定して倒して、進むことができた。
余裕が出来たので、モンスター発見機も試したが、モンスターは大きくハッキリ、魔石は小さく弱い光が画面に表示された。尚、画面に集中してコッコカリスに襲われ、あわやとなったので、マドカにひどく怒られた。
かなり南に歩いて来て、足がパンパンになってしまった。幾らアルディアに来て体力が着いたといっても、まだまだ、あちらの世界から来た者としては、とても辛い。あちらの世界でも昔、江戸時代の人は、結構長く歩けてたんだよな…と思う一方、何か便利な乗り物を錬金すればよかったと、アーシアは考えていた。
マドカは戦闘以外はほとんど、定位置となったスリングの中にいた。普段、いなかったりすることもあるが、兄弟の様子を見にいってるのだろう。
なんとか、砂煙の向こうに人里が見えてきた。建物もあるが、野営用のテントが並んでいる一画もある。
(人がいるから…普通に見えるように…気をつけなくっちゃ……)
鹿之丞の言葉が、重くのしかかる。
マドカはのんきにしているが、神様よりひとさまのほうが多い、見つかったら断然不味いのだ。
集落の入り口を見つける。死の原戦場跡の狩場の入り口となっている村だ。
マドカがスリングで丁度隠れているのを確かめて、人気のないテントの開ける場所を通り抜ける。
丁度、出払っているのか野営キャンプには人がいない。
その先に酒場が一軒、店が一軒あり、あとは数件の小さな家しかないような、ビッコロ村より小規模の村だった。
なんでも、死の原戦場跡へのモンスター狩りのための村だそうで、街に行く方角には、交通用の馬車も、本数は少ないがあるそうだ。
一軒しかない店のドアを見つけ、今まで溜めていたドロップアイテムを買ってもらえないかと中に入る。
店の中は、狭いところいっぱいに鍋やらやかんやら、保存用食料やらが溢れ、色々なものが釣り下がっていた。なぜか、ガーリックが沢山吊る下がっている。
奥に行くとカウンターがあって、駅の売店を思い出させる感じであった。カウンター奥には、ポーション類や毒消しや、タバコ?などが所狭しと並んでいる。
アーシアは師匠からの支度金はあったが、馬車の路賃や相場や様子を調べるためにも、ここで買い取りをしてもらいたいと思って来たのだ。
奥に、小柄なおじさんがなにかを読みながら座っていた。
「すみません、買い取りしてもらいたいんですが、いいですか?」
おじさんは、アーシアを下から上に眺め、
「うん、冒険者かな?あんまり見かけない顔だね。どんなもの?」
アーシアは、何を出そうかと考えた。
(うーん、ここで入手できるアイテムがいいよね…骨とか、魔石とかかな?)
「えっと、出していいですか?」
そう言いながら空間収納からモンスターの骨を取り出した。
「うわぁぁ、ちょっと待って。お客さん、空間収納持ちか、しかも大きいね。こっちの来て」
しまった、いきなりドジを踏んでしまったと、アーシアは汗をかいた。
幸い空間収納はレアだが、持っている人がいるためそこまで目立たないはずだ、と思い、気を落ち着けて、おじさんについて行った。
すぐ横に長い机があって、そこを指さした。
「ここに出して。さっきの骨だけども相当になるよ。あれ2本以上あったら、うちじゃ払えないよ。ほかは?」
骨を出して、毛皮や小さめの魔石を出した。
「ああ、魔石はムリ。大きな街、ゲアラドで買ってもらいな。みんな冒険者は、魔石は貴重品扱いになるから組合を通すんだ。
うちじゃ、取引にわざわざ冒険者証の提示なんて求めないけど、よそは違うからそこのところちゃんとしなよ」
骨と皮を買ってもらった。
そしてアーシアは、真実、聞きたかったことを、極力さり気なくみえるよう聞いた。
「ええと、今日って何年の、何月でしたっけ?」
おじさんは、ちょっとびっくりして、
「おいおい、メセチナ896年だよ。今は、前ジュニ(6)月だ」
(896年なら……え、じゅ、じゅ、18年?いや19年経ってるの?)
卒倒しそうだったが、こらえて、小さな声でお礼を言って、そそくさと店を出ていった。
頭が重くて、グルグル廻る。
(……いや、本当に?!冗談じゃないよね?!
19年って!ほとんど20年じゃないのぉぉーーーー)
顔を伏せるように、こそこそと道を行く。兎に角、早く学園へ行かなくては。
慌てて急ぎ足で、駅馬車の停車場に向かう。取引した金額は思ったより多く、路銀に十分のようだった。
馬車は丁度、出発の準備をしていた。
馬車は簡素な荷馬車で、ほかに乗客もいない。
御者に声をかけ、アーシアはゲアラド行の馬車に急いで乗り込んだ。
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