39 趣味と修行①
トラップは順調のようだった。鹿之丞に聞くとモンスターの近づく反応も、消えるようになっているとのこと。上々である。
実際通知音とジャーナルが、度々流れてきていた。
恐ろしいことにアイテムドロップだけでなく、レベルと熟練度がガンガン上がる。
恐怖のシステムだ。
アーシアは広いスペースもでき、作業効率がアップしたので、採取のほうにも力をまわし、森を駆けずり回った。例のエリクサーの材料も増えてきた。
亜空間作業場での作業はややもすると時間を忘れてしまう。
マドカがお腹が空いたと呼びに来ないと、過集中のアーシアは作業に没頭してしまうのだ。
あと、時々遊んであげないと拗ねるのだ。可愛いものである。
木材、特に丸太は材料が足らなくなってしまったので、鹿之丞に相談すると、泉の対岸に連れていかれた。
ここは、アーシアはあまり立ち寄らない幻獣の住処のエリアだ。
鹿之丞によると、木が増え過ぎて、本来、泉から続いているはずの憩いの広場がなくなってしまったそうなのだ。
この泉は、もともと神殿に繋がっており、当然人間は入れず、手が入らないので、木々が伸びっぱなしになっていたと言う。
(さて、どうしたものか……)
アーシアは思いついたように、
「ちょっと危ないかもしれないから、作業中近づかないでくださいね」
と言うと、手から空間切断チェーンソーを出して、次々に切っていく。
驚きの切れ味だ。
しかし少々面倒くさいが、周りの空間も切れるので『解除』・リストアして直していかなくてはならなかった。
空間切断の刃の部分の形は、こういうために?と腕のチェーンソーを見てアーシアは思っていた。
危なくないところで見ていた鹿パイセンも目を見開いていた。
とりあえず、適当な範囲を伐採したら、根の部分の処理をする、どうやるかというと、『採取』だ。
根に当てて採取スキルを使うとそのまま空間収納に入る。形が気になるので、一応『成型』と詠唱するのだ。因みに、伐採した後の木も収納する前に採取スキルを使ってから仕舞う。必要なところだけが残って使いやすくなる上に、気のせいが量も増える。
どんどんやっていたら、鹿之丞が来て、
『待って待って。切り株は、少し残しておいてくれないかな。休んだりする場所に使えるんだよ』
ということなので、いい感じに景色のいいところに切り株は残しておいた。切れ味ばっちりなので、断面も滑らかだ。
午後の作業は伐採よりは危なくないので、マドカをスリングに入れてやることにする。
スリングの中は気持ちよく、ゆらゆら揺れて、マドカのお気に入りで、仕事中はいつも乗りたがる。
かわいい。
亜空間には基本生き物は入れられないようだ。例外で、マドカはアーシアの従魔なので出入り自由だ。
だから、お腹が空くと中に入ってきて呼びに来れるのだ。よいアラーム代わりになっている。
昨日のうちに、材料作りと床組みができた。結構大きくなりそうだ。
庭に該当するスペースも確保して、家らしい感じをイメージした。
丸太をあぜくらにあわせ構成で組み上げていく。女性でも錬金ならうまいことできるようだ。
ラウンドノッチという最もシンプルな組み方にする。セッティングで外装と同時に内部の敷居も作っていく。
内側は難しいので図面を置いて読み込ませ『組立』で一気にやってしまった。
部屋だけではなく勝手に金属板などの在庫を使い、屋根までいつの間にかできてしまっていた。
イベントリを見るといろいろな材料がごそっと抜けていた。
(自動でできるんだ……)とアーシアは驚いた。
『どうしたんだぁ?アーシア』
眠そうな声でスリングからマドカが顔を出すと、
『うわああ、家ができてる!!』
と言って、ぴょんと跳び上がる。
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