閑話 カタリナ・オーツ
※短いです
あのこが、アーシアがここに運び込まれたのは、秋の気持ちの良い日だった。
平和なビッコロ村がが、ちょっとした騒ぎになっていた。
バベット先生が、教材で子供たちに使う木の実を拾いに、村はずれの森に遠出をしていると、
人が倒れているのを見つけたのだ。
先生は、お年は取っているけど、責任感が強いから、
慌てて、村に助けを求めに行った。
崖から落ちたらしい。
あたしの家で治療することになって、運び込まれた。
男のひとみたいなズボンに、外に出るには軽すぎる奇妙な服を着ていた。
奇妙なことに外傷はないが、酷く身体を打ち付けていた。
ニーが、心配して随分看病をしてたみたいだ。
数日経って、動けるようになってから、会話をしてみたら、
名前以外分からないと言う。
途方に暮れた、ひどく落ち込んだ様子で、あまりすまなそうにするんで、
こんな、若い身空で苦しかろうと、気の毒になってしまう。
背はすらっとして、折れそうなほど細く、
細く少し癖のある白銀の髪と、ピンクがかった目が大きくて目立つ、
全部の色素が薄い、はかなそうな子だった。この辺りで見ない容姿だ。
ただ、ひどい隈があってかなり疲れて見える。
お人形みたいと、ニーは喜んだ。
本当に人形遊びのつもりなのか、髪を梳いたり服を着せたりしている
迷惑なんじゃないかと思っていると、心配しないでも
気が合うみたいで、仲良くしてくれて助かっている。
父親が亡くなってから、落ち込み気味だったから、ニーがあんなに笑っているのは久しぶりだった。
錬金術に興味があると言われたときは、驚いた。
この子は、いままでスキルも知らずどうやって生きていたんだろうね……
時々、こちらが驚くようなことを言ったりしたりするけれど、
よく、すまなそうに、申し訳なさそうに、所在ないような様子をする。
裕福な家庭出身にしか見えない容姿と所作、なのに、したことのないような手伝いを進んでする。
ずいぶんさみしい生活を送ってきたみたいだ。
錬金術を学びだしたら、人が変わったようになった。
見た目に反して、食に対する熱意も凄くて、すごい食いしん坊だった。
ここに来た時より次第に身体に肉がついて、健康的になっていってほっとした。
それでも、こちらの平均的な体系よりも細いけれど…
気が付くと、信じられないほど大量のアイテムを作っているし、上達も早い。
どこにこんなにエネルギーがあるんだろう?
あんなにスキルの上手い子ははじめてだ。
なんだか、ふしぎな呪文で見事な魔法陣も出す。
呪文には引け目でもあるのか、不安そうにあたしを見るけど、そんなの別にいいじゃないか!
天才だ!!あたしは、師匠に当たるビィドメイヤー先生の本を渡した。
形見のアレも、あの子が相応しい。
きっと、使いこなしてくれるだろう。
入学前のあたしが出した宿題にも役立つはずだ。
ははは、普通はできない宿題だけど、あの子はやるだろうね。
外に一人で出るようになって、しばらくたって、げっそり青ざめて帰ってきた日があった。
心配して様子を見ていたが、つぎの日にはなんだか頼もしいような感じになっていてホッとした。
覚悟が決まったような……眼をしていた。
ちょちょい村の人たちの困りごとに、錬金製品を作っていて、
見習いだからからとプレゼントしていくと、あとからその相手が、
あたしのところに来て
「こんなにいいもの、ただでもらうのは心苦しいから、心ばかりに」と代金を置いていく。
あたしの毎月卸す回復薬や錬金道具も、あの子が手伝ってくれるようになった。
案の定、大量に作って、アイテムの質も安定している。
町長の奥さんに言って、アーシアの分は別の街に短期扱いで、卸してもらうことにした。
アーシアのつくった分の代金は、長老のところでアーシア名義で貯めてある。
いつか、名をとどろかすような、錬金術師になるだろう。
たのしみだ。
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