28 はじめての訪問客は猫
『異世界人!、おまえ、異世界人だろう。
さあ、縁を結ぼうぜ!名前をつけてよ!!』
ぎょっとして、アーシアは目を剝むいた。猫ははっとして、
『……やぁ、助けてくれて、ありがとう。まず、お礼を言っておくよ、けど……』
『異世界人なんだろう、髪の毛の色は聞いてたのと違うけど。おいらの言葉が分かるんだろう!』
しばらく悩んで、「なんで分かったの?」とアーシアは、猫に尋ねた。
『そりゃあ、わかるさ』というと、悠々と自信満々な様子で、猫の割に大きなその手を舐めた。
白い猫をまじまじと見ると、長毛で腕も尻尾も太く、頭の上や背中に黒っぽい毛が混じって、色は、丁度あちらのチンチラのシルバー、という猫に、よく似てみえた。割と有名な種類の猫だ。
しかし、目の前の猫はもっと大きくて、毛がぶわっと飛び出た様に生えた耳が、やや離れて付いていて、お腹はここから見てもタプタプしている。
むしろ、マヌルネコに似ている。
もっと、毛を多くしてふさふささせた感じだ。顔は大きく、目は胡桃のような形で、グレーのようなグリーンのような色をして、瞳孔の周りとその周辺に金茶がちらっと混ざっている。鼻は褐色で、肉球はどうだろう…
(あれ、こんなに太った猫だったかな……)
じっと見ていると猫は、一度片耳をぴくぴくさせて、ふさふさの尻尾しっぽを床を叩くように二、三度振った。
「猫ちゃん?」アーシアが促すと、
『猫じゃないよ。おいら、神獣しんじゅうさ!神獣の《風の飛び猫》っていうんだ』
「飛び猫?なら、猫じゃないの?」
『猫型の、神獣!!おいら、神殿から来たんだ。
異世界からの、来訪者がこの世界になじめるようにする係。
おいらたち神獣は、神様からつけられたパートナーなんだ。
いわゆるアルディア案内人さ』
『アルディアは、周期的に異世界人が召喚される。
だれか、のときもあるけど、多くは世界そのものの必要に応じて招かれるんだ。
神様は、誰をって召喚する相手を具体的に指名したりできないけど、アルディアに来てもいい、何かの能力に秀でた、あちらの世界と馴染まない魂が、自然と選ばれるんだ』
「世界の必要って?」
『うん、わかり易いところで言うと、暴走状態の魔王とかかな。
あと、❝世界の摂理❞に反した存在が現れた時。
うまく言えないけど、アルディアの魔力総量が、増えるだけならいいんだけど、その魔力の持ち主がアルディアに反すると、大変なことになるからね。
世界がほかの世界からの力を借りたいときに、世界と世界の間が曖昧になって、来訪者が現れる。
そういう仕組みなんだ。
それで、来訪者は能力が、アルディアの民より断トツに多い傾向にあるから、お願いして討伐してもらうんだよ』
「もしかして……勇者ってこと?」
『うん。大概、来訪者は勇者になってくれるね。
でも、突然こちらに連れてこられる訳だろう、いろいろ不便なこともあるだろうって、神様がそれぞれの来訪者にプレゼントを贈るんだ。特別なスキルだったり、ぼくら従魔、みたいに。
そして、一体の神獣は一人の来訪者と縁を結び、その異世界人をずっと助ける。
従魔契約っていうんだけど、便利だしお得だよ。
すぐにアルディア全土の言葉や文字がすぐ分かるようになるしね』
(!やっぱり、そうなんだ。特典みたいなものね。文字もか…)
「勇者には絶対ならなきゃいけないわけじゃないのね?」
『うん、そうだよ。戦闘向きじゃない人もいるしね。無理強いしないよ』
『もともとアルディアに選ばれる来訪者は魔力が高いんだけど、こっちに来て急に魔力暴走したりもする人もいるからさ、魔力を共有して従魔が最初のうちはコントロールするの。
従魔は主人の魔力を使うこともできるし悪いことはなにもない。
保護の役割で神獣や聖獣と契約を交わしたほうがいいんだ。
従魔によって魔力も安定して、レベルも高いほうに合うから、こっちに来てすぐにレベル上げしなくても、高い状態で過ごせるんだよ』
魔力暴走などと恐ろしい話を聞いて、ぞっとする。確かにこちらでも、サムくんみたいに魔力が大きいのは何年もコントロールを学ぶみたいだから、召喚されてすぐ大きな魔力を持つって、危なかったんだな…
「ところでその従魔契約って、どうやるの?」
『従魔になる相手に、魔力を通しながら名づけをするのさ。だから、おいらたち名前がないんだよ』
「…難しい?それに、目立つんじゃないの?」
勇者なんて目立つものになりたくないアーシアは、続けて聞いた。
『そうでもないよ。従魔自体は珍しいものじゃないんだ。冒険者とかでも持っている人がいる。
ただ従魔契約は、ふつうの動物とかモンスターとかかな。
神獣とかの特別な相手じゃない……おいら…見た目は、ふつうの猫だしさ…』
『…ちょうど連絡を貰もらった時、勇者たちの従魔お見合いが済んじゃってて、おいらしか空いてなかったんだ。会う日にちが、聞いてたのと違っててさ…』
「……それって、嫌がらせじゃないの?」話の情報量が多すぎて、うっかり、声に出てしまった。
『うーん、……おいら、ほかの神獣と違うからさ。
ほかのみんなは、大きくて、かっこよくって、攻撃能力も高いやつばっかりなんだ……
ごめんよ、おいらしかいなくて』
アーシアはすぐに、被りを振った。
『神獣には、親がいないんだ。
神殿のステアの庭で神聖力が集まって、生まれるものなんだ。
でも、おいら生まれすぐに、うっかり神殿の傍に住んでいるおかあちゃん猫に、自分の子供と間違えられて連れて行かれちゃったんだ。ほかの兄弟たちと一緒に育ったんだよ。
けどさ、おかあちゃんはやさしいし、よく面倒見てくれた。兄弟とも遊べて楽しかったな』
「よいお母さんだったんだね」
『うん。でも、神殿のみんなは、おいらのことおかしいって、はずれ神獣って言ってるんだ』
少ししんみりして、猫が言った。空気を切り替えようと、アーシアが口を開いた。
「ところで、どうしてわたしがここにいるってわかったの?」
『聖なる森の聖獣から、連絡が来たんだよ。
最初に聞いてた髪の色とは違うけど、おいらたちはすぐ、異世界人のことはわかるんだぞ』
「その聖獣って、鹿みたいな?」
『そうだよ!むかし、勇者のパートナーもしてたことがあるんだ。
今は引退して、森の護り手になってるんだよ。
聖域にたまに来訪者が紛れ込むことがあるから、地方の護り手は見つけたらすぐに、教会に連絡する義務があるんだ』
(し、鹿パイセン……やっぱり、神々しかったもんなぁ……)
ウンウンと、頷いていると、
『おいら、ヴァスキス神聖国から3週間以上かけてきたここに来たんだ~風に飛ばされて大変だったよ。おいら、飛び猫だからさ、空を飛んでここまで来たんだけど、風が強くって変なほうに吹くんだよーー
それでさぁ雪まで……』
飛び猫の苦労話が止まらなくなった。
(ん? 髪の色? 鹿パイセンと会ったのは、
かれこれ……一年以上前なんですけど)
いや、3週間かかるにしても、アーシアがいるのを聞いた段階でビッコロ村に向かっていたら、もう少し早く来れたんじゃないか、とアーシアは頭の中で突っ込んでいた。
やっとやっと、(=^・ω・^=)ちゃんが出せました!
神獣の飛び猫ちゃんです よろしくお願いします
お読みいただきありがとうございました!




