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異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第一章 異界の村と錬金術
29/191

28 はじめての訪問客は猫

 


『異世界人!、おまえ、異世界人だろう。


 さあ、(えにし)を結ぼうぜ!名前をつけてよ!!』



 ぎょっとして、アーシアは目を剝むいた。猫ははっとして、



『……やぁ、助けてくれて、ありがとう。まず、お礼を言っておくよ、けど……』



『異世界人なんだろう、髪の毛の色は聞いてたのと違うけど。おいらの言葉が分かるんだろう!』




 しばらく悩んで、「なんで分かったの?」とアーシアは、猫に尋ねた。




『そりゃあ、わかるさ』というと、悠々と自信満々な様子で、猫の割に大きなその手を舐めた。



 白い猫をまじまじと見ると、長毛で腕も尻尾も太く、頭の上や背中に黒っぽい毛が混じって、色は、丁度あちらのチンチラのシルバー、という猫に、よく似てみえた。割と有名な種類の猫だ。


 しかし、目の前の猫はもっと大きくて、毛がぶわっと飛び出た様に生えた耳が、やや離れて付いていて、お腹はここから見てもタプタプしている。



 むしろ、マヌルネコに似ている。



 もっと、毛を多くしてふさふささせた感じだ。顔は大きく、目は胡桃のような形で、グレーのようなグリーンのような色をして、瞳孔の周りとその周辺に金茶がちらっと混ざっている。鼻は褐色で、肉球はどうだろう…



(あれ、こんなに太った猫だったかな……)



 じっと見ていると猫は、一度片耳をぴくぴくさせて、ふさふさの尻尾しっぽを床を叩くように二、三度振った。



「猫ちゃん?」アーシアが促すと、



『猫じゃないよ。おいら、神獣しんじゅうさ!神獣の《風の()(ねこ)》っていうんだ』



「飛び猫?なら、猫じゃないの?」



『猫型の、神獣!!おいら、神殿から来たんだ。


 異世界からの、来訪者(らいほうしゃ)がこの世界になじめるようにする(かかり)




おいらたち神獣は、神様からつけられたパートナーなんだ。


いわゆるアルディア案内人さ』



『アルディアは、周期的に異世界人が召喚される。


 だれか、のときもあるけど、多くは世界そのものの必要に応じて招かれるんだ。


 神様は、誰をって召喚する相手を具体的に指名したりできないけど、アルディアに来てもいい、何かの能力に秀でた、あちらの世界と馴染まない魂が、自然と選ばれるんだ』



()()()()()って?」



『うん、わかり易いところで言うと、暴走状態の魔王とかかな。

あと、❝()()()()()❞に反した存在が現れた時。


 うまく言えないけど、アルディアの魔力総量が、増えるだけならいいんだけど、その魔力の持ち主がアルディアに反すると、大変なことになるからね。



 世界がほかの世界からの力を借りたいときに、世界と世界の間が曖昧になって、()()()が現れる。


 そういう仕組みなんだ。



 それで、来訪者らいほうしゃは能力が、アルディアの民より断トツに多い傾向にあるから、お願いして討伐してもらうんだよ』



「もしかして……勇者ゆうしゃってこと?」



『うん。大概、来訪者は勇者になってくれるね。


 でも、突然こちらに連れてこられる訳だろう、いろいろ不便なこともあるだろうって、神様がそれぞれの来訪者にプレゼントを贈るんだ。特別なスキルだったり、ぼくら従魔、みたいに。


 そして、一体の神獣は一人の来訪者と縁を結び、その異世界人をずっと助ける。


 従魔契約っていうんだけど、便利だしお得だよ。

すぐにアルディア全土の言葉や文字がすぐ分かるようになるしね』



(!やっぱり、そうなんだ。特典みたいなものね。文字もか…)



「勇者には絶対ならなきゃいけないわけじゃないのね?」



『うん、そうだよ。戦闘向きじゃない人もいるしね。無理強いしないよ』



『もともとアルディアに選ばれる来訪者は魔力が高いんだけど、こっちに来て急に魔力暴走したりもする人もいるからさ、魔力を共有して従魔が最初のうちはコントロールするの。

 従魔は主人の魔力を使うこともできるし悪いことはなにもない。

保護の役割で神獣や聖獣と契約を交わしたほうがいいんだ。


 従魔によって魔力も安定して、レベルも高いほうに合うから、こっちに来てすぐにレベル上げしなくても、高い状態で過ごせるんだよ』



 魔力暴走などと恐ろしい話を聞いて、ぞっとする。確かにこちらでも、サムくんみたいに魔力が大きいのは何年もコントロールを学ぶみたいだから、召喚されてすぐ大きな魔力を持つって、危なかったんだな…


「ところでその従魔契約って、どうやるの?」


『従魔になる相手に、魔力を通しながら名づけをするのさ。だから、おいらたち名前がないんだよ』


「…難しい?それに、目立つんじゃないの?」


 勇者なんて目立つものになりたくないアーシアは、続けて聞いた。


『そうでもないよ。従魔自体は珍しいものじゃないんだ。冒険者とかでも持っている人がいる。

 ただ従魔契約は、ふつうの動物とかモンスターとかかな。

神獣とかの特別な相手じゃない……おいら…見た目は、ふつうの猫だしさ…』


『…ちょうど連絡を貰もらった時、勇者たちの従魔じゅうまお見合いが済んじゃってて、おいらしか空いてなかったんだ。会う日にちが、聞いてたのと違っててさ…』



「……それって、嫌がらせじゃないの?」話の情報量が多すぎて、うっかり、声に出てしまった。



『うーん、……おいら、ほかの神獣と違うからさ。

ほかのみんなは、大きくて、かっこよくって、攻撃能力も高いやつばっかりなんだ……

ごめんよ、おいらしかいなくて』



 アーシアはすぐに、かぶりを振った。




『神獣には、親がいないんだ。

神殿のステアの庭で神聖力が集まって、生まれるものなんだ。


 でも、おいら生まれすぐに、うっかり神殿のすみに住んでいるおかあちゃん猫に、自分の子供と間違えられて連れて行かれちゃったんだ。ほかの兄弟たちと一緒に育ったんだよ。


 けどさ、おかあちゃんはやさしいし、よく面倒見てくれた。兄弟とも遊べて楽しかったな』



「よいお母さんだったんだね」



『うん。でも、神殿のみんなは、おいらのことおかしいって、()()()()()って言ってるんだ』


 少ししんみりして、猫が言った。空気を切り替えようと、アーシアが口を開いた。



「ところで、どうしてわたしがここにいるってわかったの?」



『聖なる森の聖獣から、連絡が来たんだよ。

 最初に聞いてた髪の色とは違うけど、おいらたちはすぐ、異世界人のことはわかるんだぞ』



「その聖獣って、鹿みたいな?」



『そうだよ!むかし、勇者のパートナーもしてたことがあるんだ。


 今は引退して、森のまもり手になってるんだよ。

聖域にたまに来訪者が紛れ込むことがあるから、地方のまもり手は見つけたらすぐに、教会に連絡する義務があるんだ』



(し、鹿パイセン……やっぱり、神々しかったもんなぁ……)



 ウンウンと、頷いていると、



『おいら、ヴァスキス神聖国から3週間以上かけてきたここに来たんだ~風に飛ばされて大変だったよ。おいら、飛び猫だからさ、空を飛んでここまで来たんだけど、風が強くって変なほうに吹くんだよーー

 それでさぁ雪まで……』



 飛び猫の苦労話が止まらなくなった。



(ん? 髪の色? 鹿パイセンと会ったのは、

かれこれ……一年以上前なんですけど)



 いや、3週間かかるにしても、アーシアがいるのを聞いた段階でビッコロ村に向かっていたら、もう少し早く来れたんじゃないか、とアーシアは頭の中で突っ込んでいた。







やっとやっと、(=^・ω・^=)ちゃんが出せました!


神獣の飛び猫ちゃんです よろしくお願いします

お読みいただきありがとうございました!

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