27 冬の初めの迷い猫
本日、連続更新しています ご注意ください
「猫ちゃん、鳴いたね!生きてる!」
「おねえちゃん!!ニャアニャアって、言ったよ!」
(いや、はっきり文句言ってたよ。たすけるでしょ、ふつう!、とかって……二人には、分からないのかな?)
「猫ちゃん、かわいい声だね!でも、この猫ちゃん、珍しい鳴き方だね」
「ねこちゃん!」
「変な鳴き方?」
「ううん、珍しい鳴き方。にゃぁぁにああにぐんにゃああんあ…みたいなかんじ」
優しいニーちゃんが、一生懸命、鳴きまねをしてくれた。
(でも、それは変な鳴き方って言うんじゃないかな…)
アーシアは思ったが、腕の猫がブルリと震えてはっと気を取り直した。
(…とりあえず、人…猫命救助だ)
慌てて空間収納から、タオル(物を拭く布のこと)をすっと出すと、雪で濡れてびちょびちょの、毛先に泥がこびりついている汚れた猫を抱き上げる。タオルで包んで、圧を強くかけないようにそっと拭く。
猫の体は氷のように冷たい。
タオルを開いて、恐る恐る確認すると、哀れな様子で弱く息をしている。
また包んで、子供たちと急いで家に入った。
椅子に座って、猫を抱え、新しいタオルを何枚も使って、こびりついた泥を取りながら拭いた。猫の背中や首、大きめの腕を擦って伸ばした。四方から子供たちの手も出てきて、ポンポンと優しく擦る。弱っているが、大きな怪我はないようだった。
水分と泥を『抽出』してもいいが、自分以外の生きてる生き物にするのは気が引ける。
毛の汚れと水分があらかた取れたところで、ニーちゃんが、手で風と火の魔法をうまく調節して、暖かい風を出して、猫を優しく吹きかけて温めてくれた。猫の白っぽい毛が、ふわふあと立ち上がり乾いていく。が、同時に抜け毛も舞い上がってアーシアの顔にかかった。(随分毛の多い猫だなぁ)
手持ち無沙汰になったサムくんは、猫をのぞき込んだり、不安な様子でアーシアの周りをうろうろした。
次第に抱えていた猫は、暖かくなり、呼吸も楽になってきた。猫の毛もやや湿っているぐらいになり、白っぽい色になった。
汚れているけど白猫だ。
ホッとして、また新しくタオルを取り換え様とすると、もう薄めのものしか残ってなかった。
少し考えて、その薄いタオルで猫を包んで、
「ちょっとの間、抱っこしてくれる?」
と、ニーちゃんに抱えてもらうと、空間収納から以前作って残っていた余りの【デイズの安心ベビースリング】を取り出し、自分の首にかけ腕に通した。
「ありがとう。じゃ、この中に猫ちゃんを入れようか」
ニーちゃんは頷くと、注意深く猫をそっと中に入れた。
(よし、いい感じ。これならほかに仕事ができるし、様子も見れる)
一応心配だったので、手を下からしっかり添えた。
片手で【紫根膏】を空間収納から取り出し、すり傷に塗る。
次にHPポーションを飲ませようと思い、子供たちの手を借りて、摘まんだガーゼの先に綿小さく丸めてテルテル坊主のようにしてもらった。
(猫だから、なるべく飲みやすい味のポーションがいいよね。なにかあったかな?)と考えながら、
以前偶然できたミルク味のHPポーションを思い出した。
【HPポーション・ミルク味】を丸めたガーゼに含んで、猫の口元に持っていく。すると猫はぺろぺろと舐めた。しばらくするともこもこの裏生地に包まれて、安心したように落ち着いて、すぴすぴと寝息を立てはじめた。
思っていたより大きい猫だ。
こちらの生物は大きい傾向にあるのかしら、などとアーシアは考えていた。
「どうしかしたの?」
師匠が覗き込んできた。
「ああ、猫ちゃんを保護したのね。……うんもう、大丈夫そうね」
師匠が猫用に、浅い籐の籠を持って来てくれた。猫は、起きてどこに行くかわからないので、アーシアの部屋に連れて行って、水の小さなボウルを傍に置いて、籠の中にスリングごと、そっと寝かせてドアを閉めた。
猫を拭いて沢山でててしまったタオルを洗濯しなくちゃいけない。
この世界では、木の灰汁とモンスターの脂で作った洗濯液を使い、大きな洗濯タライでする。石鹸は実はこちらの世界にもあって、洗剤の場合沢山とれるモンスターの脂が一般的な材料だ。冒険者の討伐したモンスターから素材として引き取る。
灰汁が多いと洗浄力が強くて手や布が荒れるから脂を多く使う、そうすると他の動物の脂だけでは間に合わない。モンスターが沢山出るのは恐ろしいが、素材など世界の役に立っている。それでも、石鹸や洗濯液は高価なものだった。師匠が錬金術師だから、オーツ家は便利なほうだが、材料の関係で大概のものは大量に生産できないのだ。
洗濯を押し洗いする棒や板もあった。手洗いなんて、異世界の大変なところだ。
それでも、師匠の家には水を切る道具があって、穴をあけた金属ボウルざる?に重ねてそれより大きい金属製のボウルを合わせ、付いている取っ手でぐるぐる回して水を飛ばす。そして、外側のボウルの溜まった水を捨てる。回すまで重いが、大体の水分はこれで跳んだ。
(もう直に、洗濯機も作れそうだけど…あるのかな…?)
タオルを干してしばらくして、アーシアは自分の部屋に戻った。
扉を開けると、床の上にちょこんと手をついて、白い猫が座って、こちらを大きな目で見あげていた。
『よう!異世界の来訪者!!!契約に来たぞ!』
(=^・▽・^=)<やっと来たぞ~♪ニャン




