24 ビッコロ村の日々①
初歩のレシピをしっかり安定して作れるようになったアーシアは、本格的な調合のレッスンを師匠から受けることになった。
ポーション作りだ。また、同じ材料で中和剤も出来たりするので、一石二鳥だ。
ベースは一緒で、回復に特化したものを回復ポーションといい、調合の中和剤はそのままでも使えるが、触媒のように、特性移しに使ったりもできた。回復ポーションは、冒険者等によく使われる。
師匠から、中和剤の後に、HPポーションを教わる。
中和剤に比べて、効果を明確に出さねばならないところが難しかった。
そして、中和剤はループ生産(作ったものを素に新しいものを作ること)ができるので材料面で節約できてよいのだった。
次に、 MPポーション、両方効果が付くポーションもだ。これには、魔法陣の維持とコントロールが大変だった。
何度も何度も繰り返し練習すると、魔法陣にまた、例の図形のようなものが出てきた。
(よし!)と心の中でガッツポーズしながら、指を滑らせる。上手く光らせることができる回数も増えてきた。
一番自信のあるポーションを鑑定してみると、
『鑑定』
[HPポーション(回復薬):
(品質C)HP回復・中 (味)カカンの味/(特性)回復2]
(うん、ぼちぼちだな。カカンの味って、たしか、柑橘系だったかな?不味くなくてよかった…)
こういうアイテムはこの味の項目に不味いとかにがいとかすっぱいとか付きやすいので、これは上出来なのではないだろうか。
それ以外にも、教本を見ながら、紫根膏というムラサキネを使った火傷や湿疹によく効く軟膏を作った。ムラサキネはなかなか貴重で手に入らないので、あまり作れない。
春はよいハーブが大量に採取できる時期だ。モンスターは恐ろしかったが材料になるアイテムの採取はしたかった。ニーちゃんとも行ける安全な採取地中心にしても、いっぱい採れた。
若いハーブは質が良く特性もいろいろ持っていることが多い。キャリーローズ、元の世界のローズマリーに似ているのは、さわやかにすっきり香っている。
コモミラはやわらかい少しりんごのような優しい香りで、以前、ニーちゃんと来たこの採取地も、今、控えめな小さな花々とハーブの良い香りに溢れていた。少しとげとげして注意のいるネトルはフレッシュな香りで、若葉は『鑑定』すると特に質もよく、油を少し含んでいた。
よかったことに、ムラサキやムラサキネも無事で、その茂みは以前より大きくなっていた。
『採取』
『鑑定』
[キャリーローズ(植物):(品質A・100)記憶力・集中力向上、血行促進、リフレッシュ効果、老化抑制、抗炎症作用などの効能 消化促進や抗菌作用、抗酸化作用なども期待 育毛 アンチエイジング/「女王の化粧水」の材料として知られる/(特性)変わらぬ願い 回復2]
(女王!…特性の「変わらぬ願い」って何だろう…時々あるんだよね。キャリーローズにはみんなついてるっぽいから固有特性なのかも……)「変わらぬ願い」の箇所に試しに触れてみた。
[変わらぬ願い:気分をはっきりさせ、回復などの効果を上げる]
(!なるほど。読めるんだね、説明…
……それにしても効果モリモリ、いろいろな調合に、使えそうだなぁ)
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夏になると、学校のほうは、バベット先生からお墨付きがでて、アーシアは、無事卒業という運びとなった。
みんなとすっかり仲良くなったので、アーシアの卒業が発表されると、クラスはひと騒ぎだった。
ニムくんは目に涙をいっぱい貯めて、アーシアの手を握ってきた。他のみんなも寂しそうだったが、口々におめでとうと、お祝いの言葉を掛けてくれた。
卒業遠足にと、次の学校の日に子供たちだけでで川遊びに行くことになった。
村の川の上流に行って、みんなで川遊びや釣りをした。
釣り組のアーシアは、大きな岩々の一つの上で、釣り糸を垂れる。
風は涼しく、木々はきれいな緑色で、実に美しかった。
小さな子たちは、もう少し下流の水が浅く危なくないところで、水遊びをしていた。きゃっきゃと、にぎやかな声がする。
年上勢もぼちぼち魚が釣れてきた。すぐ上流に大きな湖があって、こちらにきれいな水が流れてくる。今釣りをしているところは、意外に深いように見える。
小さい子は、こっちに近づけてはいけない。
今日主に釣れた魚は、銀色の柳のような形の美しい斑紋のある川魚で、夏メカワという。こちらの魚は大きくて、20㎝くらいは普通にある。
「今日は、随分釣れるほうだよ!」
と小さく興奮気味に、いつもは物静かなディゴくんが言った。
水面がキラキラと光に反射してきれいだった。
が、しかし、その反射する光の奥で大きな黒っぽい影が写った。気のせいかと思って、顔を動かさないようにじっと目を凝らす。
「ねぇ、お魚一杯獲れたから、バケツを持って小さい子たちのところに戻ってくれない?そろそろお弁当にしようよ」
ガルドくんとディゴくんに言う。
「もう少し下ったところにあった、ほら、白いの木の下なんて、よさそうじゃない?」
アーシアは、気を付けて、何事もないように静かに言った。
2人は頷いて、子供たちのほうへ去っていった。ガルドくんは、少し訝し気な顔をしたが。
そして、そっと静かに、注意深く、気づかれないように……
『鑑定』
[ブレマティカ(魚類系):Lv.53: (スキル)重量プレス トルネードアタック/水属性/水中モンスター]
心臓がクっと締め付けられる。(落ち着いて、落ち着いて…)どのぐらい距離があるだろうか、きちんと魔法は当たるだろうか、子供たちに気づかれぬよう、アーシアは震えながら、手を構えた。
『集中・解体』
ぞわあと、魔力が一気に抜ける感じがして、次に魔石A、赤身肉、するどい骨、ヒレ、スモンオイル…と映像が流れてきた。
攻撃が成功したようだ。魔石の大きさからして、大きなモンスターだったのだろう。
額の汗に、涼しいさわやかな風があたった。
その後、お弁当を食べてそれぞれの家に戻った。
日々が過ぎ、アーシアも逞しくなっていきます
子供たちを描いている時はとてもたのしいです
書いているうちに、どの子もとてもかわいく感じて、ついついエピソードが増えてしまいそうになりました
お読みいただきありがとうございました




