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異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第一章 異界の村と錬金術
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20/208

19 「ビィドメイヤーの錬金術の本」

 


 ビッコロ村の冬は寒いが、充実した楽しい毎日だ。休日学校にも、もう何回か通っている。一年生?のニムくんは、人懐(ひとなつ)っこくて、あっという間に仲良くなった。

 二人(ふたり)で高低でこぼこの机をずらして()わせ、一緒に、教科書の読み合わせをしたり、ものの固有名詞や、国、町の名前なんかを覚えている。ほっぺが、まだまあるいニムくんは、とってもかわいい。


 だが、まだ幾度(いくど)も通えていないというのに、前の授業には苦労していた読み取りが、簡単にスラスラと読めるようになって…ああ、言葉の時のようだ、と。


 異世界(いせかい)チート、ボーナスみたいなのかな?


 うれしいような、寂しいような感じがする。難しい文字の意味も、急にわかるようになっている。


 まあ、楽しみな錬金術の本も早く読めるから、良いことだろう。



(ニムくんたちと、いつまで学校に通えるかなぁ~)



 異世界はさほど科学が発達していなそうに、不便そうに見えるが、魔法やいろいろな錬金製品(れんきんせいひん)があるせいか、わりと快適だ。特にオーツ家は、アーシアの師匠であるカタリナお母さんが錬金術師だから、よその家よりも便利な道具もあるらしい。


 なにしろ、お風呂、バスタブがある家は多くない。火の魔石を使ってうまいことお湯を沸かすのだが、魔石は一般に扱いが難しい。魔法なら中くらいのクラスの火魔法などないとだめだった。


 (追焚(おいた)き機能なんかある、お風呂を、錬金してみたいな…できるかな?…)



 冬場は村人は大概、近所に共同サウナがあって、みんなそこを使っている。

 ニーちゃんと、人がいない時間を見計(みはか)らって行ったが、気持ちの良いものだった。

 サムくんの作った消し炭も、ここで一部、火種として使われている。




 日が(かげ)り、部屋に帰って、一人部屋(ひとりべや)用の魔石を、暖炉(だんろ)に置く。暖炉だんろは小さくて、薪を入れる代わりに、魔石を使う。火も煙も出ないから、煙突はいらない。

 時間になると熱は下がり、またしばらく休めると使えるようになるので、冷めたら回収する。


 ぽうっと魔石が、ほのかに光って、

 少しずつ、空気が(ぬく)められていった。部屋が(あたた)まってはくるのだが、まだ寒い。


 部屋に戻る前に、丁寧に(ちゃ)ばを煮出(にだ)して作った、『ジンジャーとはちみつの入ったホット・クリームティ』を、四角いサイドテーブルに用意した。


 ごわついた厚手(あつで)のブランケットに(くる)まり、一人用の小さなソファに腰をずらせて、沈み込むように座る。大きめな鋳物(いもの)のコップで、ふうふうと立ち上る湯気(ゆげ)を吹く。


 コップはまだ熱いのでブランケットに挟んで、ズゥっと飲んだ。


 強い甘みが、山羊のミルクでまろやかに、ジンジャーが深く身体を底から(あたため)めた。



 サイドテーブルの下の棚の、3冊ある本の中から、(ひも)で縛られた皮表紙の古い本を1冊、身体を伸ばして引き出した。


 しっかりした皮の表紙が、使い込んで勝手がいいように柔らかくなって、(はし)は、(そり)り返るように(あと)が付き(ふく)らんでいる。分厚い本だ。




『ビィドメイヤーの錬金術(れんきんじゅつ)』    ビィドメイヤー著




 最初のページを見開いた。


『 (つね)鍛錬(たんれん)しなさい。基本(きほん)大事(だいじ)にしなさい。実直(じっちょく)(とり)()みなさい 』


『 錬金術れんきんじゅつは、地味(じみ)なものだと(おも)いなさい、

 (ひと)のために、(つね)()()役立(やくだ)つものがつくれるように 』


 マルゴ・ビィドメイヤー




 短いがなかなかに、威圧(いあつ)のある言葉である。ビィドメイヤー先生、厳しそうだな。そんな風に思って、次のページをめくる。つぎからレシピ集になっていて、細かくコツや注意点が書いてある。どうやらかなり読むことができるようになったようだ。



【お腹の友】


 *ホホ草、ロクテイ、ショコウ草など4 水1 油1



 季節に合わせて**植物を使うこと 


 ダミ草は割合を多くしすぎないように ――を入れると、()きがいいが、苦くなる


 この薬は、効能が緩和なほうがよく、強くしすぎないように          


 …………………



 師匠から習った順番に、調合のレシピが丁寧に書かれている。



【健康湿布】【エドナ軟膏】【蒸留水】【触媒・簡易】などなど。【健康湿布】は布に薬剤を塗布した後水分をどの程度抜くかが難しい、とか知らない情報も書かれていた。



 しばらくは薬剤だったが、インゴットの調合の次に、鉱石などから亜鉛や、スズを取り出す方法、他の金属と合わせる方法などが書かれていた。


 魔法陣を出すタイミングやキープする長さなどの、コツも書かれている。




 しかし、ぱらぱらと読み進めても、あの魔法陣に浮かぶ式のようなものの記述は何もなかった。







アーシアはまだわからない単語もあるので**を使いました


ホットの山羊ミルクは、好みが分かれるようです


お読みいただき、ありがとうございます

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