19 「ビィドメイヤーの錬金術の本」
ビッコロ村の冬は寒いが、充実した楽しい毎日だ。休日学校にも、もう何回か通っている。一年生?のニムくんは、人懐っこくて、あっという間に仲良くなった。
二人で高低でこぼこの机をずらして合わせ、一緒に、教科書の読み合わせをしたり、ものの固有名詞や、国、町の名前なんかを覚えている。ほっぺが、まだまあるいニムくんは、とってもかわいい。
だが、まだ幾度も通えていないというのに、前の授業には苦労していた読み取りが、簡単にスラスラと読めるようになって…ああ、言葉の時のようだ、と。
異世界チート、ボーナスみたいなのかな?
うれしいような、寂しいような感じがする。難しい文字の意味も、急にわかるようになっている。
まあ、楽しみな錬金術の本も早く読めるから、良いことだろう。
(ニムくんたちと、いつまで学校に通えるかなぁ~)
異世界はさほど科学が発達していなそうに、不便そうに見えるが、魔法やいろいろな錬金製品があるせいか、わりと快適だ。特にオーツ家は、アーシアの師匠であるカタリナお母さんが錬金術師だから、よその家よりも便利な道具もあるらしい。
なにしろ、お風呂、バスタブがある家は多くない。火の魔石を使ってうまいことお湯を沸かすのだが、魔石は一般に扱いが難しい。魔法なら中くらいのクラスの火魔法などないとだめだった。
(追焚き機能なんかある、お風呂を、錬金してみたいな…できるかな?…)
冬場は村人は大概、近所に共同サウナがあって、みんなそこを使っている。
ニーちゃんと、人がいない時間を見計らって行ったが、気持ちの良いものだった。
サムくんの作った消し炭も、ここで一部、火種として使われている。
日が翳り、部屋に帰って、一人部屋用の魔石を、暖炉に置く。暖炉は小さくて、薪を入れる代わりに、魔石を使う。火も煙も出ないから、煙突はいらない。
時間になると熱は下がり、またしばらく休めると使えるようになるので、冷めたら回収する。
ぽうっと魔石が、ほのかに光って、
少しずつ、空気が温められていった。部屋が暖まってはくるのだが、まだ寒い。
部屋に戻る前に、丁寧に茶ばを煮出して作った、『ジンジャーとはちみつの入ったホット・クリームティ』を、四角いサイドテーブルに用意した。
ごわついた厚手のブランケットに包まり、一人用の小さなソファに腰をずらせて、沈み込むように座る。大きめな鋳物のコップで、ふうふうと立ち上る湯気を吹く。
コップはまだ熱いのでブランケットに挟んで、ズゥっと飲んだ。
強い甘みが、山羊のミルクでまろやかに、ジンジャーが深く身体を底から温めた。
サイドテーブルの下の棚の、3冊ある本の中から、紐で縛られた皮表紙の古い本を1冊、身体を伸ばして引き出した。
しっかりした皮の表紙が、使い込んで勝手がいいように柔らかくなって、端は、反り返るように跡が付き膨らんでいる。分厚い本だ。
『ビィドメイヤーの錬金術』 ビィドメイヤー著
最初のページを見開いた。
『 常に鍛錬しなさい。基本を大事にしなさい。実直に取り組みなさい 』
『 錬金術は、地味なものだと思いなさい、
人のために、常に寄り添い役立つものがつくれるように 』
マルゴ・ビィドメイヤー
短いがなかなかに、威圧のある言葉である。ビィドメイヤー先生、厳しそうだな。そんな風に思って、次のページをめくる。つぎからレシピ集になっていて、細かくコツや注意点が書いてある。どうやらかなり読むことができるようになったようだ。
【お腹の友】
*ホホ草、ロクテイ、ショコウ草など4 水1 油1
季節に合わせて**植物を使うこと
ダミ草は割合を多くしすぎないように ――を入れると、利きがいいが、苦くなる
この薬は、効能が緩和なほうがよく、強くしすぎないように
…………………
師匠から習った順番に、調合のレシピが丁寧に書かれている。
【健康湿布】【エドナ軟膏】【蒸留水】【触媒・簡易】などなど。【健康湿布】は布に薬剤を塗布した後水分をどの程度抜くかが難しい、とか知らない情報も書かれていた。
しばらくは薬剤だったが、インゴットの調合の次に、鉱石などから亜鉛や、スズを取り出す方法、他の金属と合わせる方法などが書かれていた。
魔法陣を出すタイミングやキープする長さなどの、コツも書かれている。
しかし、ぱらぱらと読み進めても、あの魔法陣に浮かぶ式のようなものの記述は何もなかった。
アーシアはまだわからない単語もあるので**を使いました
ホットの山羊ミルクは、好みが分かれるようです
お読みいただき、ありがとうございます
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