表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第一章 異界の村と錬金術
16/190

15 冬の到来 



 気温もぐっと下がって雪もちらつくようになると、いつの間にか雪が20cmくらい積もっていた。


 雪かき大変そうだなぁ、と思っていたら、サムくんがすごく嬉しそうに、手からガーっと炎を出してあっという間に雪を溶かしていた。高火力しか出せない、コントロールできない、なんでも消し炭にしてしまうサムくん、気兼(きが)ねなく火魔法が使えるのが、かなり気持ちがいいらしい。大きな笑い声をあげている

(う~ん、ファンタジー!)


 冬はどの家も大概たいがいこもって内仕事(うちしごと)中心になる。カタリナ師匠も、やっと一息つけたみたい。


 調合の授業も本格的にやってくれるらしい。


 アーシアは部屋に保管してある、採取地から持ち帰ったりんごで作った瓶詰を、ゴトゴトと引き出した。柄の長いスプーンで中身を確かめる。

(うん、こっちはできてそう。もうひとつは…ん?りんご酢になったかな?ん、なんかシュワシュワ炭酸がよく出てる!ビネガーっていうより…)


『鑑定』


[りんご酵母液(こうぼえき)(食材):(品質C)よく膨らむ]



『鑑定』


[アップルシード(酒):(品質B)(アルコール度数)8/8度]



(あーやっぱりな。ちょっと~お酢じゃなくなっちゃったよ。やりすぎちゃった。うん、でも品質はいい感じ。えーと、ア、アルコール度数?8/8度ってマックスじゃん。ビールが確か…ええと5度?ちょ、高いじゃん。日本だったら違法だよ)



「し師匠、ちょっと見ていただけますか」



「うん、なあに?」



2つの瓶の師匠の前に出す。



「ふふふ、なにやってるかと思ったら、酵母と…こっちはりんご酒だね。いい匂いだ」


「ちょっと、パンを作ってみていいですか?」


「うんうん、もちろん。楽しみだね」



 工房の続きにある台所で、採取した麦から作った小麦粉と塩、ジェリーくん()の羊のバター、デーツの砂糖を少々を混ぜる。



「あ、今日はアーシアがお料理作ってるの?」ニーちゃんがのぞき込んでくる。


お互い目を合わせてニッと笑った。


しっかり混ぜ合わせたら、台に出してこねる。もういい匂いがしている。



「わ~いい匂い、ちょっとさわやかな甘いにおいがするね」



「りんご酵母こうぼだからね」


「りんご!大好き」


 

 形をまとめて、発酵(はっこう)させる。手を()して小さく『発酵』と唱える、

(おいしくなあれ、おいしくなあれ)


すると手が光って、魔法が発動してしまった。(ああっ!)みるみる1次発酵が済んでしまった。


(声に出したら、何語でも、呪文ってOKなのかな?)


 異世界人だからか師匠から聞いた通りにならないこともあったが、

なんだかすんなり、きれいな魔法陣もでた。コツが掴めたかもしれない。



 今度は、ニーちゃんと一緒にパン生地を押してガス抜きする。そしてまた魔法で2次発酵させ、まあるく生地を分けて、形を整えていく。



「なんか、はやいね。あ、やった、今日は白パンだね」


 目を丸めてサムくんもやってくる。「オレが火を入れようか」


「ダメダメ!やめて!」

 


 三人で笑いながらパンを焼きだした。しばらくして、いい匂いが部屋に充満した。


 パンを焼いている間に、外の燻製室(くんせい)に行って肉を切り分け取ってくる。木のいい匂いがついた肉を、やや薄めに切り分け軽くロースト。じゅわ~っと音を立てて、燻製肉だが、かなりあぶらが出ていい匂いがしてくる。色のついた小玉ねぎを分厚い輪切りにして、肉の味が残ったフライパンで焼いて焦げ目をつけ、(ふた)をして軽く蒸した。レモンの香りがするレタスとハーブのサラダも作った。

 そして、こっそり元の世界の《(うま)み調味料》を入れた卵のスープを用意した。


(向こうのものは限りがあるけど、こんな時だもの使っていいよね)


そうこうしていると、パンが焼けた。ふんわりまあるいやわらかいパン。


 もちろん、ハードな大麦パンのようなこちらの世界のパンも慣れてきて、特に、ホロホロとしっとりした食感のライ麦を使った黒パンは、やや酸味と甘みのある癖のある味わいで、アーシアの大好物(だいこうぶつ)になっているけれど、たまにはやわらかいパンもいいよね。



「なんか、いい匂いしてるわね~おいしそう~」



 玉ねぎを添えたローストした燻製肉とグリーンサラダ、タマゴのスープを食卓に並べた。

 もちろん、木製の大きな分厚いまな板の上には、さわやかな甘さが特徴の羊バターとりんごの酵母の合わさったなんとも軽やかな香ばしい丸いパンが並んだ。



「おいしそう~ほんとに食べちゃっていいの?」


「ふふ、もちろん」



「じゃぁ、」「「「いっただきま~す!!」」」



 焼きたてのパンが気になるのか、そろって手を伸ばした。



「やわらかい、それにあまぁい」


「おいしいね」



 あっという間にパンを平らげたサムくんは、2個目を取ると、そっと()いてお肉を挟みだした。

 口を大きく開けてかぶりつく。


「むぅ、んまい!」




今度は、ニーちゃんが、


「んんん~、このタマゴのスープ、おいしいねぇ」


 明るく笑いながら、みんなで食事を平らげていく。


 厚みのあるグラス2つに、アップルシードを注ぐ。シュワシュワといい音がする。



「アップルジュース!飲みたい」



「大人用だから、ダぁメ。いい味になっているね、()()()アップルジュースも」



 師匠は嬉しそうににやにや笑って、りんご酒を飲んだ。かなり飲める(くち)らしい。

 お酒はあまり強くないアーシアだが、炭酸とさわやかな甘さの自分で作ったこのりんご酒は、特別美味しく感じられた。




(あ、なんか、うれしいな。しあわせだな)





 楽しい時間はゆっくりと過ぎていった。










日本酒のアルコール度数は、15%前後 清酒はアルコール度数22度未満

ビールは約5%、ワインは約13~15%

ウイスキーやブランデーは約40%前後 アップルシードは2~7% くらいだそうです



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ