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異世界放浪~クラフトワークス~  作者: 紫野玲音
第一章 異界の村と錬金術
11/193

10 ニーちゃんと行くはじめての採取



「先生!錬金術れんきんじゅつ、教えてもらえませんか!」



 朝の食事をテーブルに運ぶのを子供たちと一緒に手伝いながら、アーシアは口早に言った。


 今日の朝食は、丸い硬めの大麦のパンと昨日のデーツと野菜と細かく切った干し肉をしっかり煮込んだ赤っぽいスープだった。しょっからい干し肉から調度よくうまみがでて、素朴でとても美味しい、この地方の伝統的なスープだそうだ。

 日常的に食べる大麦のパンは日持ちがよく、一度沢山作ってストックしておく。そのためやや硬いが、スープと一緒に食べると良い風味ふうみで美味しく食べられた。


 作り置きの食料は家族みなで行う。ドライフード作りはニーちゃんが得意だ。大麦パンの火入ひいれはサムくんがやりたがるが、火の加減かげんができず真っ黒にしてしまうらしい。 


 オーツ先生は週に二日ほど家事中心の日を作るらしいが、今は時期的に家事に手が回りにくいそうだ。その代わり、かわいい働き者のニーちゃんがくるくる動いていた。


 今日の一般定期な朝食。この世界では一日二食の人が多いそうだが、小さな子供のいるオーツ家では頑張っていつも三食にしているそうだ。森の恵みもあって、季節折々に果物もってこれる。ここビッコロ村の住人は、比較的食べ物に困らない、だから森に感謝して生きているのだ。



「先生!錬金術、教えてもらえませんか!」



「うーん、そうだねぇ、今日はちょっと立て込んでるから、ニーと森に植物採取に行ってきてもらおうかね。調合の材料になるものが多いから、ニーに教えてもらうといいよ」



 子供たちと食卓を片付けて終わると、オーツ先生はマチ部分がしっかりした中身のふくれた巾着きんちゃくを、二つ持ってきた。ニーちゃんも棚から大きな空の籠を二つ用意していた。



「はい、お弁当。


 ニーなら、どの植物をったらいいか知ってるし、子供でも行ける安全な採取場所だから、

しっかり教わってきてね」




 用意してもらった外出用の服(先生のお古らしい)と、靴は合わなかったので自分のズックで支度を終わらせた。このズックはアルディアにもありそうな感じなのでよかった。でも違いがあるかもしれない、悪目立ちしないといいけど。


 そしてニーちゃんと一緒に、思いのほかずっしりしたお弁当の入った袋に水筒、大きな籠をもって外へ出た。



「あ」



「なあに?アーシアおねえちゃん」



「荷物、持ってあげようか?」



「ん?結構重いよ?」



「大丈夫。ちょっと待って」



 アーシアは、手品のように荷物をつぎつぎに亜空間ストレージに放り込んだ。慣れたものだ。


 不思議そうに見ていたニーちゃんは、笑いながら楽しそうに、



「わぁ!収納魔法もってるんだ!いいねぇ。すっごいべんり、採取もらっくらくだね。特に帰りがらっくらく!!」


 らっくらく!と歌うように、ニーちゃんと森の小道へと向かって言った。



 道々、ニーちゃんに()っていい草を教わりながらからかごに入れていく。

 程なく小道を抜けると、何となく見知った空気を感じる。『聖なる森』の方向なのかもしれない。


 少し見通しの良い場所に出てきた。



「さぁて、ここでは薬草を採るよ。むこうの木はりんごだからお料理に使えるよ。今日は重くならないからいっぱいもって帰れてうれしいな」



 普段はお母さんのお仕事用の薬草を中心に採らねばならず、大好きな果物は少ししか持ち帰れなかったそうだ。小さめのりんごであるが沢山は子供には重いのだろう。ニーちゃんはとてもうれしそうだった。




 アーシアは決まった植物を採取しながら、鑑定のスキルも練習した。

摘まむたびに時間がかかるが、ニーちゃんは気にしない、終始、ご機嫌だ。




『採取』

『鑑定』


[ ダミ草(植物):(品質E)解毒]



『採取』

『鑑定』


[ ホホ草(植物):(品質E)整腸作用、便秘改善 ]



 鑑定スキルは、便利だった。採取していいものかどうかわかるから。もし鑑定スキルがなかったらいいもの駄目なもの、あと特に似ているものなど覚えるのが莫大で大変だっただろう。



『採取』

『鑑定』


[ ホホ草(植物):(品質D)整腸作用、便秘改善 咳止め、痰切り、利尿作用 ]



『採取』

『鑑定』


[ ダミ草(植物):(品質E)解毒、抗菌、消炎  /(備考)日陰のどこにでも生えている草 ]



 同じ薬草でもスキルを使うほど鑑定内容も増えた。一心不乱に採取して鑑定していく。




「お姉ちゃーん、お昼たべようー」



(そういえばお腹、空いてるかも)



 木陰に二人で座って、巾着きんちゃくを開く。

 オーツ先生に作ってもらったお弁当はパンを軽くあぶって燻製くんせい肉と葉っぱたっぷり挟んだサンドイッチだった。胡椒こしょうと塩味とレモンのような香りの菜っ葉のさわやかさがよい塩梅あんばいだった。水筒のハーブティーにも合う。


「ふふふ」ニーちゃんは手も平サイズのりんごを渡してきた。



「デザートね!このくらいの色ならそのまま食べても、美味しいよ」



 アディアでは、りんごは調理に使うほうが多いそうだ。『聖なる森』のせいかこの辺りのりんごは生でも美味しいらしい。そのまま、カリッと噛り付く。甘さは日本に比べて弱いが、瑞々《みずみずしい》しい果汁が多かった。(うん、りんごも少し採取しておこう、帰って先生に蓋つきの瓶と角砂糖を貰って…)



 時間になり、二人でまた採取を再開する。

 なかなか没頭ぼっとうできる作業でアーシアは楽しかった。かなりスムーズになり、鑑定も内容が増えてきた。



 すると、茎も葉も紫色の変わった植物を見つけた。群れてこんもりしげっている。



()()



[ムラサキ(植物):(**)ーーー]




「ニーちゃん、ちょっと見てほしいんだけど」



「うん。どれどれ…あ!ムラサキだね、やったあ。けっこういっぱいあるね。

ムラサキは根っ子ごと採取するんよ。傷めないように、そおっとね。

あと、採りすぎちゃだめだからね。

また来た時に採れるようにね!ムラサキはこの採取地ではレア度が高いほうなんだ」



 そう言って、籠の底から細いスコップを取り出して(ニーちゃんの籠は空じゃなかったのね)地面にそっと屈んだ。



「ほら、こうやってね……やってみて!」



 見よう見真似みまねに、注意深く紫色の根を掘り起こす。




『鑑定』


[ムラサキネ(植物):(レア度☆)(品質C)解熱や解毒、抗炎症薬 ]



「おおーすごい!!」



「葉っぱも染料とかに使えるんだよ」




 午後は早めに採取地を後にした。ニーちゃんがお母さんと約束している時間もあり帰り道でも採取する予定だからだ。アーシアのために、色々違う種類を見せてくれるそうだ。二人はゆっくり家へと帰っていった。





 充実(じゅうじつ)したフィールドワークだった。














 こちらの世界のムラサキは植物自体紫色です。群生して生える傾向がありますが便利な薬草なので乱獲されがちです。ニーちゃん、えらい。

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