屋敷にて
食事を終えた俺たちは絶賛美羽の住む家に向かっている最中である。
「く、苦しい…」
「あんなに食べるからですよ。でもよくあんなに食べれましたね…」
「そりゃな。食べれるときに食べるのが”下”の常識だ」
安定した食料など得られない。食べれるときに食べ、蓄える。
「あ、そういえば…連理さんって呼ぶのも余所余所しいので連理か連理君と呼びます」
「そういえばたまに連理くんって呼んでたもんな。あれは距離感を図ってたのか?」
「き、気付いてたんですか!?」
そりゃな。さん付けも君付けも変わらんと思うが…。
「連理で良いぜ。お前から貰った名前だ」
「そ、それじゃあ…連理で」
もじもじしながら気恥ずかしそうに俺の名前を呼ぶ。見る奴から見ればご褒美なのかも知れない。
「ああ。俺の方からもよろしくな美羽ちゃん」
「ちゃんは止めて下さい!」
「じゃあ美羽で」
元よりちゃんを付けて呼ぶ意思など無かったけどな。
「これからよろしくお願いしますね…連理」
「これからお願いしますね…美羽」
声も美羽に寄せて言ってみる。
「気持ち悪いので真似しないで下さいっ!!!」
ちょっと揶揄ったら顔を真っ赤にして怒るのがなんとも面白い奴である。
「人選を間違えたかなぁ…」
なにやらぶつぶつ言っているが、俺の気にした事では無いな。
「でっけぇ建物だなぁあれ」
揶揄っていると奥に大きな建物が見える。ここら一体では一際目立つ大きさだな。
「あれが私の家ですね。どうですか?大きいでしょ」
これが美羽の家らしい。なんとも分不相応だな。
「胸は小せぇけどな…痛ぇ」
脛をかなり強い威力で蹴られる。
「その割に家はでけぇんだな」
蹴られながら言う。今の俺の脛は見るも無残な状態だろう。
「立派ですよね。自分が建てた訳では無いので自慢は出来ないですけど」
「俺の脛蹴りながら言うな」
根に持っているのかずっと脛を蹴り続けている。脛は悪くないのにな、可哀そうに。
「器もt….これ以上は止めておこう」
何やら美羽の目がガチになって来たので止めておく。
補足しておくと今の美羽の胸は発展途上…いや発展するかどうか怪しいか。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
入り口と思われる所に使用人が複数人おり、美羽に向かい深々とお辞儀をする。
「ああ、苦しゅうないぞ」
「何故あなたが言うのですか…ただいま」
メイド達から訝しむ様な目で見られているが、気にしたら負けだろう。
「今日から俺の護衛を務める美羽だ。みんなもよろしくしてやってくれ」
「だからそれは私のセリフです!!全くもう…」
「お、お嬢様こちらのお方は…?些かユニークな方ですが…」
「ええ...。でも、私が選んだので腕は確かな筈…多分」
何故不安がる。
「裁縫、料理、掃除は任せてくれ」
「それって護衛に必要ありませんよね!?」
「うるさい奴だな。俺に何を求めているんだ」
「護衛です!!!料理も掃除も連理がやる事ではありません!!」
「お、お嬢様本当に大丈夫でしょうか…?」
「分からなくなってきました…って何やってるんですか!?」
そんな会話なんて気にせずメイドの着ている服を触っていると美羽から怒号が飛んでくる。
「本で読んだメイド服と少し違うと思ってな」
なるほどな...。このスペースは武器を入れる為の隙間か。この女は武器は入れていない様だが。
「せ、セクハラですっ!今すぐ止めてください!」
残念だ。まだ裏側が観れていないと言うのに…。
しかし仕方が無い。メイドから離れる。
「ぜぇぜぇ…本当に疲れます」
立っているだけなのに疲れるなんて変な奴だな。
「連理さんで良いのでしょうか?ご案内いたします」
「あ、連理の部屋は私の隣にします」
「なんの権限があってお前の隣になるんだ」
「私の権限です…。必要な時に直ぐに連れていけるようにですよ」
俺の意思など関係らしい。
「お嬢様!男性は男性寮の規則が…!」
「彼は私の護衛よ。非常時にそばに居ないと意味が無いでしょ」
「しかし他のメイド達がなんて言うか…」
「彼は女性に手は出さないわ。私が保証する…そうですよね?」
美羽の後ろに不動明王でも立ってるのかってくらいの圧が出ている。
「あ、ああ勿論だ」
圧に屈服してしまったぜ。
「そ、それでは此方へ付いてきてください」
メイドに促され、屋敷の方に招かれる。
メイド服って良いよね...
私は家事も自炊も苦手なんでメイドさんが欲しい物です