再会
「あの医者…まだやってんのか…流石に手当てしないと面倒臭いぞ」
傷口が化膿することは避けたい。
「暗いな。無理もねぇ。あんな事があった後だ」
「うん?あれ、お・と・こ・ま・え!どうしたの?急患・お姉さんが手当てしてあげ……て何その傷!?」
「あ、あぁ、崖で遊んでただけだ」
ハイテンションだなおい。まあいい。廃院してる訳では無かったらしい。
「嘘ね。腐っても医者よ?…でも深くは聞かない」
「別に喋りたくない訳でもない。言うまでもないってだけだ」
「君は…優しいから。でも君の優しさは…君に優しくないの。でも…その危うさが…君の魅力…なんとも皮肉よね。美羽ちゃんが羨ましい」
「あいつは俺の全てだ。空だった俺を…満たしてくれる。そんな……女だ」
「あ~妬いちゃう。でも…そんな貴女を満たすことが出来るのは…美羽ちゃんだけなのよね」
「今は治療してくれ。金は無いけどな」
「そんなの要らないわ。貴方に頼られるだけで私は満足」
「……良い女だ」
あいつ等には無い大人の女としての余裕が垣間見える。魅力にも様々だな。
「こっちに来て。じっくりと触診してあげる」
ちょっと嫌な予感がしたが、気のせいだろう。
。
「あの女…とんでもねぇ」
俺の血を舐めながら蕩けた様な顔をしやがった。怖いわ!
「お帰りさないませ。って連理さん…また無茶しましたね!?」
「あん?まぁ気にすんな。それより美羽は?…って聞くまでもねぇな」
「お食事はどうされますか?」
「俺が作る。お前も手伝え」
俺がしたい事をする。知らないまま終わるのもなんとも虚しい話だ。
「卵焼き…いやだし巻きだったか、それを作りたい」
「…分かりました。そう言う事でしたら…協力は惜しみません」
「助かるぜ」
。
「結構難しいんだな。なんでそんな綺麗に巻ける?……なるほど油の量か」
「違いますよ。単に連理さんがへたっぴなだけです」
「こいつ…尻揉むぞ」
「揉みたければどうぞ」
ぐぬぬ…こいつ、やりよる。
「ったく。コツ教えろ。ぜってーお前より上手く巻いてやる」
そこからは徹夜で卵を撒く事になるとは思ってもみなかった連理であった。
。
「た、卵の逆襲が…ッ!!………夢か」
卵の逆襲ってなんだよ…。だが、徹夜の甲斐ありメイドに認めさせる程の卵焼きを作ることが出来た。
「連理さん起きて下さい。もう昼過ぎですよ」
「起きてる。お前もタマゴの逆襲で目覚めた性質か?」
「た、卵の逆襲…?それより今日は出かけるのでは?」
そう言えば…もうそんな時間か。
「すぐ出る。悪いが着替えだけ持ってきてくれ」
「かしこまり」
畏まり...?まあ良いか。変に丁寧な言葉遣いされるのも変な話だ。
そんな事はどうでも良い…今日何をするか…。それは…映画館に行く…ただそれだけだ。
”上”に来てから特にそう言った娯楽を費やす事を一人でしたことは無かった。死ぬ前に一度は映画館で映画を見たいと思っていたんだ。
「見る奴は…向こうで適当に決めればいいか」
見る映画は何でも良い。必要なのは経験だ。
さて、映画館は結構遠い。着替えたら直ぐに出るとしよう。
。
。
「愛してるよセニョリータ!」
映画館、暗い室内に等間隔の席。ポップコーンのチープな匂いが充満する。
誰一人と私語は喋らない、映画を見るだけに特化した施設。
バリボリ、バリボリ
「なんでお前が居んだよ」
「なんでって、偶然?」
先日いざこざがあったララだ。映画館に到着するなり、こいつが手を振ってやがった。
「あの別れ方はもう会わないレベルの別れ方だろ?お前恥ずかしくない訳、世界を壊したらまた会おうとか…」
「う、うるさい!偶然なモノはしょうがないでしょ!?」
それはそうなのだが…どうも納得がいかない。
「それになんだよこの映画。セニョリータってピザの名前か?」
「どっかの国の言葉…?多分恋人とかって意味じゃない?話の繋がり的に…」
そんな適当な…。まあ良いか。
そんな訳で隣で穀物をバリバリと食しているララを横目に映画を楽しんだのだった。
。
「うぅ…セニョリータ…ッ!!」
「いつまで言ってんだコイツ…」
そんな訳で映画を観終わったが、ララが相当感情移入したのか、永遠に適当な事を口走っている。
「だって…あんな悲しい事って…無いよ」
映画は最終的にはハッピーエンドとも、バッドエンドとも取れる終わり方で、個人的には勘当する程でも無かったが、こいつには相当刺さったらしい。
途中からポップコーンの事を忘れて画面に吸い付いていたくらいだ。
「じゃ、俺は帰るわ」
「え~連れないな~」
「アホか。俺は映画を見る為だけにここに来たんだ」
「そっか…じゃあ、本当のお別れだね」
「あぁ、次会う時は…世界が崩壊した後だ」
そんなこんなでララも理解したのか、行動を共にすることは無かった。
就活オワタ!!やったね~これから半年くらい無敵期間に突入しますた。働きながらバシバシと小説を書いて行こうと思います!目指すは来年の公募に小説を送る事!




