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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
三章
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自身の想い

「なぁ…お前は世界が壊れても困らないか?」


「にゃ~。ゴロゴロ」


「そうか」



「お前は…………」


「ホーホケキョ!」


「そ、そうか」



「………」


「世界はァ!!!虚偽に満ちているゥ!!!」


「そ、そうか」



「思ったよりも世界ってのは適当なのかも知れねぇな」


「そう?そうかも!」


「…うん?お前は…」


人通りの多い道。道端に腰を掛けていたところ女に声を掛けられた。


「私?私はララ。お兄さんは?」


「俺か?俺は黒猫にゃーごろんだ」


「絶対嘘じゃん!?」


「あん?お前…俺に名前を付けてくれた母に向かって言えるのか?」


「そ、それは…」


「ったく。で、ガガはなんで俺に話しかけた?」


「ララ!!それじゃーれでぃに成っちゃうでしょ」


「……レディね」


レディと言うには少し貧相過ぎる胸だな。


「……どこ見て言ってんのよ」


「す、すまん」


「で、黒猫…にゃーごさん?」


「違う、鶯谷ホケキョだ」


「さっきと名前違うじゃん!!!」


「気分だ気分」


「全く…どういう神経してるの…」


「お前の胸は貧相だが…尻は悪く無いな」


柔らかさもさることながら…張りも悪くない。いや、むしろ形に秘密があるのかも知れない。


「どこ触ってんのよ!!!!!!」


「ふげっ!?」


俺の頬へと爪楊枝のような足が到達する。


「ほんと信じられない…。乙女の身体にき易く触るなんて」


「ガキの身体に興味なんざねぇよ」


「なんですって!?わ、私はもう19なんだから!!」


「あそう。じゃあな」


俺にはするべきことがある。こんな女の尻を揉んでいる場合では無いのだ。


「え?ちょ、ちょっとまってよ」


「んだよ。お前俺に惚れたのかよ」


「ち、ちちちち違う!!!」


「乳だぁ?どこに乳があるんだよ?ここか?いや、これは乳になりそこ…ぶげらっ!!」


「さいてー」


み、美羽と違って中々良い拳を持ってやがるな…。


「で、お兄さん…鶯谷さんね。はなんでこんな所に?就活にでも失敗した?」


「誰だその鶯谷ってのは。俺は連理だ。只の連理」


「やっぱ嘘だったんだ。連理…は何かあったの?」


にしても…深入りしてくる奴だな。どうするか...ここは一旦撒くか?


「似てる…な。あいつに」


「あいつって誰?もしかして…女の子!?」


「まぁな。恋人だ。今は寝たきりだけどな」


「そう…それは辛いね…」


「お前が気にすることじゃねぇよ。なに、お前だっていつかは恋人の一人や二人出来るだろ」


「そ、そう?へへ…そうかなぁ」


「キモ」


「えぇ!?酷い!」


「なぁ、お前は…世界が壊れても良いと思うか?」


「世界…?うぅん…場合によりけりかなぁ。私は壊せるなら壊すかも」


「それは何故だ」


「え?だって新しくやり直せるならやり直したいから」


「やり直せるとは限らないぞ。それこそ…世界そのものが無くなってしまう事だってあるだろう」


軽いと言うか何と言うか…呆気からんと言うから少し驚いてしまう。普通の少女が世界が壊れても良いと思うモノなのか?


「私はさ…ずっと考えて来たの。死んだ後ってどうなるのかって」


「それと世界を壊すことに関係があるのか?」


俺には関係が無いとは言えないが…深い関係があるとは思えない。


「じゃあ死んだら良いんじゃねぇか?」


「うぅん…この人とんでもない事言うなぁ…」


「実際そうだろ?ま、本気で思ってる訳では無いがな」


誰しもが考える、死んだ後の世界。だが、その答えを見つける事は出来はしない。それこそ…死んでみなきゃな。


「連理は世界を壊す…壊したい理由があるの?破滅願望って奴!?」


「ちげぇよ。俺だって死にたくはねぇし、もっと色々な体験はしてぇさ。ただ…約束したもんでな」


「そうなんだ…なんか妬けちゃう」


「なんだ、お前も一緒に世界を壊したいのか?」


「違うよっ!物騒だなぁ。そう言う関係性に憧れたの!」


関係性か。難しい話だ。


「生憎、今から俺は世界を壊すんでな、少し遅かったぜ。諦めろ」


「ぶー!ぶー!はんたーい!世界を壊すのを反対します!」


「なんだ、世界は壊れても良いんじゃ無いのか?」


先程はそう言っていたが、既に答えは変わりつつあるみたいだな。


「それとこれとは別!ロマンスの欠片一つもない!」


「ロマンスの欠片を集めれば願いでも叶うのか?ならば集めてやろう…」


「そう言うとこ!…あっ...」


今まで元気に話していた女が急に静かになる。それは異常を告げる鐘の音の如き歪さを纏っていた。


「……龍太郎さん……」


ララがぼそりと呟く。この人通りの多いなか誰が竜太郎だか龍之介だか言う奴を特定するのは難しい。


「なんだ、その龍とか言う奴は」


「私の…婚約者…」


婚約者…と言うにはなんとも思いつめた顔をしているが…こいつにも事情があるのだろう。俺はやるべきことがある…今は変な事に付き合う時間は無い。


「俺と一緒に居ると勘違いされるぜ。俺は行かせてもらう」


「待って!まって…」


……こりゃ…相当な事情が有るらしいな。しゃあねぇ…少し付き合ってやるか。


「おい。婚約者を差し置いて逢引きか?いい身分だな」


人混みの中こちらに歩み寄って来た男が言い放つ。第一印象は何と言うか…ヤクザと言うか、チンピラと言うか。とにかく柄が悪い。


「この人は…少し…道を聞いていたんです」


「あぁ?それにしては随分と仲が良さそうじゃねぇか」


婚約者の会話とは到底思えないが…ここは少し様子を見るか。


しかし…少し厄介事の予感がするな…。


「おめぇも…こいつのなんだよ?俺の女に手ェだして只で済むと思ってんのか?」


俺の女…ねぇ。婚約者にそれを言われると何も言い返せないぜ。


「俺の女か。尻の揉み心地は良かったぜ。お前が育てたのかよ?ご苦労なこった」


「なんだと!?お前…俺が誰か分かってんのか?」


コイツが誰かなんて興味すら無い。しいて言うならば竜太郎か龍之介かどっちか忘れた位だ。


「やめて!!この人は…関係ない」


ララが俺の前に立ち仲裁を試みる。が、大の大人に対して小柄過ぎる体では何も出来る事は無い。


「退けっ!!!」


「婚約者に対して随分と横暴なんだな。愛想疲れちまうぜ?」


元々愛なんぞ無かっただろうがな…この様子じゃ。だが…少し面白い…俺のやるべきことはあるが…少し位より道しても良いだろう。今すぐ出来る事も少ない事だしな。


「テメェ…ちっ…人通りが多い事に感謝しやがれ」


勝手に憤って勝手に感謝を求められたが…ここで何も無いと俺の胸に宿ったこのワクワク感が無くなってしまう。ここは一芝居打つか。


「逃げんのか?婚約者を寝取られただけでなく、寝取った相手に対して拳の一つも挙げれないか?」


「ちょ、ちょっと!?」


ララが驚いている…いや、困惑や混乱していると言った方が良いだろう。


「良いだろう…そっちがその気なら容赦しねぇ!!!」


「おっと。その前に一つ聞かせてくれよ。こいつの名前答えてくれよ。婚約者なら答えられるだろ?」


「あぁ!?……知るかよ。そんな奴の名前なんて知ったこっちゃねぇ。俺の奴隷なんだからな」


ま、そんなとこだろうと思ったぜ。ありきたりなんだよ。


「ララ…お前はどうしたい。今だけ丁度暇なんで少し付き合ってやるよ。さっきの礼とでも思ってくれ」


俺の馬鹿げた質問に答えてくれた礼だ。…大半は俺の中の非日常性に対する欲求だがな。…それを言う必要も無いので言わないが。


「わ、私は…でも…家族が…」


「二度は言わねぇ…お前自身がどう思ってるか答えろ」


コイツの家族だとか俺にはどうだって良い。俺にとっては一時の暇つぶし程度だ。


「私は…私は…嫌…こんな人と結婚するなんて…嫌っ!!!」


「だよな。俺が女でも無理なタイプだぜ」


「分かってんだろうな。俺に歯向かったらどうなるか」


考える迄も無いな。こいつの家が有力者や金持ちの類なんだろう。


「テンプレのセリフどうも。で?今のお前に何が出来るんだよ?」


「クソがッ!!殺す!!!」


敵意を持った気配が十…いや、十五か。こいつの護衛か、それに近い奴らだろう。


「おっと。そんな攻撃には当たらんが…場所を変えるとするか」


こんな人通りが多い所でやり合うのはリスクだ。この提案はあいつにとっても好都合だろう。いっそのことコイツ等の総本山に乗り込むのも悪くない。

ペルソナ5は最高でした。人生でプレイしたRPGで最高傑作だなと。因みに推しはそうじろう一択です。

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