そして幻影に
空、虚、鬱。
世界の色が無くなっていく。こんな世界になるのなら、出会わなかったら良かったとさえ思ってしまう。
「違う。それだけは違う」
俺の中の虚ろが思考を染め上げていく。
美羽が絶望病という事は、いくら考えても、どれだけ目をそらしても変わらない事実。
以前、俺は絶望病の特攻薬であるトワイライトを否定した。だが、今となっては真っ向から否定したトワイライトが喉から手が出る程に求めてしまっている。この世界には…既に無いと言うのに。
生半可に考えていた。綺麗ごとが嫌いだが、少し前の俺も綺麗ごとばかりのカスみたいな人間だったって事だ。
「連理さん……今日で三日…何も食べてません…何時でも用意するのでお申し付けください…」
「あぁ」
空っぽの返事。
そもそも、俺って何をしようとしていたんだ?あんな弱い者虐めみたいな事をして、悦に浸って…。惨めで、ダサい。美羽が絶望病になったとき、俺はただただ楽しんで、嗤って、悦んでたんだ。
そうだ。俺は弱いんだった。何も持たない…虚ろな人間。”上”に来てからそんな事を考える事も放棄して、美羽と楽しんでただけ。何も持たない俺が。あぁ…笑い話だよな。それで美羽を危険に晒して。何がしたいんだ?
違う、弱いんじゃない…空っぽなんだ。俺と言う存在自体が…。
。
何時が経ったのか。数日、はたまた数か月…そんな訳がない。美羽の意識が無くなってから飯すら食べて無いんだ。まだ数時間しか経ってないだろう。
夜風にでも当たりに行くか。
脳が思考を放棄し、現実と言う悪夢から逸らし続け、空の容器に注がれた思い出が零れないよう…失わない様に…空の容器を護り続けている。
メイドに見られるのも少し面倒だ。窓からそのまま外へと飛び降りるか…。
この窓も…随分と見慣れたものだ。初めてここに来た時は違和感ばかりだったが、今ではごく普通の光景。
美羽が呼びに来て、メイドが呼びに来る。そんな気配を感じながら、待っていた自分が居た。
気配ばかりで夜に寝る事もままならなかった時もあったが…今は何も感じない。
思い出した…昔を。一人で生き…一人で歩んできた。
空の容器から溢れるように、記憶を上書きし…浸食していく。過去に縋るように…今を否定するかのように。
「連理」
「ッ!?」
何処だ!?今の声は…美羽の、美羽の声だ。
周りを見渡すが、それらしき姿は全く見えない。気配すら感じない。
幻聴だってか?
違う…っ!!今確かに聞こえたんだ。幻聴なんかでは無い。あの声音…そして俺を呼ぶあの声は…確かに美羽だった。
クソがッ!!
。
。
。
行先も無いまま走り続けた。
「山も悪くねぇな」
適当に走り続けていると山に来た。何故か見覚えがある気もするが…気のせいだろう。
「誰にも見つからねぇ、食料にも困らねぇ、水にも困らねぇ」
暫く籠る分には最適な場所と言えるだろう。あいつ等には申し訳ねぇが…思考を整理する時間をもらうぜ。
。
「ここは…前に美羽と来た所じゃねぇか」
何の因果か、美羽と初めて出かけた場所だった。それを考えると、随分と走って来たものだ。結構な時間電車に揺られた記憶があるが…がむしゃらに走り続けた結果辿り着いたみたいだ。
登る…か。一つ気になる事もある。
。
「確か…ここだった」
あの不思議な空間。美羽と来た時は特に何も起こらなかった。ただ、何故だろうか…何かがある気がしてならない。
光。電気など通っていない筈だと言うのに、電気が付いている。いや、そう見えている。周囲の事を照らしていない光源。それを光源と言うべきか、いや…幻光と言うべきか。
その光が照らす小屋。そこに誘われるように、足が勝手に動き始める。
「嘘だろ…美羽……」
就活を学生がするのは悪しき文化とさえ言える。就職が決まればガンガン投稿したいなぁ(願望)
あ、サマポケ面白かったです。生粋の鍵っ子なので非常に楽しめました。また積みゲーが増える...。




