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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
三章
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在りし日

これは…記憶の断片。


在りし日の私…いいえ、美羽の記憶。


「連理さん…待って下さい」


「んだよ美羽。何時まで敬語使ってんだ、もうお前は俺と結ばれたんだぜ?」


「でも…敬語で生きてきましたので…それに…私はこの喋り方が一番心地いいですから」


「もう良いけどよ。それと、俺達の住む家は決めたぜ…山奥の空き家だけどな」


でも…それでもこの人と暮らせるのなら…それでいい。全てを捨て去ってでも…この人と結ばれたのだから。


どんな所だって連理とならば暮らせて行ける。


「なら直ぐにでも行きましょう。ふふっ…連理さんと二人…」


「あぁ、行こうか。俺達が誰にも邪魔されずに…暮らせる所に」



そこからは幸せな生活が続いた。山奥でひっそりと暮らす。…食べ物も、飲み水も、全ては調達する必要もあった。でも、連理さんが魚も、肉も、取ってきてくれて、飽きない日々を過ごせた。


「この滝にはこのリモニウムの花を流すことで…願いが叶う見たいです」


「へぇ…確かに神々しさを感じるな。美羽と離れ離れになりませんようにっと」


「れ、連理さん…」


直接的な愛に頬が熱くなる。


私も何か願おう…。でもなぜか…直ぐに頭に浮かんでこない。


暫く悩んでいると、彼が私に向かい言う。


「何を願ったんだ?無かったら俺が美羽の分も願ってやるぜ」


「う、ううん。今決めました。連理さんを…絶対に一人にはさせない…」


「それって願いなのか?決意みたいなものだと思うが」


「こ、細かい事は良いんです!」


確かに、もっと他の願いの方が良かったかな?幸せに暮らせます様にとか…。


「帰ろうか。俺たちの家に」


「はいっ」


こんな幸せな日々…ずっと続けば…良いなぁ。



だが、そんな日々も…終わりはやってくる。鍵の奪い合いが始まった。両親から告げられた鍵の存在。そして、その役割。鍵は…あの人たちには渡ってはならない。それが、世界を終わらせる鐘だから。


「美羽…お前だけでも…逃げろ」


それが彼の最後の言葉。


目の前で力なく言う。彼の力は強大だった…でも相手の力も…また強大。そして…敗北した。だが、鍵が相手に渡ることは無かった。いつの間にか鍵は無くなり、そして…鍵を持たない私は、価値が無いとばかりに…無慈悲にも始末された。


「私は記憶…そして過去でもあり...未来」


そして…記憶として…この世界を彷徨う…亡霊となり果てた。幾億と…私、そして彼の行く末を見た。いいえ、過去でも未来でもない…虚構の記憶と言っても…過言では無いのかも知れない。


だってこの世界が虚構なのだから。その虚構で産まれた記憶何て…虚構に過ぎない。たとえ…そこに真実の愛があったとしても…それは虚偽の愛。虚構で産まれた愛は虚構でしかなく、ただの虚無である。


だが…それが分かっていても…私は彼を愛している。幾星霜の時が経っても、それが虚構と知っても…。偽りの愛しかなくとも…それが私を私で価値づける…たった一つの”本当”。

lol ばっかやってました。プラチナに上がったので一旦lol離れます

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