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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
三章
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食べ歩き

さてと、そんなこんなで美羽と共に的場とか言う男を探すことになったのだが…これがまた、面倒くさくてな。


美羽と出会った時に美羽をストーカーしていた坊ちゃんがなんと的場だったって訳だ。”下”の安全な地区に放置したためあれ以降どうしているかなんて全く知らないが…。


「あ…そ、そこはダメっ…」


「んだよ。ここが良いんだろ?」


「ちょっ!?あ、ダメぇ!」


「これでチェックメイトだな」


「なんでチェスが強いのよ…意外」


ふん...俺は天才だからな。こういったボードゲームの一つや二つ…敵ではない。


「もうすぐ着きそうね」


って訳で的場の家に向かう為、電車に乗っている訳だが…例の如く個室である。


その個室でチェスとか言う謎のボードゲームをしていたのだが…美羽が弱すぎた。


「放置した手前怒られそうだが、どうすんだ?」


「連理が護ってくれるから」


「…?え、それだけ?」


「うん」


何だコイツ。確かに護ってはやるが…喧嘩しに行くわけではない。鍵とか言う美羽の指輪を取り戻しに行くだけだ。


「怖いか?」


「怖くない」


「もしかしてワクワクしてんじゃ無いだろうな」


「そんな、まさかストーカー男をまたボコボコに出来るだなんて思ってません」


本音漏れてますよ。多分美羽の中で交渉は無いんだろうな。勝手に乗り込んで勝手に指輪も持って行く。ただそれだけに過ぎないのかも知れない。だからさっきからやたら暴力的だったのか。


「落ち着け。胸揉むぞ」


「別に良いけど」


「良いんかい!?」


「冗談」


ふむ...なかなかやるようになったでは無いか。この俺を弄ぶとはな。


「次は…終点大東…大東」


もうすぐか。


「ねぇ、私がもし男に捕まったらどうする?」


「殺すか死にたくなる位痛めつけて殺す」


「んふっ!ムフフ…」


気持ち悪い笑い方しやがって。


「ま、安心しろ。俺は誰にも負けはしない。絶対にな…」


「知ってる。だって…連理だもん!」



「連理ー!これ、これ美味しいわ!」


「お、おう…」


何故食べ巡り…?まあ腹減ったし良いんだが。何と言うか緊張感に欠けるな。もしかしたら美羽はとんでもなく肝が据わっているのかも知れない。親に会うのにびくびくしてたお嬢様だとは思えないな。


「この焦がした醤油がなんとも堪らないの!」


「そ、そうか…そんな食べて大丈夫か?太るぞ」


「はぁっ!?こういう所で食べないでいつ食べるの!」


「屋敷で食う料理も高級料理だろ…」


屋敷で提供される料理は基本的に高級食材を用いたシェフが作る料理だ。勿論味噌汁みたいにオーダー可能だが、オーダーする必要も無いくらいに絶品ではある。


「はぁ...わかってないね…連理。こういう屋台で食べる料理は特別なの」


「おっさんの汗とか入っててもか?」


「気持ち悪い事言わないでよ!!」


だってなぁ…事実だろ?実際屋台は衛生的に問題があると聞く。まあ、正直そんなこと気にしてたら生きてけないけどな。バカバカしい。


「まあ気持ちは分かるぜ。俺も初めて”下”の集落を見つけた時はテンション上がったしな」


「一緒にしないでよ…」


失礼な奴め。ふん...なかなか美味しい球形の食べ物だな。少々味が濃いが、それが良い。それに中に入ったコリっとした何か…ふむ…興味深いな。


「これはたこ焼きって言うの。大昔から大人気の食べ物だったみたい」


なるほどな。過去人気だったものか。


「この辺りの屋台は大昔の食べ物をメインに出しているみたい」


そもそも過去の食べ物が現代風にアレンジされていくだけで…本質は変わらないな。例えばコメなんかは何世紀も姿を変えてないだろう。只品種改良やらで現代人の口に合うようにされている。ただそれだけの変化。


「ま、今はこの時を愉しむか。その日を摘め《カルぺ・ディ・エム》って奴」


そんな屋台を回った俺と美羽であったが、互いに食べ過ぎてしまい、暫くホテルから動けなくなったのは言うまでも無いだろう。

ファンタジー設定よりヒューマンドラマ設定の方が良さそうだったので変えました!魔法とか無いですしね。科学!哲学!

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