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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
三章
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「なんか良く分からん夢を見た感覚だ」


夢の内容は全く覚えていないけどな。まあ、どうせ碌な夢でも無いだろう。思い出す必要もねぇな。


「連理…今日は…面会の日…覚えてる?」


あぁ、そう言えば…美羽の両親と面会が有るんだったな。美羽はこの不定期な面会でしか…両親と会えないみたいだ。だから今日が大事な日だと…言っていた。


「あぁ…何、俺と言う完璧超人が付いているんだ。お前の親も安心するだろう」


「何馬鹿な事言ってるの!もう…そんなんじゃ無いんだから」


「俺はこんなにお前を愛しているんだがな。お前はそうでもないみたいだ」


少し落ち込んだ表情をする。ま、全く落ち込んでも居ないんだが、揶揄う事が俺の生きがいみたいなものだ…止めてくれるな。


「そ、それは…私も…あ、愛してる...けどさ」


「ぷっ…ぶはは!!」


「演技だったの!?こんのー!!!」


これが俺たちの日常。揶揄い揶揄われ、そして深く愛を紡いで行く。それが今の俺達だ。


俺にとって心地良い…そんな日常。


だが…どこか空虚…。虚しい風が…俺の胸を支配する。この愛は本物だ。なのに…なんだ?この虚しさは…。


「どうしたの連理?早く行きましょう」


「あぁ…そうだな」


美羽さえいれば…それで良いか。



「世界は…廻っている。この許されざる世界に…裁きを!!」


「なんだあれ?キチ〇イか?」


「ちょっと連理!?何てことを言うの!?」


いや、そうとしか言えないだろ?なんだ、もっと気狂いとか別の言葉で表せば良かったのか?


にしても…やっぱどこにもこう言った奴は居るんだろうな。


「お前達も…何れ知ることになる!!!世界の醜さ…そして…傲慢さをォオ!!」


「へいへい。まぁお前よりは美しいんじゃないか?」


「連理…刺激しないの」


「おっと…つい、いつもの癖で」


世界は廻っているね…。強ち間違いでも無いのかも知れない。この世界の違和感…あのおっさん達。そして…絶望病。世界が無限に繰り返していると仮定するならば…不思議と矛盾が生じない。


だが…繰り返しているとして、俺がそれを止めれるとは思えないな。


「なぁ...美羽。俺に何か…使命があったとして、俺がここに居ても良いと思うか?」


「何急に…。でも…良いと思う。私がそれを望んでいるんだもん。連理は私の物。私だけの…従者」


「誰がお前だけの物だ。烏滸がましい奴め」


「ふふん。事実だもの」


「尻揉むぞ」


まぁ既に揉んでいるんだけどな。うぅん…張りがあり…その奥にある女性らしさ。実にビューティフォー。


「……なぁに触ってるのよ!!!!」


俺の頬にモミジが咲いたことは…ここだけの話だ。



「ここにお前の親が」


監獄…だと思っていたが…そんなことは無いみたいだ。普通の施設…研究施設と言われれば納得するし、学園と言われても納得できる…そんな様相。


「うん」


少し緊張したような、思いつめたような顔をして言う。


美羽の両親を騙した奴らが誰かまだ分かって無いが…やはり資本階級であることは間違いないだろう。


俺がどうこう出来る話では無いが…来る脅威から護る事は出来る。


「怖いのか」


「そうかも」


「なら、俺の手を掴め」


「うん」


俺の手に小さな手が重ねられる。緊張か、恐怖からか、美羽の手は少し汗ばんでいた。


その少し湿った掌が、俺の手を決して離さまいと…強く力が籠められる。


「連理。もし私と一緒に居られなくなったら…連理はどう思う?」


あぁん?急だな…。前に似たよう事を俺から聞いた気もするが…。


「はっ…そりゃお前を無理やりにでも横に居させるぜ?」


「ふふっ…連理ならそう言うと思った。でも…もし…もし私が死んだり…連理にとって不都合になったら…容赦なく見捨てて欲しいの」


「それは無理だな。お前が思っている以上に俺はお前に惹かれている。諦めろ」


「恥ずかしいから辞めて!もうっ...」


そんな馬鹿みたいな会話が出来るのも…もしかしたら今だけなのかも知れないな…。希望…そしてギャング…資本階級だって一枚岩じゃない。思った以上に敵がいる。その敵が…同一の可能性だってあるんだがな。





「面会時間は十五分だ。それ以上は認められない」


「分かりました。では…失礼します」


施設の管理人に告げられ美羽が答える。面会時間が短い事は気になるが…会えるだけマシなんだろう。


この先にある面会室。そこには美羽の両親が居る。俺が誰かは知らない筈だ。少し緊張する。愛した女の親だ、緊張するのも無理は無いだろう。いや、緊張と言うより…俺を認めて貰えるか分からない恐怖とでも言うべきか。


勿論認めて貰わなくても、美羽は頂いて行くがな。


「連理…どうしよう...ちょっと怖くなっちゃった…」


本来ならば…親と再開するときに怖くなるなんて事は無いだろう。これは美羽特有の悩み。親を助ける為に…今まで動こうとしていた。だが...その努力虚しく、まだ何の解決にも至っていない。


それが親の期待を裏切るかも知れないと...思い込んでいる。多分…そんなことは無いだろうけどな。


「あぁ、ならこうしよう。俺がお前を担いで面会室に入ってやる」


と言うと同時に美羽を担ぎ上げる。「きゃあっ!?」と情けない声が聞こえてくるが気にしない。


面会室のドアに向かう。先ほどまでは厳重な鍵が掛けられていた扉だ。


「ちょ、ちょっと連理!?お、降ろして!」


なんて言っている美羽を無視し、面会室の扉を勢いよく開いた。


「えっ!?み、美羽ちゃん!?」


面会室はガラスで仕切られており、母親と父親でも分けられていた。俺が入って来たのを見て何やら動揺している様だが…まあ気にしたことではない。


と言うより…確かに、美羽に似ている。


「美羽っ!?そ、その男は!?」


みうの父親が珍妙な動物を見る目で俺を見る。


「美羽の主人だ。まぁ確かに不束者の美羽ではあるが、気にするな、俺が責任もって面倒を見てやる」


取り敢えず挨拶だ。ここは気さくにジョークでも交えながらの挨拶で乗り切るか。


「み、美羽ちゃん!?ご、ご主人様ってどういう!?」


「か、勘違いしない!ママ!!パパも!」


「勘違いも何も…お前がそう言ったんだろ?」


「言ってないわよ!?ま、ママ…この無礼者は連理…私が連れて来た従者です。言動も性格も終わってるけど…その実力だけは確かだから…」


「性格も言動も完璧だろ。何俺の評価を下げる事を抜かしてんだ」


全く…これだからうら若き小娘は。


「そ、そうなの...?なら安心ね!」


蛙の子供は蛙とでも言わんばかりの親子だな。美羽ににてホンワカしている奴だ。


「こら、そんな事ばかり言って甘やかすから…こんな馬の骨に美羽を誑かされるんだぞ」


親父はまともらしい。いやまともではないか。この俺を見て馬の骨だと?何様だこの野郎。


「誰が馬の骨だ。虎の骨に訂正しろ」


「…連理!もう良いから!!」


「なんだよ美羽。さっきまで俺の手を握ってたくせによ」


「そ、それは言わない約束でしょ!?」


いや、そんな約束をした覚えはない。美羽の中で新しく変な約束が追加されていたみたいだ。


「じ、時間が…ママ、ごめん…。誰が嵌めたのか…全く分からなかった…」


「そう…。美羽ちゃん…よく頑張ったわね。美羽ちゃんは自慢の娘よ」


「ママ…でも、でも!私が何も出来なかったせいで…ママもパパも…」


自分を卑下するのは…大人になってからでいい。俺は何も言う立場じゃないから言わないが…美羽の親もそれは分かっているだろう。だから先ず美羽を褒めた。


「美羽…こっちに来てくれるかい?大事な事を言わなければならないんだ」


「え...?うん」


「連理君も…一緒に聞いてくれるかい?これは…キミも知っていた方が…いいだろうから」


「あぁ…」


何故だろう、この話は重要な、とても重要な話な気がする。美羽の親だからではない、何かこの世界に関わる重要な…そんな予感。


「この会話も聞かれてるだろうし…話半分に聞いてくれて構わない。美羽ならば…分かってくれる」


確かにな、この会話も、映像もどうせ監視されているだろう。だから真実を話す訳では無いが…強ち嘘って訳でもないと言う話か。


「先ず…巨悪はたった一人って事だね。だけど…一人で動いている訳じゃ無いんだ。ペット、あるいは、従者」


なるほどな。どれが真実か、探って行けって事か。


「そして…世界は…夢を見ているんだ。長い、長い夢」


………またこの話か。一体何なんだこの世界は…。


「そしてその眠りを覚ますカギは…美羽、君が持っているリングさ」


「え......もしかして…あの?」


「あぁ…あれは我が家に託された…終焉への扉を開く鍵…なんの鍵か、私には終ぞ分からなかったけど…多分、この世界にとって大事な…鍵なんだと思う」


それってもしかして…美羽と出会った時に…探していた?ただの家宝って訳じゃ無かったのか?指輪って言ってた気がするが…。


「美羽…ここから重要な話だよ。そのカギは…的場が欲しがっていた、多分…奪われたのだろう?美羽の眼を見れば分かるよ。だが、奴はまだその価値に気が付いていない。なら…今しか…チャンスは無いんだ」


的場…?誰だ。


「連理くん…美羽を頼む。この悪夢の連鎖を…断ち切る手伝いを…お願いします…っ」


親心でもあり…正義心でもある。娘を思いつつ…世界を正気に戻す…。辛いだろうな、捕まって自分では何も出来ないのは。


なら…俺たちが…その思いを受け継ぐしかないのかも知れない。


「その無念は俺が晴らしてやるよ。”明日”に備えて祝杯の準備でもしといてくれ」


「あり......がとう。美羽は……凄い人を連れて来たのかも…知れないな」


「パパ…?連理なんてエッチで不潔で、それに生意気な…ただの…ただの朴念仁!!」


バコッ!!!


「いった!?なんで!?」


何故か俺の右頬にストレートが飛んできた。普通ならば避ける事も出来るが、いきなり過ぎて反応すら出来なかったわ…やるな…美羽。


「連理さん…ワタシからも…美羽を、娘をよろしくお願いします…っ」


「あぁ、いつも美羽の尻を揉ませてもらってる分は働いてやる」


そんなこんなで初めて美羽の両親と会ったのだった。

ダンジョンものを書いてるのも楽しかったけど...やっぱ自分で考えて設定を練ったこっちが書いてて

楽しいなぁ。でも有名になりたいと言う醜い欲求もあるからダンジョン物も書き続けよう...。

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