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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
三章
54/74

正体

「お、お嬢さま!?れ、連理さんその傷…!?す、すぐに病院に!!」


帰るなりメイドが喚きだす。


「大丈夫だ。俺より美羽を頼む」


手に持つ美羽を任せる。今は意識が無いだけだが、すぐに目覚めるだろう。無茶をさせてしまった。


「で、ですが!その傷は!?」


「だから大丈夫だつってんだろ。俺より美羽を頼むぜ」


まだやることを残している。



「よくのこのこと戻ってきやがったな!!頭の仇ぃ!!」


「お前にそれが出来るのか?」


もう今の俺に躊躇いも何もない。だが、それ故に弱点が増えた。今までみたいには行かないかもしれない。


「く、クソがぁぁぁぁ!!!」


捨て身の特攻。勝ち目のない戦いにおいてすべきことは相手の意表を付く事だ。その点捨て身の特攻は嫌いじゃない。


「弱点なんて関係ねぇ…全て”護りきる”…それだけだ」



静寂が支配する。純然たる暴力の証、それが周辺に転がり落ちている。


意識の無い者、あるいは既に息絶えている者。様々だろう。


「もう迷わない。俺は俺だ」


いつか、美羽が言われたその言葉に救われた。


「やはりこうなりましたか。忠告はしていたんですがね」


男が虚無から姿を現す。


「キル…いや会長さんか」


「気づくのが早かったですね。然程問題ではありませんが」


生徒会長が学園に居なかった訳では無い。むしろ留学なんて嘘だった訳だ。


些細な事だ。電車の中での違和感、あの女狐の違和感。全ての元凶がこいつって訳だ。


「何がしたいんだ?ギャングが一時期壊滅しかけたのもお前の仕業だろ?」


闇バイトの後にギャングが消滅したことがあった。それも此奴の仕業だろう。むしろコイツ以外でそれが出来る奴が居るだろうか。


「だから条件付きで解放したんですけどね」


「その条件は?ギャングがそんな事護るとでも思ったのか?」


「まあ些細な事だよ。これまで通り事が進んでいるのは変わらない」


それだ。なぜそんな未来を分かったような発言が出来る?タイムスリップでもしてるって言うのか?


「お前は言った。生きている年数が違うと…。それはどういう事なんだ?若返りの薬でも使ってるのか?」


カモフラージュ。どうせこいつは口を割らない。徹底して観測する立場を貫くだろう。


「秘密ですよ。それだけは貴方に知られる訳にはいかないんだ」


笑顔なのか、嘲りなのか。だとしてもその余裕、腹が立つ。観測者を気取り、全てを知ったような口ぶり。


「ギャングに言った条件は何だ?何故ギャングを潰さない」


こいつの行動原理が分からない。フィリアの為か?


「条件はですね…銀髪の少女に手を出さない事…ですよ」


何だと?それだけだと言うのか。


何の為に?お前にとっては美羽は邪魔な存在じゃ無いのか?


「……何故だ。美羽は元々関係なかった筈だ」


「私は美羽さんとは言ってませんが?……冗談ですよ。まあ理由なんてなんだって良いだろ?」


張り付いた笑みが癪に障る。


「それに…俺もお前もやることがまだある...そうだろう?」


急激な口調の変化。素は今みたいだな。


何故従者として学園に居るのか。こいつが一体何を知っているのか。俺には何も分からない。


だが...こいつは敵だ。俺の勘がそう言っている。


「理事長も動き出したからね…私はやることが多いんだよ」


そう言って消えてしまった。まさに幽霊みたいな奴だ。虚空から現れ、視認する間もなく消え去っていく。


「あのおっさんが…?」


なんなんだ、一体何なんだよ!?俺の知らない世界で一体何が起きていると言うのだ?


あぁ...虫唾が走る。世界に、自分自身に。

短いので夜にもう一話投稿します。

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