病室の少女
「………ばか…」
連理が行ってしまった。一体あんな美人といつ知り合ったのだろう。もやもやする…。
別に好きとかそういうのじゃないけど…連理は私のナイトなのに。
「あれ...理事長?」
病院の待合室に偶に見る顔があった。
理事長はこの病院に何度か来ているのか、迷いなくある病室に向かっていった。
「連理が帰ってくるまで…結構時間あるよね」
検査にかかる詳しい時間などは知らないが、十分程度で終わる事は無いだろう。
趣味は良く無いが…ここで座っていても暇なので尾行しよう。
「確かここだったよね…?雪音…?理事長の知り合いかな?」
そういえば理事長の名前を知らない。多分学園のホームページを見れば書いてあると思うけど…見ないしなぁ。
なんて考えていると中から声が聞こえる。
「ユキ、今日の調子はどうだい?…僕はまた歳をとってしまったよ」
今日が理事長の誕生日なんだろうか?それも初耳だ。理事長の詳しい事なんて知ろうともしなかった。そもそも生徒と関りが薄いと言うのが大きいと思うけど…。
「キミはずっと変わらないね…残酷なくらい」
独り言だろう。中から会話のようなものは聞こえない。独白が続いているだけだ。
中に居る人は女性だろうけど…理事長の奥さん?それともお子さん?それを知ることは出来ないけど、理事長にも大切な人が居るのだと、認識させられた。今までいけ好かないおじさんって思ってたことが少し申し訳なる。
「誰かいるのかい?珍しいね…客人は」
バレた…。扉が閉まっているのに、よく気付けるなぁ。連理も気配に敏感だけど、修行すれば習得できるのかな?
「ご、ごめんなさい…理事長の姿見えたので…つい」
ここは素直に謝ろう。別に嘘を突き通す理由も無い。
「烏丸君か。どうだい?彼女に会ってくれないか」
理事長が言う。それは先ほど理事長が語り掛けていた女性の事だろう。もしかしたら女性では無いかも知れないが。
「…そうですね。失礼させていただきます」
「ユキも喜ぶよ」
。
中には私と同じか、少し上位の少女が寝ていた。
「こちらが雪音さん......こんにちは」
返事は帰ってこない。多分意識が無いのだと思う。理事長も話しかけるだけだったし…。
何があったんだろう。病気なのか、それとも事故の影響が。
「雪音さんは…理事長の娘さんなのでしょうか?」
意を決して聞いてみる。
失礼だが…気になって仕方が無かった。
「ははっ...そうだね、ユキはこう見えても私の幼馴染で婚約者だったんだ」
という事は…理事長と同世代!?
寝たきりの影響なのか、見た目はまだ高校生位にしか見えない。
「驚くのも無理はないよ。もう、三十年以上もこの状態だからね」
私が生きて来た時間の倍…。理事長はその間ずっと、ずっと雪音さんが目覚めるのを待っているのだろうか。
「そんな...辛く無いんですか?」
これは不遜な質問だった。
「そうだね。辛かったよ、昔は」
意外にも答えてくれた。今は辛く無いのだろうか。
「もしかして今はご結婚されてたり…?」
「してないよ。ユキ以外の女性と関わることが無かったからね」
じゃあ、その寂しさに慣れてしまったのだろうか。
それも寂しいなと少し感じてしまった。私も連理が寝たきりになったとしたらどうなるだろう…。
私はそれに耐えられるだろうか。…いいや、絶対に耐えられないだろう。
「凄い強いですね…。私は耐えられそうにありません…」
大切な人と会話もできなくなる…そんなの私は耐えられない。理事長は凄く強いと思う。
「強くないよ…。ずっと護れなかった事を後悔しているよ」
事故にでもあったのだろうか…。
それに...理事長の顔が凄く悲しそうだ。こんな理事長の顔なんて今まで見たことが無い。
「それじゃ、僕は帰るよ。今日は本当に顔を合わせに来ただけだからね」
そう言って病室から出て行ってしまう。
「えっ!?」
少女の顔が、本当に少し、少しだけだが…悲しそうな表情をしたのを見た。それは理事長が出て行ったから?そうに違いない。そうか...彼女は……。
「驚かせてごめんなさい。私は烏丸美羽って言います」
今はもう安らかに寝ているだけにしか見えないが…多分だが、聞こえているのだろうか?
「雪音さんが聞こえているのか分からないけど…目覚める事を願っています」
月並みでしか無いが…祈りを。大切な人と会話も出来ないなんて、そんな悲しい事無いじゃない。
。
「れ、連理大丈夫だった?なんかされてない!?」
検査が終わってすぐ美羽が駆けつけてくる。そりゃ、なんかはされてるだろ…。
「けつの穴に指を突っ込まれた」
「えっ!?!?そ、そんな…コロス」
絶望した顔で美羽がぶつぶつと呟く。最後の言葉は聞かなかったことにしておこう。
「検査だけどな」
「そういう事は早く言ってよ!!!全く…心配して損した」
損することは無いだろ...。一体俺をなんだと思っていやがる。
「あ、れ・ん・り・く~ん!また明日も来てね~!!」
遠くから響が叫ぶ。そういえば強制的に名前を告げられた。響と言うらしい。
「………あの泥棒猫…」
怖い怖い…。目に光が宿っていない。美羽の新たな一面を知れたのは果たして良かったのか…。
「帰んぞ。もうここに居る理由もない」
理事長の名前...気になりますよね。それはまた今度っていう事で...。
コミカルなギャグにする予定と言ってたな.....................アレは嘘だ!!




