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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
三章
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病室の少女

「………ばか…」


連理が行ってしまった。一体あんな美人といつ知り合ったのだろう。もやもやする…。


別に好きとかそういうのじゃないけど…連理は私のナイトなのに。


「あれ...理事長?」


病院の待合室に偶に見る顔があった。


理事長はこの病院に何度か来ているのか、迷いなくある病室に向かっていった。


「連理が帰ってくるまで…結構時間あるよね」


検査にかかる詳しい時間などは知らないが、十分程度で終わる事は無いだろう。


趣味は良く無いが…ここで座っていても暇なので尾行しよう。


「確かここだったよね…?雪音…?理事長の知り合いかな?」


そういえば理事長の名前を知らない。多分学園のホームページを見れば書いてあると思うけど…見ないしなぁ。


なんて考えていると中から声が聞こえる。


「ユキ、今日の調子はどうだい?…僕はまた歳をとってしまったよ」


今日が理事長の誕生日なんだろうか?それも初耳だ。理事長の詳しい事なんて知ろうともしなかった。そもそも生徒と関りが薄いと言うのが大きいと思うけど…。


「キミはずっと変わらないね…残酷なくらい」


独り言だろう。中から会話のようなものは聞こえない。独白が続いているだけだ。


中に居る人は女性だろうけど…理事長の奥さん?それともお子さん?それを知ることは出来ないけど、理事長にも大切な人が居るのだと、認識させられた。今までいけ好かないおじさんって思ってたことが少し申し訳なる。


「誰かいるのかい?珍しいね…客人は」


バレた…。扉が閉まっているのに、よく気付けるなぁ。連理も気配に敏感だけど、修行すれば習得できるのかな?


「ご、ごめんなさい…理事長の姿見えたので…つい」


ここは素直に謝ろう。別に嘘を突き通す理由も無い。


「烏丸君か。どうだい?彼女に会ってくれないか」


理事長が言う。それは先ほど理事長が語り掛けていた女性の事だろう。もしかしたら女性では無いかも知れないが。


「…そうですね。失礼させていただきます」


「ユキも喜ぶよ」


。


中には私と同じか、少し上位の少女が寝ていた。


「こちらが雪音さん......こんにちは」


返事は帰ってこない。多分意識が無いのだと思う。理事長も話しかけるだけだったし…。


何があったんだろう。病気なのか、それとも事故の影響が。


「雪音さんは…理事長の娘さんなのでしょうか?」


意を決して聞いてみる。


失礼だが…気になって仕方が無かった。


「ははっ...そうだね、ユキはこう見えても私の幼馴染で婚約者だったんだ」


という事は…理事長と同世代!?


寝たきりの影響なのか、見た目はまだ高校生位にしか見えない。


「驚くのも無理はないよ。もう、三十年以上もこの状態だからね」


私が生きて来た時間の倍…。理事長はその間ずっと、ずっと雪音さんが目覚めるのを待っているのだろうか。


「そんな...辛く無いんですか?」


これは不遜な質問だった。


「そうだね。辛かったよ、昔は」


意外にも答えてくれた。今は辛く無いのだろうか。


「もしかして今はご結婚されてたり…?」


「してないよ。ユキ以外の女性と関わることが無かったからね」


じゃあ、その寂しさに慣れてしまったのだろうか。


それも寂しいなと少し感じてしまった。私も連理が寝たきりになったとしたらどうなるだろう…。


私はそれに耐えられるだろうか。…いいや、絶対に耐えられないだろう。


「凄い強いですね…。私は耐えられそうにありません…」


大切な人と会話もできなくなる…そんなの私は耐えられない。理事長は凄く強いと思う。


「強くないよ…。ずっと護れなかった事を後悔しているよ」


事故にでもあったのだろうか…。


それに...理事長の顔が凄く悲しそうだ。こんな理事長の顔なんて今まで見たことが無い。


「それじゃ、僕は帰るよ。今日は本当に顔を合わせに来ただけだからね」


そう言って病室から出て行ってしまう。


「えっ!?」


少女の顔が、本当に少し、少しだけだが…悲しそうな表情をしたのを見た。それは理事長が出て行ったから?そうに違いない。そうか...彼女は……。


「驚かせてごめんなさい。私は烏丸美羽って言います」


今はもう安らかに寝ているだけにしか見えないが…多分だが、聞こえているのだろうか?


「雪音さんが聞こえているのか分からないけど…目覚める事を願っています」


月並みでしか無いが…祈りを。大切な人と会話も出来ないなんて、そんな悲しい事無いじゃない。


。


「れ、連理大丈夫だった?なんかされてない!?」


検査が終わってすぐ美羽が駆けつけてくる。そりゃ、なんかはされてるだろ…。


「けつの穴に指を突っ込まれた」


「えっ!?!?そ、そんな…コロス」


絶望した顔で美羽がぶつぶつと呟く。最後の言葉は聞かなかったことにしておこう。


「検査だけどな」


「そういう事は早く言ってよ!!!全く…心配して損した」


損することは無いだろ...。一体俺をなんだと思っていやがる。


「あ、れ・ん・り・く~ん!また明日も来てね~!!」


遠くから響が叫ぶ。そういえば強制的に名前を告げられた。響と言うらしい。


「………あの泥棒猫…」


怖い怖い…。目に光が宿っていない。美羽の新たな一面を知れたのは果たして良かったのか…。


「帰んぞ。もうここに居る理由もない」

理事長の名前...気になりますよね。それはまた今度っていう事で...。

コミカルなギャグにする予定と言ってたな.....................アレは嘘だ!!

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