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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
二章
28/74

28話

美羽との旅行から帰って来た。あの後は普通に宿に戻り、寝て起きて終わりだ。マジでなんもなかった。


「明日から学園か…憂鬱だぜ」


別に学園が嫌いって訳では無い。ただ、今俺の胸に引っかかるものが取れずにいる。学園なんか行ってないでこのしこりを取り除きたいってのが本音だな。


「連理、両親の事誰にも言わないでね」


「別に誰にも言わねぇよ。それに、話す奴も居ねぇからな」


学園は基本美羽と二人だ。友達だとか、恋人だとか、そんなモノ居ない。


「念の為」


ジト目で見つめられる。俺は一体どう思われてんだ。そんな口が軽い奴に見えるのだろうか。


「たく、旅行中は可愛げあったんだがな」


「あ、あのことは忘れてっ!」


顔を赤くしながら言う。あれからどんな心境の変化があったんだと言いたくなるぜ。



「おはようございます。アミューズメントパークはどうでしたか?」


登校して早々フィリアと出会う。


「はん、詰まんなかったぜ」


「なんでそんなこと言うの。凄く楽しんでたじゃない」


「た、楽しんでなんかないわ!」


全く、そんなガキみたいにはしゃいでいる訳無いだろ。


「あらあら…それは良かった。良い報酬になって良かったわ」


「会長は今日から生徒会に?」


そういえば…あの希望?だとか言う男と会ったな。


留学に行っていた…と言う話だったな。


「いえ、彼は忙しくてもうしばらく復帰は難しいですね」


「それはどうだろうな。学校行きたく無いだけなんじゃねぇの?」


「…どうでしょうね。私は彼では無いので測りかねます」


フィリアの目が一瞬険しくなる。なにやら、あいつに何かの感情を抱いていそうだな。


「会長ってミステリアスですよね。本当に何してるんだろう」


「案外俺と同じでサボりたいだけかもな」


「会長に限ってそんな事ないでしょ」



「今日もサボるか…」


授業の時間に成り、教室から抜け出す。


美羽は何か言いたげな顔をするが、自分は授業に出なければいけない為、追いかけてくることは無い。


「今日は気分転換だ」


いつも屋上でサボってる訳だが、たまにフィリアが居る。今日は一人で過ごしたい気分だ。


ただ、屋上以外のサボりスポットを知らないな。探検しつつ探すが…。


バカ広いこの学園を一度じっくり探索したいと思っていたしな。いい機会だ。


先ずは人気の少なそうな体育館裏とか良いかもしれない。



「やっぱ気配が少ねぇな」


体育館裏近くは殆ど人の気配が無い。多分感じている気配は用務員とかだろう。


「ここ良いな。誰も来なそうだ」


体育館裏にある倉庫に辿り着いた。


が、残念な事に気配がする。気配自体は一つなので恋人同士の情事って訳では無さそうだ。


「窓から覗くか」


倉庫の側面には窓ガラスがあるので、そこから中に居る奴の特徴を探るか。


用務員だったら気にせずサボろう。


「…男か。それに生徒かよ」


窓から覗いた先に居た奴の正体はこの学園の生徒だった。


「おいおい、しょっぱなからサボりかよ。親が泣くぜ?」


生徒ならば気にすることも無い。軽口を叩きながら倉庫に入る。


「うおっ!吃驚した…」


滅茶苦茶驚いていた。それはそうだ、こんな時間にこんな所にやってくる奴なんて居ねぇ。


「そのネクタイ、2年か」


そいつのネクタイは俺らとは違う形をしている。学年ごとにネクタイのデザインが異なる為、判別が付きやすい。


「そんなあんたは一年のガキかよ」


ガキねぇ...。ま、そんな事どうでも良い。


「いつもここでサボってるのか?」


単純な疑問を口にする。


「あ?説教かよ。お前生徒会の奴だろ」


生徒会…そういえばそんな機関に所属していたような気がする。


「説教?俺もサボってるのに、んな訳ねぇだろ」


男は少し虚を突かれたような顔をする。説教されると思っていたのだろう。


「学力だとか、部活動に所属しているとか、んなもん付加された価値観に過ぎねぇ」


「お、おお。俺もそう思う!」


こいつ、宗教とか詐欺に引っかかるタイプか。


そこから男の敵意が消え、普通に世間話やら、下世話な話やらが繰り広げられた。



男の名前は、近藤と言うらしい。サボっている理由も勉強の意味を見出していない…だとさ。


二年の中では割と有名人らしい。…まあ良い方の有名人って訳では無いが。


「俺なんかが、こんなお嬢様だらけの学園に入るのは間違いだったんだよ」


こいつは一般家庭の出自らしく、友達はおろか、喋りかけられる事も殆どない学園生活を送っていたらしい。思ったより選民思想があるな。来た時から少し感じていたが。


「連理って言ったっけ?お前は特別だぜ、周りの奴らとちげぇ!」


らしい。ま、実際その通りでは有るのだろう。悪い意味だがな。


「家族が居るんだろ?そいつらの為に頑張ろうって思わねぇのか?」


月並みだが…適当に言葉を掛ける。


「…別に。親父もお袋も俺なんかに期待してねぇよ。それに…」


「それに?なんだよ」


思わせぶりは気持ちわりぃぜ。


「妹が居るんだ。妹にこんな思いはさせたくねぇだろ?」


来年でもこの学園に入学すると言う事だろう。


「はっ、思ったより家族想いじゃねぇか」


てっきりもっと堕落した理由だと思ってたぜ。本当は良い奴なのかも知れないな。


「家族想いじゃねぇよ。親も妹も血繋がってねぇし」


複雑だな。理由は知らんが…何か理由が有るのだろう。


「じゃあなんで妹を心配してんだよ。血の繋がりだけが家族かよ?」


生物学的には子孫では無いのかも知れない。ただ、人には愛がある。様々な形の愛がな。


「そんなんじゃ無いよ。ただ、無駄に傷つくこと無い。ただそれだけだ」


ま、そういう事にしておいてやるか…”今”はな。

学園を主体に物語が進行します

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