26話
「あ、あなた達は昨日の…」
今私の目の前には昨日の苦い記憶である男三人が居た。何故ここに居るかは知らないが、非常に不愉快である。
「この女昨日の奴ですぜ!」
しまった…油断して少し遠いところまで来てしまった。なんでこんなことに…。
「やめとけ。あの男もどうせ一緒だろ。相手するだけ時間の無駄だ」
何とかなりそうだ…。昨日の連理を見て勝てないと悟ったのだろうか。
取り敢えず争いにならずにこの場所を離れられそうだ。
「ちょっと待ってよ!昨日の事忘れてねぇぞ!」
子分だろう男に腕を掴まれる。
…ゾワッ
連理以外の男に触られることも無かったため拒絶反応が出る。
だが、今は逆上させない為に我慢するしかない。
「やめろ!そいつにはもう関わるなっ!」
リーダー格の男が叫ぶ。
「でもよ!兄貴だって昨日の屈辱忘れてないだろ!?」
「じゃあなんだ?俺らならあの男に勝てるのか?あ?」
「で、でもよぉ今居ねぇじゃん!」
男が私の腕を強く引く。その力に抗うには私には力が足りなかった。
腕を強くひかれたことにより転んでしまう。
「っ!」
転んだ際に下に転がっている石が足に激突する。
不味いです…。暫く立てそうにありませんね。
この状況どうしよう...。自分一人では何も出来ない…悔しいけどそれは事実だ。
「またお前らかよ。飽きねぇのか?」
連理の声がする。
…やっぱ凄いなぁ。私の危機には絶対に来てくれる。王子様みたい。
。
遠くに美羽と男たちの姿が見える。どうやら美羽が腕を引っ張られて転んでしまったようだ。
魔性の女って奴か?どんだけナンパされれば気が済むんだ?
「またお前らかよ。飽きねぇのか?」
「お、お前は!?やっぱり近くに居たのか!」
転んだ美羽を起こす。
「あ?お前それ…」
美羽の足から血が出ている。それに…完全に捻挫している様だ。
「だ、大丈夫。少し転んだだけ…」
…なんだ?
怒りか?ふつふつと俺の中の感情が大きくなっていく。
美羽の目に一粒の流星が落ちるのが見えた。
ああ...これは怒りか。大事なものに手を出された事に対する怒り。
俺にまだこんな感情があったのか。思ったよりも冷静だ。今はこの男たちをどうするか、冷静に考えている。
「お、お前ら逃げろ!」
リーダー格の男が言う。
「逃がさねぇよ。お前らだけは」
「れ、連理?どうしたの…?」
美羽も異変を感じ取ったらしい。普段の俺とは違う声だったかもしれない。
「な、なんだよ!?やんのか!?」
男が殴りかかってくる。
「愉しくねぇ、お前らと幾らじゃれつこうが愉しくねぇんだよ!!!」
男の大ぶりな拳を避け、相手の足を持ち上げる。
足を掴んだまま振り回す。
「や、やめろ!もう俺たちは手を出さない!誓う!!」
リーダー格の男が叫ぶ。
「関係ねぇな」
「お前おかしいよ!普通じゃねぇ!」
取り巻きの男が叫ぶ。
俺がおかしい?普通じゃない?
「普通ってなんだよ?お前らの言う普通ってなんだよ?」
既に振り回されている男は意識が無いみたいだ。
「れ、連理落ち着いて!ダメ!その人死んじゃうっ!!」
美羽が俺に抱き着いてくる。その足で歩くのは辛いはずだ。
「…なぁ教えてくれよ。俺はどうすれば良いんだよ?」
記憶を持たない、空虚な人生。それって死んでるのと同じじゃないのか?俺って生きてるのか?
「連理は連理。私の”大事”な人…。だからお願い…もうやめて」
美羽が抱き着きながら言う。
「頼む…。もう俺達は関わらねぇ!!」
「はっ...なんだよその眼、化け物でも見るみてぇだな」
男たちから向けられる視線は人を見るそれでは無かった。
掴んでいた男を離す。
「はっ…俺が悪者みてぇだな」
美羽の視線は見えないが、未だに俺に抱き着いている。
「わ、悪かった俺たちはもう行く」
リーダー格の男ともう一人が意識を失った男を抱えながら離れていく。




