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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
一章
16/70

16話

「お、お前その格好で行くのか?」


お互い着替え終わり合流したが…美羽の服装は伊達メガネに付け髭…なんで髭?


「完璧ね!連理ももっと気付かれにくい服装にしたら良いのに」


「お前の格好の方が気づかれるわ!!髭は外せ!」


美羽は不服そうな顔をしているが、流石に髭は不味いと思ったのか渋々と言った感じで外す。


「それじゃ行きましょうか」



「ここで張り込みしとくか」


歓楽街の入り口近くの路地裏で待機することにする。


「ふむふむ…あの女性はあの男の人に好意を持っているようだね」


「いや、あれはただの客引きだな。営業スマイルって奴だ」


「…あちらの男性は手を繋いでるからあの女性と婚約者だね」


「あれは風俗嬢と客がラブホテルに入る直前だな」


「……あ、あれは」


「あーあれは性病がバレた男が黒服にぼこぼこにされている所だな」


「変な事言わないでよ!!なんでそんな事が分かるのさ!」


なんか口調違くない?探偵キャラに成りきっているのかも知れないが、違和感だらけだ。ま、そういう年頃なのだろう。


あと俺は耳が良いのでな、会話を聞き取ることが出来る訳だ。


「全く…ってあれ!学園の制服!?」


歓楽街の入り口を学園の制服を着ている奴らが入っていくのが目に入る。


「あれは…待て美羽。すぐ出るな、尾行するぞ」


飛び出そうな美羽を制止する。


生徒の会話が少し妙だ。尾行して確かめた方が良いだろう。


「な、なんでさ?今すぐ止めた方が…」


「黙ってついてこい」


「わ、分かったけど…」



付いて行くと少し古びた倉庫に入っていく。俺達も気配を消しながら後を付ける。


「す、すみません遅れました…」


「あ?遅っせぇなぁ!!何時だと思ってやがる!早く準備してこい」


「は、はい…」


「な、なぁやっぱこれって闇バイトって奴じゃねぇか?」


「あ?今さら気付いたのか?もう遅いぜお前らも立派な共犯だ」


「そ、そんな俺らやっぱ辞めます!バレたら学園退学どころじゃないっすよ!」


「はぁ?何言ってんのお前ら。もう無理だから、それにお前らの事学園にバラされたいのか?」


…なるほどな。金に目がくらんで危ないバイトに手を付けた性質か。


「れ、連理…今すぐ助けた方が良いんじゃ…」


「焦るな。まだ相手の人数も何も把握していない」


根本を潰した方が良い。そうしないとまた生徒が餌食になるだろう。


「に、逃げようぜ。多分あの人たち普通じゃないって」


生徒の一人が言う。それは間違いでは無いだろう。


あの男”下”で見たことがある。なぜ”上”に居るのかは知らないが…何やら予想だにしていない事が起こっているらしい。


「兄貴!集まりやしたぜ。そろそろコイツ運んでもらいやしょう」


男がブルーシートで覆われている箱を指す。


「こ、これって何ですか?俺たちに何を運ばせようとしてんすか!?」


「お前らが知る必要ねぇよ!俺らのいう事だけ聞いとけや!!」


「痛っ!うぅ…」


生徒が男に蹴られる。


しかし…この匂い…


「美羽、あの箱の中身は見ない方が良いぜ」


多分箱の中身は内臓か、内臓出なくても人体の一部だろうな。


人間の血の匂いがこびり付いている。


「わ、分かった」


「そこ誰か居るのか!?っち!お前ら囲め!」


美羽と会話していると、男たちに感づかれた。


「バレちまったようだな...」


「れ、連理!どうするの!」


「どうするってそりゃ一つしかねぇだろ」


「ここだ兄貴!女と男が一人います!」


「男は殺せ。女は生け捕りにしろ」


血の気の多い奴らだな。


「おっと…美羽離れんなよ」


「すばしっこい奴め!そっちだ!」


「か、烏丸さん!?どうしてここに…」


生徒たちも俺たちに気が付いた様だ。って美羽の変装意味なさすぎるだろ。


「っち、邪魔だ!」


男の手下達が群がってくる。


「ぐへぇ!な、なんだお前…」


殴られた男たちが意識を失っていく。


「な、何者だお前!兄貴、あれ使っても良いですか!?」


「許可する。しかし女は殺すな」


「了解っす!お前終わったぜ?恨むなら神を恨めよ!」


謎のポエムを叫びながら男が胸ポケットから何かを取り出す。願われたり恨まれたり神って奴は忙しいんだろうな。


「…火薬の匂いか」


ま、相場は決まってるな。”拳銃”って奴だ。人を殺すためだけの道具。世界で一番人間を殺した武器。今も昔も人を殺す手段で一番手っ取り早い。


「れれれ連理!?あれ不味くない!?」


後ろで美羽がパニックになっている。


「当たらなければただの鈍器だ」


「死ねやっ!!!」


バンっ。乾いた音が木霊する。


「へ?」


「「「??」」」


「やれば出来るもんだな」


「な、何をしたお前っ!!??」


「鉄パイプで打った」


「ま、まぐれだ!気を抜くな」


「な、何故だ!?何故球が出ない!?」


「火薬が湿気てんじゃねぇの?」


今日は雨だ。倉庫の中にずっといたなら火薬が湿気ていても可笑しくは無い。それにあの拳銃相当な年代物だ。”下”で眠っていた骨董品だろう。


「ちっ…もういい俺が出る」


リーダーらしい男が出てくる。此奴は”下”に居た時は確かギャングの下っ端だったと思うが…記憶が薄いな。


「こいつは裏切らねぇ」


男はそう言って隠し持っていたナイフを取り出す。サバイバルナイフだな…切れ味は相当なモノだ。


「”少し”切り替えるか」


………よし。


「美羽、背中に掴まれ」


「は、はい!」


俺の得も言われぬ変化からか敬語に戻っている。


「な、なんだこの殺気は…」


男が怖気づいているが、そろそろ帰りたい…早く終わらせるとしよう。色々判った事だしな。


「シッ!」


ナイフを持った男が縮地と呼ばれる技法を用いて肉薄してくる。


「早いだけで勝てるのは子供だけだぜ」


その速さを利用し投げ飛ばす。ナイフなんて軌道さえ見れば当たることは無い。


「ぐっ…まだだ!」


男が性懲りもなく向かってくる。


一撃で終わらせるか…。


腰の関節に力を籠める。


「なっ!?ぶげっ!!」


俺の動きについて来れなかった男が軽く吹き飛ばされる。


暫く起き上がってくる事は無いだろう。もしかしたら永遠かも知れないが…。


切り替えるか……。よし。


「おい、お前らも早く行け」


生徒たちが呆然としているので一応声を掛ける。


「「は、はい!ありがとうございます!」」


駆け足で逃げ帰っていく。これに懲りたらもう二度と金に目がくらむんじゃねぇぞ。


「やっぱ連理って強いよね。”下”に行くときは一段と雰囲気が変わるけど…もしかして普段は抑えてるの?」


抑えている訳では無い。思考の切り替えをしているだけだ。普段はどうしてもリミッターが有るからな。


「そんな事より、俺はこいつらの処理をする。美羽は向こう向いとけ」


箱の中身を見る。


「…脳と肺か」


相当な量だなこりゃ。何百人という人間の脳と肺がそこにあった。


かなり時間が経っている為、移植に使う訳でもない。なんの為に集めてるんだこれは。


取り敢えず男から盗んだライターで焼却を試みる。


「無理か」


そういえば…拳銃があったな。中の火薬借りるか。


男のから拳銃を取り分解する。中には少量の火薬が入っており、着火するには十分な量であった。


「よし。美羽、行くぞ」


「なんだったんだろう…」


知る必要も無いだろう。今や燃え盛っているモノに過ぎない。


倉庫自体はコンクリートなので燃え移ることは無いが、気付かれるのも時間の問題だ。早くここから離れた方が良いだろう。


「今日は焼き肉が食いてぇな」


ボソッと呟いたが、美羽の顔は結構乗り気そうな顔をしていた。


頑丈な鉄パイプだな

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