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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
一章
15/74

15話

「連理~!!!またサボったでしょ!!いつもいつもどこほっつき歩いているのっ!!」


学園に入学して早一か月くらいが経った。そんな俺もサボるという事を覚えたらしい。


「テストさえ受ければ良いだろ?授業中にお前の身に危険な事が起こるとも思えんし」


「でも私の傍らから離れないで」


「”下”に行くときはそりゃ傍に着くぜ?でも学園は平和だろ」


「でも傍に居て!」


「じゃあお前も俺と一緒にサボれ」


俺がそう言うと少し顔を赤らめ悩んでいるのか口が止まる。


「で、でもなぁ私生徒会だから…」


「生徒会はサボったらダメなのかよ。屋上に居ると偶に居るぜあの女」


あの女はフィリアの事を指しているのだが、あいつは俺と同じくよく授業をサボっているらしい。


あの女は初めは違和感があり、少し探りを入れていたが…あのキルと言う男に悉く邪魔をされている。あの男…少し普通ではない。それに年齢も俺と同じか少し下と見た。


「副会長は特別だから…叢雲のご令嬢で」


「叢雲?なんだそれ」


確か…今住んでいる所が叢雲市…だっけか。


「”上”の支配者…取り敢えず権力が一番ある家柄ってこと」


「はぁん…そんな家柄の奴がねぇ」


「まだ疑っているんですか?副会長に限ってそんな事ないよ」


美羽には分からないだろうが…人には纏う雰囲気がある。


あの女は俺に近い雰囲気…を纏っている…そんな気がするのだ。


それが”上”の支配者のご令嬢か…俺の勘も鈍ったのかも知れないな。


「それより...また来週”下”の探索に行きます。予定は空いてるよね」


「空いてなくても無理やり連れて行くだろ…」


「人聞きの悪い…まあその通りだけど」


この一か月で二回程”下”に付き合っているが…探し物が見つかる気配は全くない。


それもそうだろう。広大な大地、荒廃した世界で指輪なんて小さい物が見つかる筈もない。


それに盗まれた可能性が一番高いからな。


「”下”のギャングもきな臭い。今は少し控えた方が良いのかもな」


一応の警告を入れる。…がこのお嬢様には意味が無いだろう。


「連理が護ってくれるので大丈夫!」


ほらな。俺をなんだと思ってんだ。次合う時俺が臓器だけになっている可能性だってあるぜ?


「その過信が祟っても知らねぇぜ」


「過信ではなく自信。連理も誇ればいいのに」





「連理さん授業は良いのですか?ずっとここに居ますよね」


屋上でさぼって居るとフィリアが話しかけてくる。


「あ?お前だってずっと居んじゃねぇか。それにあの男もな」


気配を隠してはいるが、基本的にこの女の傍に居る為気づき安くはある。


今もこちらを静かに伺っている様だな。


「あら、気付いてました?授業はもう学ぶことも無いですからね…」


「学ぶことが無い?それは違う。学ぶ必要を感じていないだけだろ」


学ぶことは無数にある。


「そうかも知れません。連理さんが教えてくれるなら授業を受けますけど~」


「女狐が。微塵も思ってねぇ事言うなよ」


不気味な笑みを浮かべる。俺から見れば途轍もなく不気味なのだが…傍から見れば完璧な笑顔なのだろう。


「連理さんも同じでしょうに。学ぶ必要性を感じていないでしょう?」


「別に。こっちで読書してる方が有意義ってだけだ」


「同じことでしょう。キルもあなたを評価してましたし、相当キレるんでしょうね」


「買いかぶりも甚だしいな。それにそれはあの男にも言える事だろ?」


あのキルとか言う奴も何か可笑しい。この俺が気配に気が付かないなんて初めてだ。それこそ”下”でもそんなことは無かった。


「烏丸さんに選ばれたのでしょう。少しは誇りを持っても良いのではないでしょうか」


「その驕りが身を滅ぼすぜ」


「……それもそうですね」


「私は生徒会室に戻ります。連理さんもいかが?」


気味が悪い。冗談じゃねぇぜ。


「御免だね。後ろから刺されそうな気配がぷんぷんしやがる」


そういうとフィリアは屋上から出て行った。これで平穏が訪れるな。




「だーかーらー!!私の傍から離れないでって言ってるよね!?」


「遠くから監視してるだけだ。安心しろ、何かあっても大丈夫だ」


「むきー!!がみがみがみがみがみがみがみが」


というような擬音が聞こえる程に口うるさく説教された。


「ふぅ…それに副会長は一応成績優秀で免除されてるから連理は違うでしょ」


「成績優秀者に成れば俺だってサボって良いのか?」


「ダメ」


「なんでだよ!話が違ぇじゃねぇか!」


「だって私が居るし。どうせ連理はやる気で無くて最下位だし」


ま、やる気が無いってのは間違ってねぇな。気が向いたら授業に出てやろう。


「今日は歓楽街に生徒が屯している件の調査だけど…どうする?」


「どうするも何も、歓楽街で張り込みするしかねぇだろ」


生徒会の仕事は良く分からない事も多い。中には飼い猫を探すなんて私利私欲の仕事もあった。


しかし、仕事を放棄すると美羽がうるさいからな。今までも渋々付き合っていた。


「そうだね…じゃあ今から歓楽街デートだね」


「お前がその気なら俺は据え膳は食うぜ?」


「…冗談」


ガキが揶揄うんじゃありません!


「制服はちと目立つか…着替えてくるぜ」

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