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ヴァニタスの鳥籠  作者: 鮭のアロワナ、しゃろわな
一章
10/70

初めての夜

本当にごめんなさい。9話が二回続いてました...。10話はこれになります...すいません。

メイドに促され屋敷に来た。


「こちらが連理さんの部屋になります。何か不自由があればいつでも仰って下さい」


それだけ述べて消えてしまう。


”下”からは自分の身一つしか持ってきていない。そのため荷解きなどの作業は必然的に無いわけだが…。


何をしようか…。


風呂に入る。美羽の部屋に凸る。窓から今の気持ちを大声で叫ぶ。


候補はこれくらいか。


俺は迷わず二つ目の選択肢を選ぶことにした。


美羽の部屋の扉を叩く。


「な、なんですか…今からお風呂に行こうとしてたんですが…」


風呂に行こうとしていたらしい。丁度良いな、俺も付いて行こう。


「ああ、俺も風呂に行こうと思ってな」


「ななな、何考えているんですかっ!!私が済んだらにして下さい!」


顔を真っ赤にして扉を閉められる。


…仕方が無い部屋に戻ろう。



「らんらんるー!!!」


今何をしているのかと言うと窓から叫んでいる訳だが…。この言葉の意味は知らない。


過去の日本で流行した言葉らしい。本にそう書いてあった。


窓から叫んでいるとノックが聞こえてくる。


「なんだ?」


「れ、連理さん今は夜なのであまり叫ぶのはお止め下さい…」


メイドだった。はぁん、社会に属するとは不自由なもんだな。


「風呂まで後どれくらい待てば良いんだ?」


「お嬢様は大体2時間程入浴されますので…十一時程になるかと思われます」


長すぎるだろ。風呂で何すんだよ。


「分かったぜ」


メイドが扉を閉める。


「……………なんだ」


メイドの気配が無くならない。扉の向こうで聞き耳を立てているのか?


ここは大人しくしておこう。変に勘繰られるのは避けた方が良いだろう。


「これは…哲学書か?」


本棚に視線が吸い寄せられる。


そこには一冊の本があった。埃を被っており、前の住人の忘れものだろう事が伺える。


「タイトルがねぇな。内容からして哲学書だろうが…」


しかしその本にはある筈のタイトルがどこにも載っていなかった。勿論そういう題材の本だって存在する。しかしこれに関しては消されたと表現した方が良いだろう。


「二時間あれば…いや全部は無理だな」


しかし暇つぶしにはなる。二時間は暇になる予定だった為、良い物を拾ったな。





暫く読んでいただろうか。


「お風呂どうぞー!」


扉の向こうから美羽の声がする。


「そうか…もう二時間経ったのか」


美羽の気配を逃すほど本に集中していたらしい。


「すぐ行くぜ」


風呂の着替えなどはメイドが置いておくらしいので特に持っていくもの等は無い。


今着ている服も”下”で長年使っていた為相当汚れてそうだな。


近くの川で毎日洗ってはいたんだが…洗剤なんて無かった。


「捨てるか…」


服はこの屋敷に腐るほどある。それを拝借すれば問題ないだろう。


最悪メイド服でも着てやろう。



そんな訳で現在は大浴場に来ている。


既に服は脱いで、浴場の前に立っている。


「ここが風呂か。初めて入るぜ」


今までは川での水浴び位だ。お湯に浸かるなんて記憶を失って初めての経験だ。


少し胸がワクワクしているな。少し興奮状態に陥っているらしい。


「確か本では入る前にかけ湯をするか、体を洗うと書いてあったな」


恐る恐るお湯を体に掛ける。


「くぁ…なるほどな」


一瞬体が硬直するが、直ぐに慣れる。


こういう感覚なのか。思ったより気持ちが良い。


次は湯船に浸かる。


「ふぅ…安らぎか、それとも興奮か」


体の芯が暖かくなるのを感じる。これが、興奮によるものか、安らぎによるものかは解らない。しかし、気に入った。


「なんだこのボタン….押すか」


謎のボタンを押すと背中あたりから勢いよく泡が噴き出してくる。


「な、なんだ…これも必要な機能なのか?」


どちらにしてもくすぐったい為、止めておく。


何分くらい湯船に浸かっていただろう。頭が少し重くなってきた。


これがのぼせるって奴か。


確か、湯船に浸かった後に体や髪の毛などを洗う…だったか。


「多分これだな」


身体や髪の毛を洗う奴がこのボトルに入った奴だろう。


適量が分からない為、適当に手に出し体に擦りつける。


するとみるみるうちに泡が増殖していく。


ある程度洗えたため、お湯で洗い流す。シャワーは一回使ったことが有るため、難なく使うことが出来た。


そこからはある程度初めての風呂を堪能したのだった。



「これを着たら良いのか」


浴場から出ると既にタオルと着替えが用意してあった。


「こ、この感触は….」


今まで使ってたぼろ雑巾に比べ、肌触りが別次元だった。


しかし…何故俺が護衛に選ばれたんだろうか。


自分で言うのもなんだが…”下”の人間だ。”上”の奴から見ればドブネズミみたいな感じだと思っていた。


身体を拭きながらそう考えてしまう。


夜でも明るいなんて不思議な感覚だ。勿論俺だって火は使ってた。だがこの町全体が光に包まれている。


「普段の俺は何をしていたんだか…」


本を読んだり、入った事の無い所に行ってたっけな。


”下”だって退屈はしなかった。むしろ今俺は何をすれば良いんだ?”記憶”を取り戻すだなんだと宣ったは良いが…肝心の手段が思いつかない。記憶ってなんだ?俺に本当に必要なモノなのか?


「これがホームシックって奴か?」


らしくねぇな。俺の家なんて無いと言うのに。


それに屋敷の全員が寝てるのか活気も全くない。時間が時間だ。俺も明日に備えて寝るか…。


遅い時間まで起きていても意味が無い。先ほど見つけた本も読み終わった。

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