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小さな村のお話

作者: ちあき

こんな村があったらいいな

そこは、桜の木が垣根から少しだけ表にでる

屋根が赤い坂の途中の平屋のお家。

表札よりやや大きめの札が垂れ下がっている。

まだ、寒さが残る早春の朝。

そこに幼稚園くらいの男の子を連れた母親らしき若い女性がやってきて

「おはようございます。今日も2枚おねがいできますか」

門の側でお花にお水をあげていたおばあさんに聞いていました。

おばあさんは「はいはい、夕方にはあがりますよ、まだまだ朝晩はめっきり冷えるからね」といいながら女性からセーターを受け取りました。

大きめの札には「毛玉取ります一枚20リ」

おばあさんは小さくつぶやきました。

「夕方にはあの坊やにまた会えるからプリンでも作っておこうかしら」



神社の三件隣にある、少し古びた日本家屋のお家に一人で住んでいるお爺さんがいる。

近所ではトンボ爺と呼ばれています。

そのおじいさんは縁側に腰掛けタバコをふかしながら何かを待っていました。

昨夜の雨でお庭の草花も水滴を光らし

同じように何かを待っているよう。

そこに小学生の少年3人組が危なかしげに自転車に乗ってやってきました。

一人の少年が「トンボ爺、今日は何かやってくるの?」トンボ爺は少し目を細めながら

「もうすぐてんとう虫がとんでくるんじゃ。

ええか、大人しくまってるんじゃよ」

それを聞いた少年達は互いに顔を見て見合わせてワクワクしているよう。

さらにトンボ爺は

「てんとう虫は幸運をはこんでくれるんじゃ

誰かに止まれば、そいつは幸運をもらえるんじゃよ」と話していると、青いシャツの少年の肩に目をやり、ヒョイっと赤いてんとう虫をつまみました。

「ひゃっひゃ今日はお前さんがいい日になるじゃろ」と白い歯を見せながらトンボ爺はいいました。

そこへ青いシャツのお母さんらしき人が訪ねてきて、「いつも遊んでいただいてすみません。よかったらこれ食べてください」といなり寿司を包んだ包みを手渡しました。

少年達は「ずるーい、トンボ爺が一番しあわせじゃん」

「そらそうじゃ今朝わしの肩にてんとう虫が止まったんじゃ、でももう、幸せはいっぱいもらっちょるよ」とトンボ爺は小さくウインクしました。

門柱にはかまぼこ板で作られたプレートが風になびいている。

「そこには虫の取り方教えます。一回20セント複数可」



駅にほど近い場所に金木犀の花の香りがする白い洋館風の家の前に何やらサラリーマン風の若い男性が行ったり来たり

そこへ玄関のドアが開き

「あら。先日お電話いただいた方?どうぞお上がりになって、今お茶を入れますから。甘いのはお好き?クッキーを作り過ぎたんで良かったら召し上がって」と白髪の上品なおばあさんが手招きをしました。

男性はすこし、おどおどしながら通された居間に腰をかけました。

おばあさんは、紅茶とクッキーを勧めながら

「で、お相手はどんな方?」と男性に聞きました。

そう、ここは「お手紙の書き方教えます。投函まで20セント」

男性は頭をかきながら

「いやー、美人ではないんですけど、コロコロよく笑う、笑顔が最高に可愛くて、何というか綿菓子みたいなちょっとでも触れたら溶けてなくなりそうなフワッとした感じでぇ」と男性は1時間ほど話つづけました。

「そんなにお嬢さんのことをご理解されてるなら、お手紙より直接お気持ちを伝えられたら?女性は告白されたら嬉しいもんですよ」とおばあさんは男性に話しました。

「はい、おばあさんにお話を聞いていただいたらなんだか勇気が湧いてきましたありがとううございました」と、晴れやかな顔をして男性が去ったあと、おばあさんは出窓に飾っている写真を見ながら「きっと上手くいきますすよね。そう思うでしょう?お父さん」と

窓から入る夕日に照らされながらご主人との思い出を馳せていました。

数日後、おばあさんの家に一通の手紙が届きました。先日の男性からです。

「先日はありがとうございました。お陰様でお付き合いに至りました。」

おばあさんは。

「まあまあ。それはよかった、でもあら?20セントもらい損ねたわ」






公園通りにある、古びたモルタルのアパートに、小学生に入りたての男の子とそのお父さんらしき人がアパートの一室のチャイムをならしました。

「はい、はい、いまドアを開けますよ」と

中から、血色のいいおじいさんがでてきました。

お父さんはいいました。

「すいません、お電話したものです。実は私はからっきし運動音痴で、この子に教えてあげられないんですよ」と横にある、駒なし自転車に目を向けました。

アパートの窓の冊子に紐でぶら下げた板があります。

「自転車の乗り方教えます。

のれるまで20セント」

おじいさんは「はいはい、では公園にいきましょう、僕?全然怖くないよ、上手く行ったら角のお店でラムネを飲もうね、ささっ行こう行こう」少しうつむぎかげんの坊やでしたがラムネと聞いて顔をあげ「うん!僕がんばる!」とにっこり顔

公園に着いた三人。

「いいかいおじいさんがちゃーんと後ろを持ってるから大丈夫。ハンドルを握って遠くのもみの木を見てご覧、ペダルに足を乗せて、はい、ペダルを漕いで、ちゃーんと後ろを持ってるよ」坊やは顔を高揚させていましたが「えい!」とペダルを踏みました。

「そうそう、ハンドルをしっかり持って、ちゃーんと後ろを持ってるよ」と言いながらおじいさんはふんわり背中から手を離しました。「そうそうちゃーんと持ってるよ」といいながら横にいたお父さんと顔を見合わせました。おじいさんは汗だく、何故か力が入ったのかお父さんも汗を掻いていました。

「坊や、もう君は一人で走っているよ、振り向かないで、もみの木まで行ってご覧」

坊やは一瞬泣きそうな顔を浮かべましたが歯を食いしばり一心不乱にもみの木を目指して危なげではあるけれど確実に走っていきました。



ここは駅前からすこし離れた大きな病院の

レクレーションルーム。

パジャマの上から、使い込んだ緑のカーディガンを羽織ったおばあさんの周りに数人の少女達がテーブルを囲んで座ってます。

病室のドアには

「折り紙の折り方教えます。一回20セント」

お婆さんさん数年前大病を患い長くこの病院に入院していますが、幸い両手は動くので少女達に折り紙の折り方を教えていました。

お婆さんさんは

「まあ、上手に折れてるわね。先と先をきちっと揃えたらもっと可愛い鶴さんが折れてるわよ」と。優しい目を細めながらいいました。

少女達は不器用ながらも気持ちを集中して折っています。テーブルには色とりどりの形の不揃な鶴がまるでキャンディーの山のよう。

「そうそう、お見舞いにこられたお友達に沢山キャンディをいただいたんだわ。すこし休憩していただきましょう」と病室からキャンディを持ってきました。

レクレーションルームに有るセルフサービスのお茶を赤いスカートの少女が、こぽさないように運んでいます。

「鶴はとてもおめでたい鳥なのよ。こんなに作ってどうするのかしら」とお婆さんは聞きました。

すると三つ編みをした少女が満面の笑顔で答えました

「あのね、お婆ちゃんの病気が早く治るように皆んなで1000羽作るの」


リタイアした一人暮らしのお年寄りも誰かのために役に立ちたい。

人とのふれあいを日々感じていたい。

暮らしている人々が互いに労わりあえるそんな村

あなたもここで暮らしてみませんか。

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