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七年という月日がもたらしたもの

 パレットをメイロー樹海の洞窟に閉じこめた集団が戻った後、ベリオレット達は密かにエリザレス山脈より北にある場所にカオス教の神殿を作る事を指示していた。カオス教の集団は、神殿を作る予定の場所へと向かって行った。目的の場所に辿り着いた集団は、ベリオレットに貰っていた図面通りに作り始めた。神殿は、何者かの侵入に備えて複雑に作られていて奥に行くと祭壇を置いた広い場所を作りあげた所で、ベリオレットから再び指示があった。広い場所の下に隠し部屋を作ってくれというものだった。カオス教の集団は、祭壇のすぐ下に隠し部屋を作る為に階段を作りその後に隠し部屋を広く作った。神殿が完成して守る為の人間を神殿に置いて周りからわからないようにすると共にベリオレットに報告を送った。

 メイロー樹海の結界が張られて出る事が出来ない洞窟の中でパレットは、何とかこの結界が張られた洞窟から出る方法を考えていた。「ゼルスに会いたい」その一つの思いだけでこの何もないくらい静けさが支配する洞窟で心を保ち続けた。だがパレットの体は少しずつ少しずつ弱くしていった。その状態で虚しくも七年という月日が流れて行った。七年の月日は、パレットの知らない所で様々な事が起こっていた。何も知らなかったパレットの元にも変化が起こるきっかけが音を立てて近づいて来ていた。

 パレットが連れ去られてから七年の時が過ぎていた。七年の間パレットの情報は全く集まらなかった。そんな日々が続いていたある日、世界のある場所で異変が起きていた。そのある場所は、突然発光し始めた。発光し始める前は、その場所には人の姿は見えなかったが発光した後その場所に二人の人間の姿が現れていた。発光は一瞬だったが、その発光に気づいた人間がその発光した場所まで近づいていた。その場に突然現れた人間は、自分達に起こった出来事を訳がわからないような顔をしていた。そして近づいてきた人間に話を聞いてきた。突然現れた人間は、話を聞くとある場所に向かって歩き出した。現れた人間が向かったのは、発光があった場所から北の方角だった。

 パレットをメイロー樹海の洞窟に閉じこめてから七年経ったある日、ベリオレット達は、拠点でゆっくりしていた。すると空が急に明るくなっている場所が見えた。急に明るくなった場所にベリオレットは、不安になったのか部下に指示を出して明るくなった場所で何があったのかを調べに行かせた。指示を出してから数日後、調べに行った人間が調査から戻ってきた。戻って来た人間から話を聞いたベリオレットは、一つ疑問に思った事があった。それは光が現れた後そこにいなかったはずの人間が現れたという報告だった。ベリオレットは、『もしやあの術が』と不安に感じてしまった。

 光が発光して現れた人間は、ある人間から聞いていた事があるアルカット神殿という場所へと向かっていた。ある目的の為に・・・・・・アルカット神殿に辿り着いたその人間達は、神殿にいた見張りの厳しい目を抜けて神殿の内部へと入っていき探索を開始した。その人間達が探索していると、神殿の内部にいた人間の声が聞こえてきた。「あの場所から連れて来た人間は、まだあの洞窟にいるのか?」と聞こえてきた。神殿を探索していた人間達は、「まだこの場所に来てないのか・・・・・・」と呟いて神殿の探索を終えて神殿の外に出て心当たりのある洞窟へと向かう事にした。

 アルカット神殿から神殿を探索していた人間は、メイロー樹海へとやって来ていてその人間達は、メイロー樹海の中を歩いていた。謎の二人は、霧が出て来た樹海をもろともせずにメイロー樹海のある洞窟へと向かっていた。その洞窟には、フードを被った人間が洞窟の中に誰も入らないように見張りをしていた。謎の二人は、そのフードを被った人間に向かって行って見張りをしていた人間を倒して洞窟の中へと入って行った。洞窟の中に入って行った謎の二人は、洞窟の奥へとさらに進んで行った。奥に進むとそこには一人の人間がいた。謎の二人は、その人間に話しかけるとその人間は突然現れた謎の二人にパレットと自分の名前を名乗った。すると謎の二人は、「やっと見つけた」と言ってパレットを逃そうと促すが、パレットは、洞窟にかけられた術の効果なのか洞窟を出る事が出来なかった。パレットは、この洞窟の中に張って来る事が出来た謎の二人に頼み事をした。パレットが謎の二人にした頼み事は「近くにいた子供のゼルを連れて行って私の親戚に預けてほしい」という頼み事と「ゼルスという人間にここの事を伝えてほしい」と頼まれた。謎の二人は、ゼルスという言葉を聞くと驚いていた。そして謎の二人は「あの時の・・・・・・」とパレットに聞こえないぐらい小さな声で呟いた。謎の二人は、パレットの願いを聞いてゼルを連れて何かの術で出られないはずの洞窟を出た。洞窟に残る事になってしまったパレットは、少しだけ期待しながら洞窟で待ち続けた。洞窟を出た謎の二人とゼルは、頼みごとの場所へと向かって行った。その様子をカオス教の人間が見張っていてその様子を伝えにカオス教の拠点へと向かった。

 ベリオレットの不安は的中してしまった。メイロー樹海でパレットを監視していた人間が樹海から戻って来て報告をしにきていた。その報告は、誰も近づかれないようにしていたはずの洞窟に二人の人間が近づき閉じこめていたパレットに接触した形跡があるというものだった。ベリオレットは、その報告を受けてすぐさま樹海で監視している人間にパレットを北にあるアルカット神殿に移すように指示を送った。指示を受けた人間は、急いでメイロー樹海に戻りベリオレットからの指示を樹海にいた人間に伝えるとカオス教の集団は、洞窟の中からパレットを連れ出した。

 パレットを探していた集落の人間は、パレットを見つける事が出来ずに集落へと戻って来ていた。集落に戻った集団は、長老にパレットの行方がわからなかったと報告をした。長老は「そうか」と一言だけ言葉を発した。その長老の言葉は少し悲しさを含んでいた。集団はしばらく集落で過ごしていたが、パレットを探す為に集落を離れてパレットの情報をひたすら探し続けた。だがそれでも情報は入らず七年の時が過ぎていき、七年後動かなかった出来事が動き始めた。

 ゼルを連れて目的の場所へと向かっていた謎の二人は、アルカット神殿を通りすぎてさらに北にある場所にいるパレットの親戚にゼルを預ける為に・・・・・・謎の二人とゼルは、歩き続けその場所にやって来たが、聞いてきた場所にある集落が全く見つからなかった。それでも謎の二人は、諦めずに集落を探し続けた。探し続けてもう無いのかと諦めかけて違う場所に行こうと考え始めていたその時、その場にいなかったはずの人間が現れていた。謎の二人は、その人間達がいつ現れたのか分からなかったが、現れた人間達に話を聞いてみる事にした。すると現れた人間は、集落の人間だという事を明かしてきて、ゼルを引き取ると言い出した。謎の二人は集落の人間だというその集団にゼルを預けた。ゼルは、集落の人間達によって集落へと連れて行かれた。その様子を見た謎の二人は、パレットから頼まれたもう一つの場所へと向かった。

 ある場所で発光があった少し後、魔王城では七年間止まる事なく続いた出来事がまた起ころうとしていた。魔王城のある場所で「やめろ!!返せ・・・・・・返せ!!」と叫ぶ声がその場所で響き渡りその場所の空気を大きく振動させていた。叫んでいる人物は、七年間続く夢でうなされて夢から目覚めた。目覚めたゼルスは、パレットを失ってから偉大な魔王になる為に日々修行中だった。今日もいつもの夢から目覚めたその直後に修行をする為に足取り重く修行所へと向かった。修行所に着いて中に入ると、そこにはある人物がどっしりと仁王立ちをしていた人間は、サタスンといって少し前からゼルスの教育係として魔王から指名された人間だった。サタスンは、ゼルスが修行所に来た事がわかるとこちらに話しかけてきた。「ようやく来たな」とサタスンは一言言うとゼルスに修行の準備をするように指示をしてきた。ゼルスは、いつも通り重苦しい気持ちを切り替えて、サタスンの指示通りに修行の準備を始めた。準備が終わるとサタスンは、ゼルスに攻撃を仕掛けてきた。ゼルスは、サタスンの動きに合わせて攻撃を受け止めていた。実践的な修行は厳しいもので修行が始まって数時間後には疲労が溜まっていき、体力の限界になると修行が終わった。五年間続けていた修行である程度強くなったが、それどもサタスンの修行ではまだ疲労が溜まる事があった。厳しい修行が終わり修行所を後にしたゼルスは、修行終わりにいつも行っている景色のいい場所へと向かう事にした。

 修行所からいつもの景色のいい場所に向かっていたゼルスに魔王城にいた魔物達が挨拶をしてきた。ゼルスは、その魔物達に挨拶をしながら景色のいい場所に辿り着いた。辿り着いた景色のいい場所には先客がいた。景色のいい場所にあった木の陰に幼馴染のタリスタが座っていた。タリスタは、ゼルスが来ると笑顔になってこっちに向かって歩いてきた。タリスタという人間は、ゼルスが魔王になった時に片腕になれる為の教育をしていて先ほどまでそれを受けていて、その後にこの場所へとやって来ていた。ゼルスとタリスタは、厳しい修行が終わった後の時間をこの景色のいい場所でいつも過ごしていた。今日の修行を終えて時間があった二人は、少し魔王城から出て近くにある人間の町に行く事にした。二人は一度自分達の部屋に戻って人間に姿を変えて用意をしっかりとした後に魔王城の入口に向かって歩き出した。

 魔王城の入口にやって来た二人は、そこから近くの町へと向かった。町に向かう途中に他の人間に出会ったが、ゼルス達が魔族だと気づく人間はいなかった。魔王城からしばらく歩くとアースリーという町へとやって来た。アースリーの町は、少し大きく町の中に入ると活気のある声で賑わっていた。ゼルス達は、賑わっている街の中を歩きながら見回っていると、ある一角でどこかに雇われている女性が雇用主から責められている光景に出くわした。ゼルスは、その光景を見た時、何故か七年前から夢に出てくるあの出来事を思い出してしまった。ゼルスは、あの出来事のトラウマから体がガクガクと震えだして胸が締め付けられるように苦しくなって呼吸は荒くなっていき気分が悪くなっていった。やがて立つ事が出来なくなって地面に倒れ込んだ。その様子を気にしながら静かに見ていたタリスタが、苦しむゼルスを支えながら町を楽しむ事を止めて魔王城へと戻る事にした。

 洞窟に閉じこめていたパレットをカオス教の集団は連れ出して北にあるカオス教の拠点の一つになっているアルカット神殿へと連れて行く事になった。七年の月日がパレットの体を弱くしていた。その為なのかパレットを連れてアルカット神殿に行くのにかなりの時間が掛かってしまっていた。それでもようやくアルカット神殿に着いたカオス教の集団は、パレットを神殿の奥にある広い部屋まで連れて行った。そこでさらに普段はあまり使われていない核部屋への道を使って誰にも気づかれない部屋に閉じこめた。パレットを閉じこめたカオス教の人間達は、その後アルカット神殿の警備を強化する事を急いだ。

 ベリオレットは、メイロー樹海の異変の報告を受けてある行動に出る為に自分の部屋に戻っていた。ベリオレットは、自分の部屋に戻って一つの鏡を取り出した。あの時拾った魔法の鏡だった。ベリオレットは、その鏡をカオス教の拠点の近くにいる魔物にその魔法の鏡を向けた。魔法の鏡を向けられる前まではベリオレットに敵意を剥き出しにしていた魔物が鏡を向けられるとおとなしくなっていった。おとなしくなった魔物の目は、赤色に変化していてベリオレットの言った事を聞くようになっていた。ベリオレットは、魔物達にアルカット神殿に向かうように指示を出した。すると魔物は、アルカット神殿の方向に向かって行った。

 謎の二人は、集落の人間にゼルを預けた後にパレットに頼まれたもう一つの場所へと向かっていた。ゼルを預けた場所から向かっていたのはゼルスがいる魔王城だった。謎の二人は、急ぎながら進んでようやく魔王城までやって来た。謎の二人が魔王城の近くまで来ると、見張りは近づいて来る二人に最大限の警戒をしながら見守っていた。謎の二人は、見張りに近づくとパレットの名前を伝えた。見張りは、いきなりパレット様の名前が出て驚いたのかしばらく固まってしまった。謎の二人は、見張りの戸惑いを感じつつ洞窟の情報をゼルスに伝えるように見張りに紙を渡した。見張りは、謎の二人から紙を受け取るとゼルスに報告しに行った。謎の二人は、紙を渡し終えると魔王城を後にした。見張りは、ゼルスの元へと向かっているとタリスタに会って謎の二人から受け取った紙をタリスタに渡した。その紙を見たタリスタは、ゼルスの部屋へと急いだ。

 ゼルスは、アースリーの町で気分が悪くなった後、タリスタに支えられながら魔王城に戻って来てしばらく自分の部屋でゆっくりと過ごしていた。あれからしばらくして穏やかな時間が流れていたが、その穏やかな時間が終わりを告げる事が起こった。部屋に近づく足音が聞こえてきた。その騒がしい足音は、部屋の前で止まると扉が開きタリスタが慌てながら入って来た。入ってきたタリスタの顔が只事ではない事を表していた。タリスタの手には紙が握られていた。タリスタは、手に握っていた紙をゼルスに渡した。さらにタリスタは、見張りから聞いた謎の二人の事も伝えた。ゼルスは、手渡された紙に書いてある文書を見た。そこには、ゼルスが七年間探していたパレットの情報が書かれていた。ゼルスは、この紙に書かれている場所に一刻も早く向かいたいと思って準備する時間も惜しんでその場所に向かう為に魔王城の入口へと向かった。魔王城の入口に着いたゼルス達は、そのまま魔王城を出て書かれていたパレットがいる場所へと向かって進んだ。文書に書かれていた場所は、メイロー樹海という場所だった。魔王城からメイロー樹海までかなり遠く何日もかかる場所だった。だがゼルスには、そんな事は全く関係なかった。『会いたい』その思いが強かった。ゼルスは、その一つの思いで歩き続けてその場所の近くまでやって来た。ゼルス達は、エリザレス山脈の山道を疲れながらも歩き続け、山脈を越えてようやく目的の場所のメイロー樹海へと辿り着いた。ようやく辿り着いたゼルス達は、この樹海の何処かにパレットがいるはずの樹海へと入って行った。ゼルス達が、メイロー樹海に入ると霧に包まれていて前が見えないほどだったが、気にせずに霧の中をパレットがいるはずの洞窟を探し始めた。樹海の中に出ている霧が捜索を邪魔し続けていて時間がかかったが、ようやく洞窟を見つけ出した。ゼルス達は、見つけ出した洞窟の奥へと進んで行った。やっと会えるそう思っていたゼルス達は、洞窟の奥でその思いを打ち砕かれた。洞窟の中には、パレットの姿は見当たらなかった。ゼルスは、膝から崩れ落ちた。だが、落ち込んでいる暇はなかった。すぐさま洞窟の中を調べ始めたゼルス達は、つい最近までいたような痕跡を見つけた。ようやく会えると思っていたのに悔しかった。ゼルス達は、少し考えてあのフードを被った集団が、自分達が来る事を察知して何処かに移動させたのではないかと考えて手掛かりを探す為にもう少し洞窟の中を探索した。探索したがパレットが何処に連れて行かれたかの情報が見つからず魔王城に戻る事にした。

 ゼルスが魔王城を出てメイロー樹海に向かった後、アルカット神殿付近で魔物の情報が多くなっていた。その情報は、魔王城まで聞こえてきていた。魔王城にいたサタスンは、その情報が入ってくると部下に詳しい情報を調べさせた。部下が調べてくるまで魔王城で待つ事にした。しばらくして情報を調べに行った部下が帰って来たが、詳しくはわからなかった。サタスンは、自分で調べに行く事にして準備をして魔王城から出ようとしていた。

 パレットと会えなかったゼルス達は、魔王城の近くまで帰って来ていた。もうすぐ魔王城だという所で魔王城から出て行く人影を見かけた。ゼルス達は、その人影を見るとサタスンだった。ゼルス達は、魔王城から出て何処かに行こうとするサタスンに近づいた。するとサタスンは、ゼルス達の姿に気づき話しかけてきた。サタスンは、ゼルス達にある任務に行くので付いてくるように言ってきた。サタスンが行くという任務は、魔物が何者かによって操られているようなので調査をするというものだった。ゼルス達は、サタスンと一緒に調査に行く事を決め操られた魔物が向かう場所へと歩き出した。

 集落の人間は、ゼルを預かって集落へ帰って来ていた。そして長老にゼルを合わせてパレットについて長老に報告をした。すると長老は、ゼルに一言「パレットの・・・・・・」と言った。集落の人間は、少年の顔を見てパレットに似ている事に気づいた。長老は、ゼルという少年を集落に引き取っておこうと思っていたが、やはりあのお告げの内容を恐れて集落の人間を呼んでその集落の人間に近くにあるアルカリアの町で生活させるように指示をした。指示を受けた人間は、ゼルを連れてアルカリアの町へと向かった。長老は、二人組とゼルから得た情報を元にメイロー樹海の洞窟に集落の人間を向かわせた。長老からパレットの情報を聞いた集落の人間は、メイロー樹海へと急いだ。

 集落からメイロー樹海に行くまでに七年前には無かった建物が建っていて何やら人が集まっていて不思議に思いながらもメイロー樹海へと向かった。エリザレス山脈を越えて行くと、メイロー樹海に辿り着いた。集落の人間は、メイロー樹海を歩き回って情報にあった洞窟を見つけ出した。集落の人間が洞窟の中に入るとそこには人がいた形跡があった。集落の人間は、周りをくまなく調べて手紙らしき物を見つけた。その見つけた手紙の内容を見た集落の人間は、ここにパレットがいた事は間違いなさそうだと考えた。だが、そこにはパレットはいなかった。何処かに連れて行かれたかと思うが、その場所がわからなくなった。悩んでいた集落の人間は、来るまでに見た人が集まっていて不思議な感覚になった建物の事を思い出した。集落の人間は、手紙をその場に残してメイロー樹海の洞窟を出てあの建物があった場所まで戻る事にした。

 アルカット神殿での魔物出没の噂は、集落にも伝わって来ていた。メイロー樹海に集落の人間を送った後、長老はアルカット神殿に突然魔物が現れた出来事の裏にあの時の人間が関わっていると感じて集落の人間をアルカット神殿へと向かわせた。集落の人間は、急いで長老から言われた神殿へと歩き出した。

 アルカット神殿に魔物が出没した噂が出る少し前、ベリオレットは魔法の鏡で魔物を操った後に自分もアルカット神殿へと向かっていた。ベリオレットが、アルカット神殿に辿り着いたのはゼルス達が来る少し前だった。神殿の中に入るとパレットが閉じこめられていた隠し部屋に向かった。そしてパレットと対面して話をしていた。そんな時、その部屋の上が騒がしくなっていった。

 ゼルス達は、魔王城から北にあるという神殿に向かっていた。その神殿は、普通は魔物が寄り付かない場所だった。サタスンとゼルス達は、一緒に進んで行って二日ほど歩いて神殿へと辿り着いた。神殿に辿り着いた三人は、少し様子を見る事にした。辿り着いた神殿は、遠目から見るとそこには神殿があるという事がわからないようになっていた。しばらくすると魔物の群れが神殿へと向かっていった。サタスンは、遠目から神殿に向かう魔物の状況を見ていて魔物の目が赤く変色していて普通の状態ではない事がわかった。三人は、その場で考えた。魔物を操っている人間は、どんな方法で魔物を操っているのかを・・・・・・そのヒントが神殿にあると思って内部へと入って行った。ゼルス達が神殿の内部に入って行くと、中はとても複雑な構造になっていた。ゼルス達は、その複雑な構造をしている神殿の内部を調べながらさらに奥へと進んで行った。奥へと進んで行ったゼルス達の前に下が開けた場所が見えてきた。上からその場所を覗いてみるとそこには、操られた魔物とそれを操っていそうな集団がいた。ゼルスは、その場所にいた集団を見た時にあの時の事を思い出した。その場所にいた集団は、あの時パレットを連れて行ったフードを被った集団だった。ゼルスは、手を強く握りしめた。憎しみを抑えるように・・・・・・その集団と魔物の集団が大勢いてその集団は、何かを叫んでいた。ゼルス達は、その叫びに耳を澄まして聞いてみると、混沌と絶望を世界にもたらせと何回も叫んでいた。その叫びに魔物集団も同調して叫んでいた。フードを被った集団が、叫んでいたその叫び声は、その場所を覆い包むように響いていた。三人は、その叫び声が鳴り響く中集団の中に突っ込んで行った。

 フードを被った集団と魔物は、神殿の開けた場所に集まっていた。その場所には、祭壇があって神聖な場所のような雰囲気だった。その集団がいなければ・・・・・・その場所でフードを被った集団と魔物は、カオス教の教えを叫び出した。その叫び声は、部屋を覆い包んで行った。その叫び声が続いていた中、集団は、何かの気配を感じその方向を見ると謎の三人組が集団と魔物の前に突然現れた。

 集団の中に突っ込んで行ったゼルス達は、集団が一瞬戸惑っていた中進んで行った。フードを被った集団は、操っている魔物の集団にゼルス達を攻撃するように指示をしていた。操られた魔物の集団は、ゼルス達に攻撃を仕掛けていて普段以上の力を出していて強かった。ゼルス達は、たくさんの魔物相手に奮戦をしていたが、時間が経つにつれて押され始めて勝てる可能性が低くなっていた。ゼルス達が周りを見るとフードを被った集団は姿を消していた。その場に魔物だけになっていて、魔物の攻撃を躱しながらも追い詰められたゼルス達は、魔物の攻撃を少しずつ受けていった。状況は悪い方向に向かっていた。この状況がまずいと思ったサタスンは、ゼルスとタリスタに逃げるように指示をした。だが、ゼルスとタリスタはその指示には従う事が出来ずに拒否し続けた。やっと見つけたあいつらがいるのだから・・・・・・憎しみで状況が正しく見られていないゼルスとタリスタが指示を拒否し続けている間にも状況はさらに悪くなっていく。サタスンは、その様子を見て何かの術の詠唱を始めた。サタスンは、術の詠唱のスピードを速めていきしばらく経つと術の詠唱は終わった。それと同時にサタスンは、ゼルス達に向けて「お前達だけでも逃げのびろ」と叫び術の効果を発動させた。ゼルスとタリスタは、神殿の外まで飛ばされた。神殿の外に飛ばされたゼルス達は、サタスンが出てくるまでしばらく待ち続けた。追手が来るかもしれないリスクを負ってまで・・・・・・きっと来ると思っていたがサタスンは戻って来なかった。

 ゼルス達が神殿の外に飛ばされた後、神殿の中ではサタスンと魔物がまだ戦っていた。複数の魔物達とサタスンの戦いは、明らかにサタスンが不利な状況だった。だがサタスンは、体力が続く限り戦っていた。ゼルス達が逃げきれる時間を一秒でも多く作ろうとするために・・・・・・圧倒的な不利な状況で戦うサタスンもそろそろ人数的不利には勝てなかった。体力が尽きても魔物達の攻撃を受け続けて意識が無くなってしまった。動けなくなったサタスンを魔物達は、神殿にある隠し部屋へと運んでいった。その後ろには姿を消していたフードを被った集団がいた。

 サタスンは、戻って来なかった。ゼルス達は、サタスンの死を感じ取って神殿の片隅に墓標を建てた。時間はすっかり陽が落ちようとしていた。陽が落ちてきたその色とゼルスの体から溢れて来た漆黒のオーラが混じり合っていたが、徐々にゼルスのオーラが漆黒から暗黒へと変わっていく。一緒にいたタリスタは、ゼルスのオーラの変化に気づいていて、その時に暗黒のオーラが見えたのは一瞬だった。ゼルス達は、今の魔王にサタスンの事を報告しなければならないと思って魔王城へと帰る事にした。タリスタは、暗黒のオーラが見えなくなった背中を見ていると、ゼルスの体から出るオーラの強さから少し離れてついていく事しか出来なかった。あの一瞬見えた暗黒のオーラは、消えたのではなくゼルスの体に馴染んだだけだった。

 ベリオレットは、今自分がいる場所の上が騒がしい間にパレットに対して運命を変えた存在に復讐しなければいけないとずっと言い続けていた。ずっと言い続けていると騒がしかった上が静かになっていた。そしてばれないように塞がれていたこの隠し部屋に続いていた階段からカオス教の集団が降りてきていて、魔物はある人間を抱えていた。カオス教の人間は、教祖であるベリオレットに挨拶をすると魔物が抱えてきた人間をパレットと一緒の部屋に放り込んだ。抱えてきた人間を部屋に放り込んだ後、その場所を離れてカオス教の拠点へと戻って行った。カオス教の集団が去った後、ベリオレットはパレットに自分の事を話してカオス教の教祖である事や時を越える術が使える事を話し続けた。パレットは、ベリオレットの話を驚きながら聞き続けた。その話が終わるとベリオレットは、隠し部屋を去って行った。それからしばらくしてサタスンが意識を取り戻した。

 サタスンが意識を取り戻した時、見知らぬ場所に閉じこめられていた。周りを見渡すとそこには、一人の人間が閉じこめられていた。サタスンは、その人間の顔を見てすぐさまパレットという名前を思い出した。パレットもサタスンの事を思い出していた。パレットは、サタスンにカオス教の教祖の特徴や時を越える術を使う事を話した。サタスンは、持っていた紙にパレットから聞いた事を書き記した。サタスンとパレットの再会から数日後、パレットは長年の疲れのせいか意識が無くなり始めていた。サタスンがパレットに近づくと、パレットのか細い声が聞こえてきた。「テール・・・・・・テール」と無意識に呟いていた。サタスンは、その言葉をなぜ言っているのか分からなかった。パレットは、その言葉を呟いたまま息を引き取った。それからしばらくしてサタスンも息を引き取った。


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