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第一話 「乙女ゲーム転生キタ――!?」

 私は志田莉子。

 二十五歳。とある小さな企業で働くしがないOLだったが、うっかり自宅の階段で足を踏み外して落下、そして死亡した。

 我ながらなんとも情けない最期だと思う。


 振り返ればとことんついていない人生だった。

 容姿にもあまり恵まれず、成績も悪くて志望だった高校にも落ち、それからは恋愛もせずに散々バイトで稼ぎ、やっとのことで就職した。

 しかしその先でも幸せはなく、ただ働くだけの人生。そんな味気ない日々のたった一つのご褒美だったのが大好きな乙女ゲームである。


 乙女ゲームの世界の中に行きたいと何度願ったことだろう。

 攻略対象たちに甘い言葉をかけられて優しくされたいと夢見たことは数知れない。

 そしてその願いは、神様に届いたのだ。だからこうして今私はここにいる。


「もしかしてこれって……乙女ゲーム転生キタ――!?」


 思わず叫んでしまった私を、どうか責めないでほしい。

 茶髪セミロングにクリッとしたヘーゼル色の瞳。そして名前は『シーダ・リコリット』。


 この条件に当てはまる人物を私は知っている。

 生前どハマりしていた乙女ゲームの一つである『八人の魔法騎士と始める女騎士生活!』こと通称『八騎士』のヒロインと同じなのだ!!!


 ちなみに乙女ゲームヒロインと言っても、『悪役令嬢もの』――最近ネット小説で流行っているらしいジャンルの一つなのだとラノベ好きの同僚に聞いたことがある――の中でアホな尻軽女と描写されているようなピンクブロンドの泥棒猫ではなく、ちょっと恋愛脳なだけのごく平凡な女の子なので安心してほしい。


 乙女ゲーム自体ではヒロインの名前はプレイヤーが決められる仕様となっているので名前が呼ばれることはないし、容姿も基本的には描かれないのだが、つい先日発売された『八騎士』の漫画化作品ではヒロインの名前も容姿も描かれていた。それを読んだ私にはすぐにわかった。

 ヒロイン(シーダ・リコリット)に転生してる!と。


 前世の人格である私の性格の方が前面に出てしまっているから正しく言えば憑依に近いのかも知れない。だが、シーダとして生きていた今までの十五年間の記憶もきちんと頭の中にあった。

 このウェルスト王国の平民の娘として生を受け、母や家族から可愛い可愛いと甘やかされながら育って来た。

 しかしつい先日、街に魔物が現れた際に自分でもわけのわからない力を発動させ――魔物を退けられたものの、ぶっ倒れてしまったのだ。

 そこまでがシーダの記憶である。


 だが私はこの先のこともきちんと知っていた。

 あの力が光魔法という特殊な魔法によるものであり、王命によって魔法騎士団という組織への入団を命じられること。

 そこで八人の騎士――つまり攻略対象たちと出会い、恋をするということ。


「つまり……三次元のロバート様に会えるってことじゃないッ!!!」


 説明しよう。

 ロバート様とは、私の一番推しのキャラである。

 この乙女ゲームのメインヒーローであり、魔法騎士団長にして金髪碧眼の輝かんばかりの美貌を持つ第二王子。キラキラ王子様タイプの彼こそ、私が月給の半分を充てて推し活をさせていただいていたお方。


 そんなロバート様が三次元で見られるかも知れないだなんて! これは夢じゃなかろうか!?


 普通の人なら、いくら推しがいる世界だとはいえ、転生などしたら最初は戸惑うものなのかも知れない。

 だが私は前世には何の未練もない。第一、死んでしまったのだし戻れるわけもないのだ。いちいち気にしたってしようがない。

 ということで私は乙女ゲームヒロイン生活を満喫させてもらいながら、ロバート様のご尊顔を思う存分拝むこととしよう。ああ、考えるだけでドキドキして来た。


「異世界転生サイコー!!! 神様、ありがとうございますぅぅっ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで転生に前向きなヒロインは、逆に新鮮ですねww
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