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すれ違ったその先に。

作者: 明日花

とある中学生二人の夏休み。

落ちしたハンカチを探す海斗、ハンカチの持ち主を探す公輔。

お互いにすれ違うが、最後はみんなが笑顔になれた。

一生懸命頑張った二人の物語です。


「家に教科書を置いてきたら、三時に河川敷に集合な。」

「わかった!とりあえず、数学の丸つけは後でだね!」

「もちろん。俺はボールを持っていく。」

「僕は飲み物を持っていくよ!」

「またな!」


そう言って、海斗と公輔は学校を後にした。

二人は中学二年の同級生であり、昨日からの夏休みを楽しんでいた。

数学の補習が終わり、その後遊ぶ予定を立てた。

約束は三時に河川敷に集合である。

海斗の家は、学校から歩いて十五分の所にある。

数学の教科書とミニドリルは意外と重く、額から汗が伝ってきた。

さすが夏真っ只中である。

家に着いたと同時に、冷たい麦茶を一杯飲み干し、出かける準備をした。


「いってきまーす。」


最近買ってもらったサッカーボールを持ち、河川敷に向かった。

住宅地を抜けて、商店街に入ったすぐの所でおばあちゃんが辺りを一生懸命見回したり、鞄の中をガサガサと何かを探したりしているようだ。

そのまま見て見ぬふりをして通り過ぎようとしたが、海斗はふと、母の言葉を思い出した。


「困っている人がいたら、助けてあげなさいね。」


拳をぐっと握り締め、一度深呼吸をし、おばあちゃんに声を掛けた。


「だ、大丈夫ですか…?」


おばあちゃんは、突然声を掛けられてびっくりした様子だったが、海斗の顔をゆっくり見てからポツリと呟いた。


「…ハンカチを、落としてしまって。」

「ハンカチですか?」

「そう…孫がプレゼントをしてくれた大切なハンカチをどこかに落としてしまって。」


海斗とおばあちゃんは一生懸命辺りを探し始めたが、近くには見当たらない。

道のどこかに落としてしまったようだ。

一方、公輔も家に帰り、冷蔵庫からペットボトルのお茶を二本、鞄に入れ河川敷に向かった。

公輔は五分前行動をするのが癖であったため、河川敷までの時間をよみ、早めに家を出た。

商店街に入った道に、黄色い向日葵のハンカチが落ちていた。

公輔はそのハンカチを拾い、付いていた砂をはらった。


「どうしよう。」


商店街にはたくさんの買い物客がいたため、ハンカチの落ちていた近くの人に声を掛けた。


「あ、あの!これ、落としませんでしたか?」

「私のじゃないわ。ごめんね。」

「うーん。わからないなぁ。」


何人かに声を掛けたが、誰のものでも無かった。

鞄に付けていた時計を見ると、三時半を回っていた。


「やばい!」


公輔は急いでポケットにハンカチをしまい、海斗の元へ急いだ。


「ハンカチ…無いですね。」

「…そうね。見当たらないね。」


おばあちゃんのとても悲しそうな顔を見た海斗は、もう一度辺りを一緒に探そうと声を掛けた。


「どんな色ですか?」

「黄色の向日葵の絵が付いているんだよ。」


やはりあたりを見回しても見つからない。

商店街のシンボルである時計は三時半を回っていた。

海斗は探すのに夢中になってしまい、公輔との約束の時間を過ぎてしまった。


「やばいっ。」

「…悪かったね。他に用があったんじゃないかい?」


海斗は申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、おばあちゃんに頭を下げ公輔の元へ急いだ。

海斗と公輔は偶然にもほぼ同時に集合場所に着いた。


「はぁはぁ…」

「あっ。」


全力で走ってきたため、息が切れていた。

海斗も公輔も遅刻をした言い訳を一生懸命考えていたが、ちゃんと本当のことを言うことにした。


「…落とし物をしちゃったおばあちゃんと一緒に探しててさ、ごめん!」

「えっ!」

「な、なに!?」

「落とし物って、このハンカチ?僕も落とした人を探してて遅くなったの!ごめん!」


公輔は大事にポケットにしまってあったハンカチを取り出した。


「これが落ちてたの!」

「それだ!なんだ、公輔が持ってたのかー!」


海斗も公輔もなぜか笑いが止まらなくなってしまった。


「まだ、あのおばあちゃんいるかな。」

「どうだろう。一応、行ってみる?」

「そうだな!」


海斗と公輔は商店街に急いで向かった。


「いないな。」

「さすがにもういないね。」

「おばあちゃん、すごい悲しそうな顔をしてた。」

「…そっか。これだけの広さじゃ見つからないね。」


夕方になり、今日は遊ぶのをやめて帰ることにした。


「…残念だな。でも、俺たちいいことしたよな。」

「そうだね!ねえ!暑いし、アイス買って食べながら帰ろうよ!」

「いいね!」


海斗と公輔は商店街の入り口にある駄菓子屋に向かった。

店に入り、海斗と公輔は大きな声で名前を呼んだ。


「賢一じいちゃーん!」

「お邪魔しまーす!」


奥から賢一じいちゃんが笑顔で出てきてくれた。


「いらっしゃい!今日も暑いねー!」

「アイスを買いに来ました!」

「はいよ!おーい、ばあちゃん!そこのアイスケースからアイス二つね!」


奥のアイスケースのある横からおばあちゃんが出てきた。


「あっ!」


海斗がおばあちゃんを見るなり、大きな声を上げた。

横にいた公輔はびっくりしている。

海斗の顔をみておばあちゃんも驚いている様子だ。


「公輔!ハンカチ!」

「あっ!ちょっと待って!」


公輔は急いでポケットからハンカチを取り出した。


「おばあちゃん、これでしょう?」

「…これだよ、これだ。探していたハンカチだ。」

「よかった…!」


海斗はふと思い出した。

ここの賢一じいちゃんの奥さんは入院していて、近々退院する話をどこかで聞いた気がした。


「退院祝いに孫がプレゼントしてくれた大事なハンカチだったんだ…。本当にありがとう。」


おばあちゃんは、海斗と公輔の手を握りながら何度も頭を下げた。

横にいた賢一じいちゃんもニコニコと話を聞いていた。


「よし!今日のアイスのお金はいらないよ。」

「えっ!いや、」


海斗が鞄からお金を出そうとすると、おばあちゃんはゆっくり手を戻した。


「お礼をさせてちょうだいな。」


海斗と公輔は目を合わせ、ゆっくり頷いた。


「またな!今日はばあちゃんのために、ありがとう!」


海斗と公輔は笑顔で二人に手を振り、駄菓子屋を出た。


「…いいことしたな。」

「うんっ!」


海斗と公輔はアイスで乾杯をした。

この物語はとある賞に応募した作品です。

選ばれることはありませんでしたが、とても満足しています。

私が初めて書いた短編小説でした。

会話や文章をまとめるのにとても苦労しましたが、これが小説を書くということなんだ。と実感し、感動しました。

この感覚を忘れずに、次の物語も書いていきます*


お読みいただき、ありがとうございました。

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