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モブは普通の〈モブらしい〉生活を送れない  作者: 里道アルト
第四章 警告
75/81

悪夢から解放されて

 地獄のような一時間だった。


 一度目をつけたらずっとマーキングを続けるらしく数分ごとにずっとウィンクを飛ばされ続けた。


 見た目はおじさんなのでどれだけ悲惨だったかは容易に想像つくだろう。


 今日のことは一生水に流して、次からは関わってこないでほしい。切実に。本当に。冗談とかではなく。本気で。


 そういえば、男子達がまた女子を落としたなんて騒いでいたりもしたが、楓達はともかく(そもそも落としたわけじゃない)、あの人はおじさんだ。誰がどう見ても乙女なんかではない。一歩外を出ればただの変態だ。みんなには目を覚ましてほしい。


 次は子供先生か、だったら殺すとか騒いでるんじゃない。そもそも、先生と生徒だろうが!そんな関係に発展はしねぇよ、夢見んなと言ってやりたいが余計に孤立するのが目に見えているので口には出さない。悪評がこれ以上広まると本当に友達ができない。


 よって僕は悪評減少を目指して高校生活を送らねばならないのだ。言っててめっちゃ悲しくなるけど!!


 えいえいおー!えいえいおー!!えいえいおー!!!


 無数にいる僕が応援してくれる、頑張ろう。えいえいおーだ。


「おーい悠斗、ゆーと、悠斗ってば」


 突然の衝撃に脳が揺さぶられ、強制的に現実世界に帰ってくる。どうやら、肩をバンバンと叩かれたようだ。こんなに悪評を抱える原因となった彼女が、僕が現実逃避するのを許してくれないらしい。何とも厳しい世界である。


「何だよ、伊波さん。僕の両瞼はもうしばらくしたら閉じるよ。限界だからね」


「何言ってるの?悠斗。そんなことよりあれ見てあれ」


 僕の体はまた、揺さぶれる。さすがにこのまま落ちることは出来ず、仕方なく顔を上げて、楓が指差す方向を見る。そこには、特に何もなかった。


 訳が分からず困惑していると、楓は僕に急接近してきて、


「窓の外だよ、あの微妙な揺らぎ、オーロラみたいに見えない?」


 と興奮気味に聞いてきた。よくよく空を見ると確かに緑色の揺らぎのようなものが見え隠れしているように見えた。なんだろう、あれは。こんな春に日本でオーロラ見えることってあるのだろうか。


「うん、まぁ見えなくもないかな?」


「えー、テンション低めじゃない?多分、明日のニュースに載るよ」


「そうかもしれないけど、ただ、今はあの先生の後だからゆっくり休みたいなぁあぁ〜」


 僕は大きなあくびを一つして、外から見えるオーロラに興味津々な楓をじっと見た。楓も悪評を広めた一因なのだから、あのオネエ先生にやられた分の女子成分を吸収してもバチは当たらないはずだ。


 普段何にも思ってない、なんならいじってくるけどたまに見せる笑顔が堪らない。みんな、これが女子だよ。間違いなくあのおじさんにはこんな癒し成分を感じない。心の癒し、それが女子なんだよ。見ていて朗らかな気分になるんだ。決してムカムカが勝ったりしない。


 僕がにっこりと笑うと楓は腰が抜けたようにおどけて僕でも分かるくらい照れていた。


「じっと私を見てきて急に何なの?なんで笑顔」


「いや、伊波さん可愛いなと」


「は、はぁ....え?なんて??」


「だから、可愛いって」


「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ」


 本当に楓は可愛いと思ってる。だけど、それをさらっと言ったということはまだあのドリンクの効果が切れてないのかもしれない。僕は自分のことが少し怖くなったが、照れてる楓を見てそんな気持ちを吹き飛ばすことにした。

可愛いって言わせてみた

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