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モブは普通の〈モブらしい〉生活を送れない  作者: 里道アルト
第三章 勉強会
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心中

 僕らは三分ほど脱力し準備体操のように体を伸ばしてから、湯船に浸かった。


 湯煙ちゃんは湯の中ではあまりにも無力で透明の湯から危ない所が見え隠れしていたのは本当にまずいことだったがギリギリ僕達は二人一緒に湯の中に浸かることができた。かなり狭くて、ういと体が密着してしまい僕はずっと動揺していたが、肝心のういは無反応だったので僕がそればかり気にするわけにもいかなかった。


「兄貴、うちの風呂も気持ちいいね〜」


 さっきまで口を開いてくれなかったういだが、突然僕に話しかけてきた。僕はずっと目線を落とさず上を向いて湯に浸かっていたから僕はういの目線まで視線を落とすことになる。


「うーん、まぁそうだなぁ」


 適当な返事をした。ういは怒ってないがちょっと僕はうわずってそんなことを言った。


「兄貴、聞きたいことがあるんだけど」


「ん、なんだ?」


「兄貴と楓ねえは本当に付き合ってないの?」


 ムグッ、僕は突然のことで下にずり落ちて喉に湯が入り咳き込んだ。


 昨日のことも今日の夢も一蹴して忘れようとしていたのに、僕の頭にフラッシュバックしてきて回避する方法もない。


「ちが、違うって。そんな勇気僕にあるわけないし、向こうもそんな風に思ってないって」


 前もおんなじことを言った気がする。あの時のういは納得してくれたように見えたが今は怪訝な顔でこちらを伺っている。


 おそらく急なことで驚きすぎた結果、大胆に動揺しすぎたのが問題なんだろう。


「でも、向こうは兄貴のことそういう目で見てるかもしれないじゃん。そうしたらどうする?兄貴からは無理でも楓ねえから告ってきたらどうするの?」


 今日のういは食い下がらない。むしろズカズカ足を踏み入れようとしている。僕は仮に、ほんと絶対ないとは思うが仮にそういう状況になった時のことを想像する。


「そんな事絶対ないとは思うけど仮に、仮に、仮にそんなシュチュエーションにあったら多分僕は受け入れるよ。というか、僕なんかを本気で好きになってくれて恋人になってほしいまで言われたらまぁほぼ誰でも僕は受け入れるだろうし」


 ういが求めてる正しい答えじゃないかもしれないが、僕なんかに春がやってくるならイケメンも勉強できるやつも苦労しないだろうなと思う。


 勇気ってやつは偉大だ。告白なんていうそんな大それたことをできるやつには尊敬しかないと思える。


「そう、なんだ。......じゃあ、私に好きって言われたらどうする?」


「ん?ういに??」


 ういは照れたように頬を赤く染め、そんな事を聞いてくる。僕も突然のことでそこまで考えが回っていなかったので聞き返してしまった。


「ごめん。やっぱ、今のなし。忘れて」


 ういはそんな風に言ってきたが、僕の中で答えは出たのでそれは伝えることにした。


「まぁ、ういに好きって言われても僕は嬉しいと思う。兄妹だからそんなこと言いにくい所あると思うけど、僕はちゃんと兄貴としてやれてるんだなってなるよ」


 ういはぱぁっとにっこりと微笑んだ。合ってるか合ってないかで言えば、僕の回答は正しかったんだろうなと思う。

多分のぼせる直前までは言ってたんだな....



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