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モブは普通の〈モブらしい〉生活を送れない  作者: 里道アルト
第三章 勉強会
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思い出

 一緒にお風呂に入る。なんで急にそんなお願いをされたのだろう。よくよく考えても分からない。僕は何も悪いことはしてないし、ういが恥ずかしがりながらそんなお願いをしなくちゃならない理由も分からない。


 兄妹仲は良い方だと自覚しているつもりだけど、やっぱり年頃の男女だと認識すると、二人でお風呂に入るなんて気まずいシチュエーションしか思いつかない。


 そんな気まずい空気の中、僕は何をされ何を思うのか、想像するだけでは全然分からなかった。


 そもそも、楓のあれを見てしまった後だ。僕の胸がキリキリしてるのはういも分かってくれてると思っていたが、どうしてよりにもよってそれを思いだしてしまうお風呂に二人で入らないと行けないんだろう...。


 冷静な頭とは別に心臓がバクバク脈を打ってうるさい。あれこれ考えているのにそれらが全部吹っ飛んでしまうほどに。


「(はぁ、なんで僕がこんな良い...、いや悪い目にあってるんだか)」


 僕は着替えながら小声でそう言った。すぐ近くにはういがいるが、聞こえなかったらしい。


 本当に理由もなく、高校生活が始まってから忙しくなった。家族との会話もなんだか増えた気がするし、学校では楓達と話したりして心が休まる日がない。


 そして、ういがなぜか僕にアタックしてくると。あんまり言いたくはないが、ハーレムみたいな...。


 いや気のせいだ。僕がそんな大それたことできるはずないし、そんな魅力なんてない。ういのこれもきっとただの甘えだ。そうとしか考えられない。


「兄貴、入ろ」


「あ、あぁ」


 もうすでに服を脱ぎ終えていたういは僕の袖を引っ張りながらそう言ってきた。当然ながら一糸まとわぬ姿でタオルで大事な所を隠すこともしていない。


 僕は慌てて、手で目を覆った。


「ごめん、ちょっと考え事してて」


「兄貴だったら別に見られてもいいのに」


 これは本当にどうしたことか。ういが頬を赤らめてそう呟いたのを僕はしっかりと耳にしてしまった。


 本当にただの甘えなのか?まるで気になる男子に接する時のようじゃないか?


 いやいやただの勘違い、それに僕らは兄妹なんだ。それ以上でも、それ以外でもない。


「早く入ろ。ちょっと寒くなってきた」


「先入れば良かったじゃん」


「兄貴、そのまま逃げる気だった」


 ういは小さい胸を押し当てるように近づけ、僕の方にジリジリと近付く。


「分かった、分かったから」


 僕はいてもたってもいられなくなって赤くなる頬を覆うように手で押さえ、風呂場の中に入った。


 珍しく、湯煙がちゃんと仕事をしてくれたおかげで全貌までは見えなくて済みそうなのを確認すると僕はどこか、心の中に少しのゆとりができた。


「兄貴、髪の毛洗って」


「いいのか?僕、適当にしかできないぞ?」


 まだういが小さい頃はしてあげたりもしたが、今のお年頃、髪の手入れは気になるもので他人にはやって欲しくないものだと思っていたけど。


「いいの、今日はお願い何でも叶えて」


「ん、分かった」


 そう応えて僕はやんわりいい香りがするういのサラサラヘアーをワッシャワッシャと泡立てながら洗ってあげる。


 このままの展開だと、やっぱりまずいことになりそうな予感がするが、今日は妹の奴隷としての仕事を全うしよう。


 シャワーで泡を流してあげると髪をブルッと震わせて嬉しそうに僕の方を見てきた。湯煙で多少は隠れているとはいえ、慎ましい胸が全く見えないというわけではなく僕は照れてまともに目線を合わせられなくて目線を逸らした。


「今度は私の番」


「え?」


 ういは言うだけ言うと僕の背後に回り込んできて、後ろでバンと待ち構えている。


「いいよ、僕は自分で」


「やらせて」


「はい」


 ういは胸を押し当てながら髪を泡立てる。しっかりと柔らかい何かを背中で感じるけど、無心無心だ。


 仮にも兄妹なんだからこれを嫌がるのは悪いし、照れはするが正直おいしい。


 それに自分でやるよりちょっと心地がいい。ちゃんと目で見えない髪の芯から洗われてるんだろう。 


 シャワーで泡を流す所までやった後、ういの要求は


「背中流し合いっこ」


「まぁ、そうくるよな」


「嫌?」


「別に」


「じゃあ」


 僕はういの背後に回り最初に背中をゴシゴシと洗ってあげる。あの時とは比べられないぐらい体は大きくなっていて、それでいてまだ柔らかい肌だった。


 僕は背中を洗っているついでにういに聞いてみた。


「どうして、急にお風呂一緒に入ろうなんて言ったんだ?」


「理由はないよ。昨日伊波さんのお風呂に入ってただ久しぶりに兄貴と入れたらいいなって思っただけだから」


「どう?入れて良かった?」


「分かんない。久しぶりだから。良いんだなってことは分かるんだけど」


「ふうん、そうか」


 ほら、やっぱり他意はない。ただの兄妹愛。僕が想定していたことなんかカケラの一つもあってなかったんだろう。


 ういが今度は僕の後ろに回ってきて背中をごしごし擦ってくれる。気持ちが良い擦りである。


 強すぎず弱すぎないちょうど汚いのが的確になくなってる感じがする。


 ういも背中を洗っている間暇なのか


「兄貴は」


 と話しかけようとしたがそのまま黙ってしまった。


「どうしたの?」


 ういは黙りながら頬だけがさっきよりも赤くなって最後まで何も話してくれなかった。


風呂でイチャコラするな、ずるいゾ悠斗!


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