お茶を濁す
「はー、はー。突然のことでびっくりした〜」
楓と僕がそんな関係じゃないのは、確かに会ってみないと分からないかもしれない。
でも、普通は入学してから二日目でクラス女子とお泊まり会するなんていうのは、あんまりにもおかしい。
少しでも好意を持たれてないとできない所業だ。
もしかして、僕は楓から好意を持たれているのではないかと疑う僕は同時に皮肉的にいや、僕なんかが好かれるはずがないと一方的に決めつけにかかっている。
「いや、でも好意は持たれてる、んだよな???」
自問自答しても答えは出ない。でも、僕から僕にもちろん友達としてだが好意を持ってくれてるかを楓や如月さん達に聞くのはちょっと怖い。
意外に全然赤の他人って言われた時のショックで立ち直れないかもしれない。
「いや、もういい。この気持ちはゲームで紛らわそう」
僕は悪い癖で嫌な事や面倒な事を考えるのが嫌になるとすぐにゲームに逃げてしまう。ゲームはもはや、気持ちを紛らわせるための僕の習慣システムに食いこんでいるほどだ。
僕は、携帯用ゲームを起動するとそのままゲームにのめり込み時間を忘れていた。
「お昼よ〜降りてきなさーい」
母さんからの呼びかけで僕はようやく時間感覚が戻ってきて、ほんの数十分しかゲームを開いていないのに気付いた。
もうこれ以上はいいかもと僕は思っている。いつもなら数時間しても飽き足らないのに、やっぱり今日は変だ。
「分かった〜」
僕は母さんに聞こえるようにそう叫んで、一階に降りた。
一階に降りると、いい匂いが鼻につき、その匂いがカレーだということに気づいた。
「今日カレー?」
「そうよ、ジャガイモはしっかり形残ってるよ」
「それは良かった」
たまに煮込みすぎてドッロドロになっていることがあるからじゃがいもがまだ形残ってるのは感謝しかない。
「今日カレー?」
「そうだよ、うい」
「兄貴良かったじゃん」
「まぁね」
家族の中では僕がカレー好きなのは周知なのだが、今日はやたらと歓迎されるな。一体どういうことだよ。
「お、今日はカレー?お、悠斗とうい?もう帰ってたのか」
親父もさっきまで何してたかは知らないが階段から降りてきた。
「ただいまー」
「だいぶ前に帰ってきたのです!」
ういはそう申告した後、ただいま〜と親父に言って、頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
この親父何を隠そう、あの鬼のようなRINEで、唯一一言『いいんじゃない』で済ましたすげー人である。
あの後、多分バチバチ母さんと喧嘩になったのは容易に想像できるし、母さんのあの後のRINEからは心労が伺えたぐらいだった。
「で、それで悠斗はハーレム作ったの??」
「作ってる訳ないだろ!!あとそれ子供に言うセリフじゃ絶対ないからな」
「悠斗、お父さんがおかしいのはいつものことよ!」
「だめだ!何とかしないと」
自由奔放聞こえはいいかもしれないが実際にいたら気苦労が絶えないとんでも人間という訳だ。あと、多分うちの場合は責任感とか責任感とか責任感とか欠如してる。
僕が生きている上で仕事辞めないのが、すごい偉いと褒められるような人は後にも先にもこの人を除いてはいない気さえしている。
「ま、心配しないでもやっぱ大丈夫だったんだな。良かったよ」
「そりゃ、伊波さんが親切だったから、ういも見てもらったし」
「へー、そいつはいい出会いができて良かったな!!」
バンバンと背中を叩かれ、僕は前のめりになりバランスを崩しそうだったが、何とか持ちこたえた。親父がずっと笑ってるからなかなか責めることができなくて、僕は黙って席についてカレーを食べることにした。
うん、うまい。朝のもやもやもさっきの不満も全部消え去った。昨日も食べたけどやっぱりカレーはいいものだなと思った。
もう少しだけ日常を!!楓の出番なし!!?