勉強会からお泊まり会になるなんて!?
「やっばいなぁ。今着信履歴見たら、親から大量にかかってた」
僕は親に今日どこに行くのかを連絡した後、一回も連絡を取っていなかったから場所も場所ですごい着信履歴が増えていた。
「私もおんなじような感じです」
「あ、私は全然だ」
「うーん、父が迎えに行くとか言ってるが一旦パスだな」
それぞれ自分のスマホを見て思うことがあるようだ。
完全に外の音が聞こえないこの別荘の中で、本当に如月さんが窓の外を見ようとしなかったら、気づいてすらいなかっただろう。
「どうしよ、兄貴」
「うーん、やむまで雨宿りとか?」
「でも、今夜は吹き荒れるって話だったよ」
確かにそうだった。今夜深夜まで降り続けるんならその策は使えない。
「じゃあ、無理だ...
「いや、それだ。...みんな自分の親にここで泊まるって連絡しといて」
「え?は?」
「あ、なるほど。了解」
「了解です」
いや、その手があったか的なノリで話を進めないで。僕一人だけ、いやういも合わせて二人だけ状況掴めてないから。
「いや、待って待って待って。どうしてそんな話になるんだ?さすがにまずいだろう??」
僕は頭を押さえ、楓に抗議した。
「なにが?それにこれしか方法はないんだ。タクシーも運行を止めるような道、親に走らせるわけにはいかないだろ?」
「いや、それはその通りなんだけどさ。...いやでも、だって....」
「だって?」
理屈では分かる。友達の家に泊まりに行く感覚で(僕は体験した事ないけど)誘われているんだろう。それに、今は緊急事態。どうこう言ってもられないんだろうけど、でもだけど、
「男子一人と女子四人じゃん!!?」
僕は今まででこれ以上ない張り上げた声で叫んでいた。
事実やばいよ、こんなラブコメ的展開。ラノベやマンガの主人公達はこの流れを自分で掴みとっているから、彼らはすごいんだ。
でもね、実際普通の人がこんな状況に陥ったら?...僕は死ねる。
「悠斗が今さらそんな事言いだすなんて!」
「いや、今までもずっと思ってたけど口に出さなかっただけだよ!?」
いや、驚かれても困る。こんな状況、本当に正しい判断をしなくちゃダメだ。まぁ、それがここに泊まることが一番危険がなく安全だっていうのは十分、十分、分かっているんだけれども。
「灰羽くん、私は、気にしませんよ」
「ま、灰羽なら大丈夫だって思ってるよ。襲ってくる勇気とかないだろ」
いやだから、そんなフォローされても困るんだよ。なんで勉強会から女子のお泊まり会みたいな流れになってるんだよ。
嵐よ、今すぐやめ。僕の心臓を保たせるために。まぁ、当然そんなので止められるはずもなく冷たい水で僕の心を抉ってくるのは目に見えているんだが。
「兄貴...」
ういは首を振る。もうこれしか方法はないと語るように。現実を突きつけてくる。ういは僕に死ぬしかないと諭してきた。
「う、ぅぅぅぅぅ。...お願いします」
僕は唸り声のような言葉を発しながら、楓の提案に乗ることになった。
「悠斗、部屋は六つあるから」
そう言ってくれたのが唯一の救いだった。
しかし、聞いてほしい。お風呂は兼用。一つしかないらしい。
僕は、お風呂に入ることは諦めることにしたいし、自分一人なら一日ぐらいいいかで済ますが、女子がいると体を綺麗にしないといけないし、やっぱり入らざるおえない。しかも、一度引いた湯を何回も流すのはさすがにもったいないからなんて言い出した。
そうなると、順番が重要になってくる。勉強会の席順なんて比にならないくらい、どれを引いても地獄のルーレットが始まった。
「えっと、私が最初で、次ぬめ、次芽衣、次ういちゃん、最後悠斗か」
なんで、こんな時もスマホのルーレット使うんだよとか思ったが、割とマシ(いや、入らないというのが一番いいんだけど)な順番だった。
「じゃあ、悠斗。湯の抜き方教えるからついてきて」
「うん?あぁ、最後だからか」
僕は言われた通り楓について行き湯の抜き方を教えてもらった。
僕のうちよりも二回りぐらい大きい浴槽は二人くらいは余裕で入れそうだった。
「そう言えばごめん」
「え?なにが??」
僕は湯の抜き方を教えてもらっている最中に急に楓から謝られたから、びっくりしてしまった。
「いや、私の服がここにはいくらかあるから女子の服の替えはあるんだけど」
「あぁ、男物はないって?そんなこと全く気にしないよ。さすがにそこまで面倒見て貰おうとか考えてないって」
「なら、いいんだけど」
服の心配なんかじゃなく自分の身の安全を心配しろ。僕は一応男なんだから。
僕はいつかの朝の事件を思い出し、僕だってそういうことを考えないってわけじゃないんだからなと毒づいた。
お泊り会はいいけど、悠斗風呂入るの!?