ういの心配事
話し合いを終えると僕は、楓たちと別れ、家に帰ってきた。靴箱を見ると昨日と変わらず、ういの靴があって早く帰ってきたんだなということを確認する。
最近早く帰ってきているがういは帰宅部ではなく、テニス部に所属していて、夏になると夜遅く帰ってくることが多くなる。
だから、春だけどもこんなに早く帰ってくるのが不思議だ。
「ただいまぁー」
「おかえり、兄貴。ちょっと話したい事があるんだけどいい?」
ういは少し切羽詰まった感じで僕を問い詰めるように距離を詰める。何かあったんだろうか?
「え、え?どうした?」
「いや、えっと。朝の女の人の話なんだけど」
「伊波さんのことか?」
「うん、そう。その伊波さんと兄貴ってどういう関係なの?付き合ってたりするの??」
ういは食い気味に真剣にそう聞いてきた。
えーっと、...何を勘違いしているんだろう。楓と僕がそんな関係に見えるんだろうか?いや、どう考えても見えないだろう。
僕と楓の関係はまるでモブとヒロイン、パシリとヤンキーみたいな関係だ。
まぁ、朝だけのやりとりを見ていたらそんな風に見えるんだろうか?全然意識して無かったけど。
僕がずっと考えながら、無言でいるとういは何かを察したようにしょぼんとし始めた。
「いや、全然ういの考えてるような関係じゃないから!!むしろ、隷属って感じだよ」
「愛の奴隷?」
「違うよ、ただ楓に僕がいじられるってだけの関係...」
「付き合ってたりは?」
「してないよ!!知り合って二日目だし、僕にそんな勇気ないの知ってるだろう」
「じゃあ、伊波さんとの関係は?」
「うーーん。ただのクラスメイトかな」
僕が慌てて楓と恋仲説を否定するとういは僕のヘタレ具合に失望するというよりかはなんか安心しているようだった。見れば、さっきよりういの頬は明らかに緩んでいる。
「なーんで喜んでるんだよ」
「別に、喜んでないよーだ」
なんか理由は知らんが、楓だけじゃなく妹にも遊ばれた気がした。そういえば、ういには今日のことというか、明日のこと言ってなかったっけ。
「あ、そういえば明日は伊波さんらの勉強会に参加することになったって言ってなかったよな」
「初耳だよ!!」
ういは驚いたように声を上げる。そこまで、驚くようなことだったかな。まぁ、常に人と関わらないように日影の道ばっかり歩いてたし当然か。
「(クッ、兄貴口ではああ言ったけど、やっぱり絆されてるじゃん。ただのクラスメイトはそんなのに誘わないよ!)」
「え?ちょっと聞こえないんだけど。僕なんかまずいことした?」
「大丈夫だよ。ただ兄貴、その勉強会私も連れて行って」
「え、悪いよ。部活あるだろう。あと、さすがにちょっと...。みんな来るらしいし」
「部活は五月までないから大丈夫だから」
「いやでも、うーん」
「いいから、私を連れて行ってよ!」
「う、うーん。じゃあ聞いてみていいって言われたらね」
「ダメって言われても行くから!しがみつくから」
「いや、それはやめてよ〜」
僕はRINEで、勉強会にういが来てもいいか尋ねてみた。送った直後すぐに三人も既読がつき、みんなOKって返事が返ってきた。それをそのまま、ういに伝える。
「いいってさ。でも、どうしてついていきたいなんて?」
「兄貴を悪い女から守るため」
「会ってもないのにそういうこと言うな、失礼だろ」
テイッっと僕はういの頭にチョップした。ういは痛くはないだろうけど、額を押さえて、ニッコリと笑っていた。
軽はずみに決めてしまったが、よくよく考えればおかしいな。ういがこんなに心配してくれるし、あと、みんなも簡単にOK出すなよ。高校の勉強会に中学生を誘うな。
脳内のツッコミが炸裂しまくる中、だけど明日がちょっと楽しみになったのは内緒だ。
モブだけど、人と関わりたくないけど、みんなと一緒にいるのもいいのかもしれないと思ったり。
まぁだからなんなんだって話なんだけど。
「(なんか、僕生きてるな)」
心の中でそう呟いた。
こんばんは、里道アルトです。えー、灰羽の妹ういちゃんは、結構なブラコンです。拙い文章で伝わったでしょうか?モブ生活三日目にういちゃん乱入、どうなる?勉強会