初夜(強制)
目が覚めた時……。
視界に入ったのは、見慣れぬ天井……そして見慣れぬ少女だった。
天井に関しては、俺が意識を失うことになった経緯も含めひとまず置いておこう。
今、問題なのは……少女の方である。
年頃は、十代の中頃に達しているかどうか……といったところか。
褐色の肌と肩の辺りで揃えられた短めの黒髪は、ネクシム大森林地帯に点在するという部族出身者の特徴である。
問題は……少女が一糸まとわぬ姿で、俺の上体へまたがっているという点だ。
否が応でも、しなやかでよく鍛えられた……それでいて、年頃の少女らしい柔らかさも備わった肢体をこの目にすることとなる。
問題はそれだけではない。
少女が、猫科の幼獣を思わせる可愛らしい顔を上気させながら、うるんだ瞳で俺を見つめているのだ。
さらにさらに、問題はまだあった。
彼女にまたがられたこの俺もまた、装備の一切……というか、下着に至るまでを剥ぎ取られた真っ裸だったのである。
なるほど、な……。
俺の名は、ランス・シェーア。
由緒正しいシェーア辺境伯家の二十三男坊である。
末席すぎて継ぐべき領地も役職も存在せず、現在では冒険者暮らしをしているが……貴族教育はしっかりと受けている。
故に、こういった時どのように振る舞えばいいかは心得ていた。
互いに裸で、名も知らぬ女子にまたがられているというこの状況……。
男児として、為すべきことはただ一つ!
そう……。
――ただちに舌を噛み切るのである!
さらば現世! 大量に女を囲み数年前不審死した父よ! 今、会いにゆきます!
大口を開け舌を噛み切ろうとしたその瞬間――少女が俺の口に何やら布を詰め込んだ!
「――ぬぐおっ!?」
し、しまったあ!?
「お前、度胸あル……気に入ったゾ」
まずい……まずいぞ!
詰め込まれたこの布……何やら薬が染み込ませてある!?
それが証拠に、全身の血流は自覚できるほどにその勢いを早め、視界がぼやけ意識せずとも鼻息が荒くなっていくのだ!
このままでは……あれ? 何がいけないんだっけ?
意識があやふやとなり、まともに思考ができなくなる。
少女が俺の口に詰められた布を取り去り、代わりに自らの唇を重ねてきた。
それは、何とも柔らかでくすぐったい感覚であり……。
そして……。
そして……。