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靴屋の娘と三人のお兄様  作者: こじまき
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伯爵令嬢のお仕事

伯爵家での初めての夕食が始まった。豪華な食事が運ばれてくる。こびとの二人用にも、小さく切り分けた食事が用意される。


師匠と弟子は「あれも美味しい」「これも美味しい」と美味しいを連発しながら、フォークとナイフを器用に使って料理を平らげる。早い早い。これじゃあすぐ全部食べきっちゃうよ。


「話を聞いただけでは信じられなかったが、こうやって実際に見ると…信じるしかないな」

「ね、フォークとナイフが勝手に動いて、どんどん料理が減ってくんだもんね。うちの料理、気に入ってくれたのかなぁ」

「アイリスと結婚したら、一気に家族が4人も増えちゃったねぇ」


アレン様、カラバスお兄様、お父様がそれぞれに感想を言い合っている。給仕担当のメイドや執事も目を丸くしている。イーライ様はこびとを観察しつつ、無表情で黙々と料理を口に運んでいる。


「あ、そういえばデイジー!」とカラバスお兄様に突然声をかけられ、私は肉を喉につまらせそうになる。


「お兄様、なんですか?」

「僕、明日は仕事入ってないんだ。仕立て屋にドレスを作りに行こうよ!アドバイスしてあげる」


提案に乗っていいのかわからず困っていたら、お父様が代わりに「それはいい、行ってきなさい。デイジーもしばらくしたら社交界デビューするわけだし、素敵なドレスが必要だ。カラバス、頼んだよ」と答えた。


ちょっと待って、社交界ですと!?社交界ってあの、みんなでクルクル踊ったり、手の甲にキスされたりとかのあれですか!?


「お父様、社交界はちょっと…こんな田舎娘が舞踏会なんかに参加したっていい笑い者になるだけです…女性同士のお茶会とか呼ばれても、何を話していいかわからないし…」

「いや、社交なんて慣れだよ慣れ、デイジー。そもそも一日中屋敷にいても、やることがないよ」


そうお父様に返され「そうだ、もう靴屋じゃないんだ」と実感する。それにしても社交界なんて。もう靴屋じゃないけど、でもやっぱり靴屋の娘でしかないって私は。


「デイジーは可愛いから、お化粧とドレスで見違えるはずだよ。王族貴族の女性達を描きまくってきた僕が言うんだから間違いない。大丈夫だって!」とカラバスお兄様。


そしてとどめにアレン様から「デイジーさん、もうあなたは伯爵令嬢ですから、社交界デビューはしていただかないと困ります。父上が養女を冷遇しているなどと噂が立ちかねません」と、口調は丁寧だけど断ることなどできないほどの圧を込めた声。


最終宣告を受け、私は小さく「はい」と頷くしかなかった。

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